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第4回「爆発的な筋力発揮には、速筋線維が超重要」

速筋線維の重要性

前回の記事↓では、短距離走や跳躍、投てきのパフォーマンスを高めるために重要なこととして、以下のことを紹介しました。

 

・エネルギーを素早く作り出し、短距離の場合はそれを持続させることが大事
・そのエネルギーは主に、「クレアチンリン酸」と「糖」の分解から得られる
・そしてそれは、速筋線維という筋線維で多く行われる

 

 

ここでは、瞬発系のアスリートがパフォーマンスを高めるための肝とも言える「速筋線維」について、紹介していきます。

 

速筋線維と遅筋線維

筋肉には、「速筋線維」「遅筋線維」が混ざっています。それぞれに特徴があり、それを示したものが以下の図です。

 

 

速筋線維は大きな力を出せたり、高い収縮速度を持っています。これは、素早くエネルギーを生み出せるクレアチンリン酸や糖を分解する酵素が速筋線維に多いからです。しかし、酸素を使ってエネルギーを持続的に生み出すミトコンドリアという器官が少ないため、持久性に乏しいという欠点があります。

 

この速筋線維はさらに「TypeⅡx」「TypeⅡa」の2種類に分かれます。「TypeⅡx」は最も高いパワーを引き出せるけれど、ミトコンドリアが少なく持久性に最も劣ります。「TypeⅡa」はミトコンドリアが比較的多く、大きなパワーが出せて、かつ持久性にも優れています。高い強度で持久的なトレーニングをしたりすると、「TypeⅡx」が「TypeⅡa」に変化して、高い強度での持久力が向上します。

 

 

一方で、遅筋線維は大きな力は出せないものの、ミトコンドリアが多く含まれており、持久性に優れている筋線維だと言えます。マラソンやトライアスロンなどの超持久的な競技種目のトップ選手は、この筋肉に含まれる遅筋線維の割合が高いことが多いと言われています。

速筋線維が多いことは、あらゆる筋力の土台となる

図は、筋力と筋肉の太さの関係を示したものです。経験的にも誰でも理解できそうなことですが、筋肉は大きい方が、大きな力を発揮できる傾向があります。

 

 

また、次の図は、速筋線維の占める割合と等速性の筋力の関係を示したものです。速筋線維が多い方が、低速度~高速度域に渡って大きな力を発揮することができています。特に速度が高くなった時に差は大きくなりやすそうであることから、速筋線維の多さが、瞬発系のパフォーマンスを高める重要な要素になるであろうことは一目瞭然だと言えます。

 

 

遅筋線維は速筋線維と比較して、発揮できるパワーのポテンシャルが圧倒的に低いことからも、まずは速筋線維を増やすことが、ハイパワー発揮を高めるための土台になると考えられます。

 

 

速筋線維のミトコンドリアを増やすことは、高いパワーの持久力を高めるための土台

速筋線維は持久性に乏しいという側面があります。ただ大きくするだけではハイパワー発揮のポテンシャルは高まるはずですが、そのパワー発揮の持久力はなかなか向上してくれないはずです。これは、速筋線維にミトコンドリア(エネルギー生産工場のようなもの)が少ないことや、酸素を届けたり代謝物を循環させる毛細血管が少なかったりするからです。

 

 

短距離走では、いくら高いスピードが出せたとしても、持久力が無ければ記録を伸ばすことはできません。冒頭でも述べたように、素早く多くのエネルギーを生み出しながらも、それを持続させることが短距離の人たちには必要です。

 

では、どうすれば良いかというと、トレーニングで速筋線維のミトコンドリアを増やしてあげれば良いわけです。

エネルギーから見た短距離・跳躍・投てき選手の目的地(まとめ)

ハイパワー発揮の土台は、クレアチンリン酸や糖の分解が活発な「速筋線維」の能力改善にあると考えられます。したがって、短距離・跳躍・投てき選手がトレーニングでまず目指すべき土台部分は

 

・高出力を出す
⇒速筋線維を大きくし、出力させる。

 

・高出力の持久力を高める
⇒速筋線維のミトコンドリア(毛細血管)を増やす。
※跳躍・投てき選手は主として不要

 

この2点は外すことのできない土台になると考えられるでしょう。

 

しかし、瞬発系のパフォーマンスを高めるためにやるべきことは、そこまで単純ではありません。次回は、速筋線維の大きさで、直接筋力やスピードが決まるわけではないという話に迫っていきます・・・。

 

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参考文献

・Saltin, B., & Gollnick, P. D. (1983). Skeletal muscle adaptability: significance for metabolism and performance. Handbook of Physiology. Skeletal Muscle, 10, 555-631.
・Maughan, R. J., Watson, J. S., & Weir, J. (1983). Strength and cross‐sectional area of human skeletal muscle. The Journal of physiology, 338(1), 37-49.
・Thorstensson, A., Larsson, L. A. R. S., Tesch, P., & Karlsson, J. (1977). Muscle strength and fiber composition in athletes and sedentary men. Medicine and science in sports, 9(1), 26-30.
・Faulkner, J. A. (1986). Power output of fast and slow fibers from human skeletal muscles. Human muscle power.

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