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サボると速筋線維の爆発力向上?短距離走とトレーニングの休養

サボると速筋線維の爆発力向上?短距離走とトレーニングの休養

短距離走では、誰よりも素早く加速して、誰よりも高いスピードを出せることが勝利へのカギです。

 

 

そのため、全身で爆発的なパワーを発揮できることはとても重要な能力になります。これは他の爆発力が求められる競技種目でも同様です。例えば跳躍や投てき、ウエイトリフティングやパワーリフティングなどです。

 

短距離走のトレーニングでは、この爆発力をメインに鍛えることが行われますが、それと同じくらい「休養」も重要な意味を持っています。

 

ここでは、「短距離走の選手がトレーニングと共に、いかに休むことが必要なのか」について紹介していきます。

短距離走では「速筋線維」を鍛えるのが大事

皆さんの筋肉は「遅筋線維」「速筋線維」が混ざってできています。

 

遅筋線維は大きな力を発揮できないものの、持久性に優れているタイプ一方で速筋線維は、大きな力を発揮できるけど、持久性に乏しいタイプです。

 

 

また速筋線維は、トレーニングによって太くなるポテンシャルが高く、太くなることでより大きな筋力、高いスピードでの筋力が高まりやすくなると言われています。遅筋線維には発揮できるパワーに限界があるので、短距離走ではこの速筋線維の能力を高めていくのが非常に重要であることが理解できることでしょう。

 

 

速筋線維にもタイプがある

この速筋線維ですが、実は持久性のあるタイプと無いタイプでさらに2タイプに分かれます。

 

 

TypeⅡa持久性に優れている速筋線維です。比較的大きな力を持続的に発揮することができます。

 

しかし、より大きなパワーを発揮できるのは、もう一方のTypeⅡx(以前までTypeⅡbと呼ばれていた)の筋線維です。このTypeⅡxはほぼ持久性がありませんが、最も大きなパワーを発揮できる筋線維です。

 

一般に持久的なトレーニングを行うと、TypeⅡxがTypeⅡaに変化することが知られています。つまり、トレーニングによって筋肉に持久性を持たせることができるというわけです。

 

 

しかしながら、より大きなパワーを発揮できるTypeⅡxが減ってしまうのは、持久力がそこまで関わらない爆発的な競技パフォーマンスにとって悪影響があるかもしれません。

 

「だったら持久的なトレーニングをしなければいいじゃないか」

 

と、言われてしまいそうですが、実は瞬発的なトレーニングしか行なっていない選手でも、そのトレーニングを多量に積むと、それが日々の持久的な刺激となり、TypeⅡxからTypeⅡaへのシフトが盛んに起こり得ます。

 

実際に、超パワー系のアスリートであるはずのウエイトリフティング選手の筋線維を調べると、ほとんどの速筋線維がTypeⅡaになってしまっていたとも言われています(石井,2015)。

サボるとより爆発的な力発揮が得意な速筋線維が増える?

では、瞬発力が重要なアスリートはトレーニングをしない方がいいのでしょうか?

 

そんなことはないはずです。トップアスリートを見ても、トレーニングをこなさず強くなってきた人はほとんどいません。冒頭でも述べたとおり、速筋線維の能力を高めるにはトレーニングが必要です。

 

ただ、試合に向けての調整する段階でなら、TypeⅡxの筋線維を増やす方法が存在します。それが、トレーニングをサボることです。トレーニングでTypeⅡxからTypeⅡaにシフトした筋線維は、サボることでTypeⅡxに一部が戻ることが分かっています。

 

 

これによって、より爆発的な力発揮ができる筋線維が増えて、パフォーマンスアップが望めるかもしれないというわけです。具体的には、2週間ほど休むことで筋線維のTypeⅡaからTypeⅡxへのシフトがある程度起こるとされています。これは持久的なトレーニングによるTypeⅡxからTypeⅡaの変化も同様のようです(石井,2015)。これらのことから、重要な試合前は、少し多めに休みを入れてみるのも良いかもしれません。

 

しかし、2週間もまるまる休むというのは、スポーツのトレーニングを行う上ではなかなか現実的なものではありません。

サボることへの注意点

試合前にむやみやたらに休んでしまうと、逆にパフォーマンスを低下させてしまう可能性も考えておかなければなりません。特に、200m走や400m走などの種目では、爆発的パワーだけでなく、その持久力も重要になります。

 

そのような種目に出場する場合、TypeⅡaの速筋線維が減ってしまえば、大きなパフォーマンス低下につながり得ます。

 

もちろん休んで疲労を抜くことは重要です。しかし、100m走やパワーリフティングのような競技でさえ、休みすぎると筋肉自体が萎んでしまったり、最大筋力や最大スピードを発揮するための神経系の能力が鈍ってしまったりというデメリットは非常に大きいはずです。そのようなことを考えると、単に休み続けるのではなく、ある程度の動きのキレを保つような少量のトレーニングを挟みながら、徐々に疲労を抜いて試合に備えるやり方をお勧めします。

参考文献

・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・Saltin, B., & Gollnick, P. D. (1983). Skeletal muscle adaptability: significance for metabolism and performance. Handbook of Physiology. Skeletal Muscle, 10, 555-631.
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2007). 入門運動生理学第3版. 杏林書院.
・Thorstensson, A., Larsson, L. A. R. S., Tesch, P., & Karlsson, J. (1977). Muscle strength and fiber composition in athletes and sedentary men. Medicine and science in sports, 9(1), 26-30.
・Faulkner, J. A. (1986). Power output of fast and slow fibers from human skeletal muscles. Human muscle power.

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