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400mH走の体力トレーニング

400mH走の体力トレーニング

 

400mH選手に必要な体力

 

陸上競技の400mH走(400mハードル走)は、高いスピードを発揮できるだけでなく、そのスピードを50秒近くできる限り維持できるような持久力、加えて直走路や曲走路でハードルをスムーズにクリアする技術や、踏み切りに足を合わせるストライド調整、歩数の切り替え、スムーズなインターバルランニングなど、様々な要素が求められる種目です。

 

 

このような能力を高いレベルで身に着けていくためには、その土台となるような筋力やパワー、スピード、持久力、柔軟性、調整力など、多様な体力を高めていく必要があります。

 

 

 

 

そして、400mハードル走でトレーニングの優先度合いが高いと考えられる要素が、スピードに関わる「筋力」とその「持久力」です(ハードル技術の課題が顕著な場合はこの限りではありません)。つまり、400m走の能力が高いほど、400mHでも好記録を狙いやすくなるわけです。これは当然の話でしょう。

 

 

しかし、400m走がかなり速くても、400mHになると記録がそこまで良くはないという選手も多くいます。したがって、400mHのトレーニングでは、400mの走能力を高めつつも、ハードル技術を控向上させていく工夫が必要です。

 

 

 

400mH選手のための体力ピラミッド

 

図は、400mH選手に必要な体力要素をまとめたものです。パフォーマンスを高めるためには、土台部分の「一般的な体力」と呼ばれるものから「専門的な体力」まで、上手く向上させていく必要があります。

 

 

 

 

 

一般的体力(筋肉のサイズや血管、ミトコンドリアを増やす)

 

筋力を高めるためには、まずそもそもの土台となる「筋肉量」を増やす必要があります。筋肉量は多いほど、大きな力を発揮できるポテンシャルは高くなるからです。筋肉量が増えなければ、ほかの技術が向上したりしていない限り、特にスピードに関わるパフォーマンスの向上はなかやか見込めません。

 

 

筋肉量を増やすためには、筋力トレーニングを行ったり、坂やスレッドなど、負荷をかけて走ったりすることが必要になります。徐々に負荷を上げていきながら、トレーニングのボリュームを増やしていけるように継続していくことが重要です。

 

 

 

一方で、持久力に関わるのが、筋肉の中のミトコンドリアや毛細血管のサイズや量です。このミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーを生み出すための器官で、毛細血管は酸素の供給に関わる器官です。つまり、これらが多いほど、より多くのエネルギーを持続的に生み出すことができるわけです。

 

 

なので、持久力を高めるためには、このミトコンドリアや毛細血管を増やすトレーニングを考えていく必要があると言えるでしょう。

 

 

このミトコンドリアを増やすためには、持久トレーニングで、エネルギーを減らし続けるような刺激が必要になります。また、筋肉が高出力を出し続けた時に多く生成される代謝物(乳酸)が高まった状態で、さらに出力し続けるようなトレーニングも有効です。

 

 

例えば長い時間ジョグをしたりすれば、遅筋線維と言われる、大きな力は発揮できないが、持久力に富んだ筋線維のミトコンドリアや毛細血管を増やすことができます。そして、ある程度高いスピード、息が切れるような負荷で多くの距離を走るようなトレーニングでは、パワー発揮は得意だけど、持久力の低い速筋線維のミトコンドリアや毛細血管を増やす刺激に繋がります。

 

 

 

専門的体力(400mHの中でのパワーや持久力を高める)

 

筋肉が大きくなって、大きな力が出せるようになったとしても、走りの中でその力を発揮できるようにならないと、パフォーマンス向上には繋がりません。持久力も然りです。また、ただ400m走の能力が上がっても、400mHの技術や戦術とかみ合わなければ好記録を出すことはできません。したがって、基礎的な体力を高めたら、それに応じて技術や戦術を最適化させていく必要があります。

 

 

そのためには、400mHに近いトレーニングを行うことが重要です。極論、400mHのレースに出ることが最高の専門的トレーニングになります。

 

 

ただ、400mHのレースでは高い集中力が必要で、毎日やるのは難しいです。細かい技術に意識を向ける余裕もないでしょう。そのため、実際の400mHのインターバルで200mHまで、300mHまでのトレーニングを行ったり、200H+200Hで区切ってトレーニングしたりと、目的に合わせてバリエーションに幅を持たせることもあります。

 

 

このような専門的なトレーニングは、実際の400mHのペースで行うことが重要です。高いスピードを出し、その高いスピードをできる限り維持できること、そしてそれに見合った技術や戦術を探っていかなければならないからです。

 

 

 

歩数やハードリングの固定観念を無くす

 

以前よりも大きくパフォーマンスを改善させるためには、ピラミッドの土台部分からきちんと作り替えていく作業が必要です。ここにみっちりと時間をかけてトレーニングを行わなければなりません。実際の400mHの専門練習ばかりでは、ピラミッドの上の方だけにチョコチョコと刺激を与えるだけになってしまい、なかなか大きく記録を伸ばしにくくなってしまいます。

 

 

土台に集中してトレーニングをやるというのは、インターバルの歩数やハードリングでのスピード感と言った技術の固定観念を無くして、新しく高いレベルに到達しやすい状況を作り出すのにも重要なことです。前シーズンでの歩数やハードリング、ペース配分にこだわりすぎると、それが足枷となり、より高いレベルでの技術習得に影響が出てしまうからです。

 

 

大きく記録を伸ばしたいなら、一旦すべて取っ払って、高めた体力の上に、新しい技術や戦術を上乗せしていく必要があります。以前のレベルの技術や戦術が染みついたままだと、なかなか新しい技術の上乗せはできないものです。


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