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ハンマー投げはどこで手を離せばいい?(遠心力、求心力とハンマー投げの科学)

回転するハンマーの運動方向

ハンマー投げで手を離すべき瞬間というのは、よく勘違いがされるものです。

 

よくある勘違いが、「ハンマーを回転させると遠心力が働くから、飛ばしたい方向にハンマーが来た時に手を離せばいい!」というものですが、これは間違いです。

 

回転するハンマーが運動しようとしている方向は、常に円の接線方向です。接線というのは、円に接する直線のことを指します(下図参照)。

 

 

ハンマーは円の接線方向に、並進運動をしているわけですから、上の図のタイミングで手を離さないと真っ直ぐには飛んでいかないのです。

 

「え?じゃあ遠心力はどこに行ったの?」

 

という声がもしかすると聞こえてきそうですが、遠心力というのは、ハンマーから手を離した瞬間消えて無くなります。

 

そもそも、接線方向に行きたい(並進運動したい)ハンマーを円の中心方向に引っ張ることで、ハンマーを回転させることができています(下図参照)。

 

 

この時の中心方向への引っ張りを、求心力(向心力)といい、これは遠心力と逆向きに働く力です。

 

手を離した瞬間、ハンマーを円の中心方向に引っ張る求心力はなくなり、遠心力もその瞬間になくなるので、ハンマーは並進運動のみ、つまり接線方向に飛んでいくというわけです。

 


リリース時(手を離した瞬間)のスピードが最も重要

ハンマー投げはハンマーを遠くに飛ばす競技です。したがって、手を離した瞬間にどれだけハンマーのスピードが高いかが記録を左右します。
図は、角運動中にハンマーがどのように加速しているかを表したものです。

 

坂東ほか(2006)より引用

 

よく見るとハンマーのスピードが上がったり下がったりしながら、最終的に高いスピードに達していることが分かります。

 

これは、回転する時に身体を傾けることで、回転の半径を大きくして、ハンマーのスピードを高めようとしているからです。

 

LP(ローポイント)がハンマーが低くなったところ、HP(ハイポイント)がハンマーの位置が高くなったところを意味します。

 

 

参考動画

 

このようにしながら、一流選手ではハンマーのリリース速度(前項でいう、接線速度)を30m/sまで高めることができると言われています。

 

 

合わせて読みたい!

 

 

参考文献

・坂東美和子, 田辺智, & 伊藤章. (2006). ハンマー投げ記録とハンマーヘッド速度の関係. 体育学研究, 51(4), 505-514.

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