全力疾走をしている時の、股関節、膝関節、足関節のトルク推移を示したものが以下の図です。

※馬場ほか(2000)より、作成
おおよそ、関節が伸展運動している時(例えば膝が伸びる最中)には伸展トルク、屈曲運動している時(例えば膝が曲がる最中)には屈曲トルクが働いています。
しかし、よく見てみると、関節の回転運動の向きと、トルクの向きが一致していない部分が見られます。
例えば、膝を前に引き出して、次の接地に向かおうとする局面では、膝が前に振り出されるような運動をしているにも関わらず、膝関節は屈曲トルクが働いています。
これは膝下が前に振り出ていかないように、膝を曲げる筋力を働かせて、ブレーキをかけて運動の方向を切り替えようとしている最中だと判断できます。
また同様の局面で、腿が前に移動して屈曲動作をしているのに、股関節は伸展トルクを発揮しています。
これも同じように、腿が前に移動し続けていると、次の接地に向かって脚を振り下ろすことができなくなるので、伸展トルクを発揮させることでブレーキをかけ、動作の方向を切り替えている…ということです。
このように、回転運動の方向とトルクの向きは必ずしも一致しません。
ヒトの運動を考える際には注意が必要です。
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参考文献
・馬場崇豪, 和田幸洋, & 伊藤章. (2000). 短距離走の筋活動様式. 体育学研究, 45(2), 186-200.