
図は、瞬発系競技種目の選手がパフォーマンスを高めるための「トレーニングの目的地」をピラミッド式に表したものです。これは、トレーニングの階層構造とも呼ばれるものです(日本コーチング学会,2017)。
まず、瞬発系のアスリートにとって、爆発的なパワーを生み出す原動力となる筋肉のサイズは重要です。ここまで紹介してきた通り、速筋線維の多さは、あらゆる力発揮の根幹になり得ます。
しかし、ただ筋肉が大きいだけではパフォーマンスUPにはつながりません。筋肉が大きくなるだけでは、最大筋力や、一瞬で、高速で、バネのような筋力は高まらないことがあるからです。筋肉量を確保したうえで、それらに特異的なトレーニングをしなければなりません。
また、そのような特異的な力発揮能力が高まったとしても、実際の競技の動きの中で、それらが発揮できなければ意味がありません。なので、最終的には、競技動作そのものの中で、高いパワーを発揮させる必要があり、それに応じたトレーニングが必要になるというわけです。
1つのトレーニングを続けていると、その能力の向上幅は次第に頭打ちしてきます。これを「トレーニングの馴化現象」と言います。その競技種目における技術や、より上位の能力がカンストしている場合は、より下位の能力を高めることに特化したトレーニング期間を設けた方が、パフォーマンス向上への近道になり得ることは多いでしょう。