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第7回「筋肉量・最大筋力を高めるトレーニング手段と方法」

トレーニングの「じゃあ、何したらいいんですか?」を知ろう

前回の記事では、短距離・跳躍・投てき選手がパフォーマンスを高めるために向かわなければならない「トレーニングの目的地」について整理しました。

 

 

そして今回は、その目的地に向かうための「トレーニングの手段・方法(筋肉量・最大筋力)」について、説明していきます。いわゆる「じゃあ何したらいいんですか?」の部分に相当するものです。

 

筋肉量を増やし(速筋線維を増やそう)、筋力を向上させる

ピラミッドの根幹部分に当たるのが「筋肉量や最大筋力」です。筋肉量、その中でも速筋線維が多いことは、あらゆるパワーを高めていくために、重要な土台であることを説明してきました。

 

この筋肉量を増やしたり、最大筋力を高めるために重要なことは、筋肉に機械的な過負荷を与えることです。分かりやすく言うと、筋肉が大きな力を、長い時間発揮することが一つのポイントになります。

 

具体的には、高いスピードで走ったり、坂道で負荷をかけて走ったり、重りを背負って走ったりジャンプしたり、ウエイトトレーニングで負荷を与えてあげたり…です。様々な手段が考えられます。その中でも「ウエイトトレーニング」は、筋肉量を効果的に増やす手段として広く知られていることでしょう。

 

 

筋肥大・筋力向上のためのウエイトトレーニングのポイント

このウエイトトレーニングを用いて筋肉を大きくしたり、時のカギは「トレーニングボリューム(重さ×回数×セット数)」です。このボリュームを増やすことがカギです(Radaelli et al.,2015)。

 

特に、速筋線維を確実に動員させて、速筋線維の能力を向上させるためには、高重量でのトレーニングが必要です。軽い負荷でも限界まで行えば筋肥大を起こすことは可能ですが、最初の楽なうちは遅筋線維が主に使われるため、速筋線維を鍛えるためには効率的ではなさそうです(Beardsley,,2019;Morton et al.,2019)。

 

しかし、どうしても高重量で実施することができない部位を鍛えたり、高重量でできないウエイト種目があるときは、限界付近まで行うことや、動作スピードを高めて、より速筋線維を動員できるような工夫が必要になると言えるでしょう。そのような工夫をしながら、速筋線維を刺激し、トレーニングボリュームを確保することが重要です。

 

だからと言って、初心者が1日中ずっと高重量ウエイトトレーニングをし続ければし続けるだけ筋肉が大きくなって、筋力が高まっていくかと言われると、それは難しいです。多くやればやるほど筋肥大が進むのであれば、世の中のボディビルダーは年中休まず筋トレをし続けているはずです。しかし、そんな人はなかなかいません。筋肉は休養している間に成長するからです。

 

トレーニングを継続しながら、適切に休養を挟みながら、トレーニングのボリュームを自然と増やしていけることが重要です。

 

 

筋肥大・筋力向上のためのウエイトトレーニングの目安

筋肥大のためのウエイトトレーニングの重さ×回数設定では、一般的に「中程度の重さで数多く」が推奨されています(下図参照)。速筋線維を十分に動員させることが狙いなら、80%1RM(1回やっと挙げられる重さの80%の重さ;8回ギリギリ挙げられるくらいになる)でトレーニングボリュームを確保するのが良いかもしれません。

 

 

一方で、最大筋力を向上させるためにはもう少し重い重量でのトレーニングが重要です。例えば、3RM~6RM程度の高重量を挙げるなどです。爆発的に拳上する方が筋力向上に効果的だとも言われています(González-Badillo et al.,2014)。

 

セット数は1セットより2セット、2セットより3セットの方が効果が高いと言われていますが、あるポイントを越えると効果が頭打ちするとされています(Krieger,2009)。また、実施頻度は週に1回よりは、週2~3回が良いとされています(Schoenfeld et al.,2016)。そして、もっとも重要なのは週全体のトレーニングボリュームの確保です(Ralston et al.,2018)。

 

しかし、陸上選手であればウエイトとレーニングだけをやっているわけではないので、他のトレーニングとの兼ね合いから、その実施頻度は考えなくてはなりません。ウエイトトレーニングにしても他のトレーニングにしても重要なのは、「能力の向上が伴っているか」です。

 

回復が間に合っているかどうか、自分の身体と相談しながらトレーニングボリュームを調整していく必要があります。

 

 

ウエイトトレーニングの種目は?

短距離・跳躍・投てき選手のパフォーマンスを高めるためのウエイトトレーニングですから、その種目の動作や力発揮に関連する部位を鍛える必要があります。短距離選手の前腕の筋力がいくら向上しても、足は速くなりません。

 

上半身、下半身を全体的に、競技により重要な筋群を刺激していくことが重要です。短距離においてより重要度が高い筋群とその鍛え方については、以下の記事でまとめています。

 

ウエイトのみでは十分刺激できない筋肉もある

筋量を増やして最大筋力を高めるためにウエイトトレーニングが有効だと言っても、ウエイトトレーニングは万能ではありません。走ったり、跳んだり、投げたりするための筋肉をくまなく刺激しようと思ったら、その種目の動作をその種目の強度で行うことが必要なはずです。ウエイトトレーニングで鍛えられるのは、そのウエイトを挙げるのにより重要な筋群です。したがって、ウエイトトレーニングのみならず、他のトレーニングによっても筋肉量を増やしたり、筋力を高めておく必要はあると言えるでしょう。

 

高いスピードで走ったり、ジャンプしたり、何か物を投げたりする刺激でも、筋は肥大しますし、もちろん筋力も向上します。その場合、繰り返しますが高出力で実施することが重要です。

 

関連記事

 

ウエイトトレーニングをしないと筋力は向上しない、筋肉は増えない…ではなくて、筋力や筋肥大を起こすためにウエイトトレーニングという有効な手段もある…という、この微妙な認識の違いを理解しておきましょう。

 

次の記事では短距離・跳躍・投てき選手のパフォーマンスを高めるため「特異的な筋力向上のための手段・方法」について、紹介していきます。

 

 

次の記事

 

参考文献

・Chris Beardsley(2019)The volume that causes hypertrophy is not the total number of reps in a set. Strength & Conditioning Research; Infographics.
・Morton et al. (2019). Muscle fibre activation is unaffected by load and repetition duration when resistance exercise is performed to task failure. The Journal of physiology.
・Radaelli et al. (2015). Dose-response of 1, 3, and 5 sets of resistance exercise on strength, local muscular endurance, and hypertrophy. The Journal of Strength & Conditioning Research, 29(5), 1349-1358.
・Krieger, J. W. (2009). Single versus multiple sets of resistance exercise: a meta-regression. The Journal of Strength & Conditioning Research, 23(6), 1890-1901.
・González-Badillo et al. (2014). Maximal intended velocity training induces greater gains in bench press performance than deliberately slower half-velocity training. European journal of sport science, 14(8), 772-781.
・Schoenfeld BJ, et al. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2016 Nov;46(11):1689-1697.
・Ralston GW, et al. Weekly Training Frequency Effects on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med Open. 2018 Aug 3;4(1):36.

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