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400m走の特徴とトレーニングの視点

400m走の特徴とトレーニングの視点

 

 

 

400m走とは?

 

400m走とは、200m選手のような高いスピードに加えて、400mを走りきるための持久力も必要な、短距離種目で最も過酷な競技だと言われています。

 

 

400m走の現在の世界記録は、男子でW.バンニーキルク選手が2016年リオ五輪で樹立した43.03、女子ではM.コッホ選手が出した47.60です。

 

 

参考動画(400m走)

 

 

以下の図は、400m走のレース中の速度推移を表したものです。このように、400m走ではスタートからゴールに渡って最大に近い速度を維持することができません。

 

 

 

 

これは、より大きなパワーを生み出すための身体の仕組みに限界があるからです。

 

 

したがって、400m走で高いパフォーマンスを発揮するためには、スピードや持久力といった体力だけでなく、無駄なエネルギーを消費しないようなランニング技術や、より良いタイムを出すためのペース配分などの戦術が必要になります。

 

 

一つ一つ見ていきましょう。

 

 

 

400m走に必要な体力

スピード筋力、パワー

 

400m走では、当然高い走スピードを出す能力が必要です。高い走スピードを達成するためには、単なる筋力だけでなく、一瞬で筋力を発揮できる瞬発力や、高いスピードの中でも大きな力を生み出せるスピード筋力が必要です。

 

 

特に股関節周りの筋肉でそのような筋力を発揮できることは重要だと言われています。速く走ろうとすれば、脚を大きく、かつ素早く前後に切り返すような運動をしなければならず、そのためには脚の付け根部分で大きな筋力を発揮することが必要だからです。

 

 

 

 

対して、脚の末端部(足首や膝周り)の筋肉は、一瞬で大きな力を生み出して、硬いバネのように鍛えておくことが大切です。足首や膝周りを硬いバネのように使うことができれば、股関節で生み出した力を効率よく地面に伝えて走ることができます。

 

 

これができなければ、いくら股関節を素早く動かせたとしても、地面を上手く押せずに弾まない、ピッチだけが空回りして、全然前に進まない走りになってしまいます。

 

 

また、スピード筋力や硬いバネのような筋力を高めると言っても、その根幹となるのは基礎的な最大筋力や筋肉量です。ウエイトトレーニングなどでしっかりと筋力、筋肉量の基礎を築きましょう。

 

 

 

持久力

400m走では、疲労によって終盤へかけて速度が低下していきます。そのため、高い走スピードだけでなく、それを維持する持久力も必要です。

 

 

特に、400m終盤では、腿を前に引き出すパワー、接地の衝撃に耐え得る足首のパワー、腕振りのパワーが著しく低下します。したがって、これらに関わる筋持久力をトレーニングしておくことはとても大切なことだと言えます。

 

 

 

 

この筋持久力に関わる要素として挙げられるのが、筋肉の中にあるミトコンドリア毛細血管の量です。ミトコンドリアは、酸素を使ってエネルギーを生み出す器官で、これが筋肉に多くあることで、より多くのエネルギーを持続的に生み出すことができます。一方、毛細血管はミトコンドリアに酸素を届けるために重要です。

 

 

このミトコンドリアや毛細血管を増やすためには、運動でエネルギーを減らし続けるような刺激が必要になります。

 

 

要は、長い距離をたくさん走り込んだり、短い距離を、短い休息で繰り返したりするようなトレーニングです。

 

 

400m走に必要な技術

 

400m走では、無駄なエネルギーをできる限り使わず、省エネで走れた方がお得です。

 

 

特にバックストレートを、楽に速く走れるような走技術は重要だと言われています。ここで力んでしまい、速度の割に努力感が上がり過ぎてしまうと、レース後半での思わぬ失速に繋がってしまいかねません。

 

 

なので、前半から無理なくスピードに乗って、それを楽に維持するような走りができることが重要です。腕振りは力まないようにリズムをとるようにし、脚はもがくように振り回さず、身体の真下に落とすように、そこに身体が乗っていくようなイメージをすると良いかもしれません。

 

 

このように、出来るだけエネルギーを浪費しないようなテクニックを磨いていくこと、それによって順位やタイムに大きな影響を与えることも、400m走の醍醐味の一つです。

 

 

 

400m走の戦術(ペース配分)

 

400m走では、最初から最後までずっと全力で走ることができません。なので、主観的にペース配分をコントロールして、自分の持てる力を最大限に発揮出来るように工夫しなければなりません。

 

 

一般的な主観的なペース配分としては、個人差はあるものの、序盤で85%程度、バックストレートでやや努力度を落としてスピード維持、200mを超えたあたりから徐々に努力度を上げていって最後の直線で最大努力を出す…と言った感じになるかと思われます。

 

 

 

 

当然、前半から突っ込んでいけば後半の速度低下は大きくなります。逆に前半抑えて走れば、後半の速度低下は抑えられますが、前半のスピードが犠牲になります。

 

 

自分のレース当日までの状態から正確に判断して、持てる力を最大限に発揮できるペース配分の戦術を練ってみましょう。

 

 

バランス良くトレーニングする

 

400m走では、前半のスピードだけが高くても後半で大失速してしまえば速くは走れません。逆に、どんなに持久力があっても、そもそものスピードがなければ前半から大きく置いていかれます。したがって、「高い走スピードで、それを維持できる能力」が大切になります。考えてみれば当たり前です。

 

 

しかし、トレーニングをしていると「スピードが大事だから短いスピード練習だけやってればいい」だとか「持久力が大事だから長い距離だけ走ってればいい」とか、両極端な思考に陥ってしまう人がいます。これでは、たとえスピードだけ上がっても、持久力だけ上がっても、肝心のトータルでの400mのタイムは向上しません。

 

 

スピードを高めたなら、必ずそのスピードを維持する練習をしましょう。持久力の土台を作ってきたなら、必ず高いスピードを伴ったトレーニングで仕上げをしましょう。

 

 

 

 

パズルのひとつひとつを組み合わせるようにして、欠けたものが出ないようにトレーニングを組んでいく必要があります。

 

 

参考文献

・久野譜也(1999).トップアスリートの特性.勝田茂編,運動生理学20講第2版.朝倉書店:pp.134-140.


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