立っている姿勢を維持するために重要な役割を果たしているのが、身体の筋肉と骨です。
ここでは、立位姿勢を保つための筋肉に着目し、その筋肉がどのような役割を担っているのかについて説明していきます。
抗重力筋
立った姿勢を維持するためには、身体重心から真下に引かれた線、重心線が、身体を支える支持基底面からはみ出さないようにすることが必要です。
そして、重心が高い位置にあり、体重が軽く、支持基底面が狭いほど、立つ動作の安定性は低くなってしまいます。
したがって、体重が軽く、2足で立つヒトという生き物は他の動物と比較して、安定性がかなり低いと言えます。
関連記事
しかし、ヒトは当たり前のように2足で立つことができています。これは、狭い支持基底面から重心線がはみ出ないように、筋肉で微細な調整を行うことができているからです。
ヒトは傾いて重心線がズレると、地面を支点に回転運動(回転モーメント)が生じます。これを筋肉によって修正しています。
このように、重心線のズレを修正して、支持基底面からはみ出ないように維持するための筋肉を「抗重力筋」といいます。
抗重力筋には、身体が前に倒れるのを防ぐ、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)、体幹を立てる脊柱起立筋、前後のバランスをとる大臀筋、腸腰筋、ハムストリングなどがあります。
これらが絶妙なコントロールを行うことで、姿勢を維持できているわけです。
抗重力筋の働き方
普段立っている時、ヒトの身体は前にやや傾いた棒を、後ろから引っ張るような形で姿勢を維持しています。
後ろから引っ張る役割を果たしているのは、脊柱起立筋、ハムストリング、ふくらはぎ(ヒラメ筋)などがあり、これらは主要姿勢筋とも呼ばれています。
また、ヒトが姿勢を崩してしまったときには、当然その他の、大腿四頭筋や大臀筋、前脛骨筋などの筋肉も働きます(膝が伸びきっている場合は大腿四頭筋の働きはほとんどないと言われています。)。
筋肉をコントロールする感覚情報
そして、この筋肉は目からの「視覚」、耳にある三半規管からの「平衡感覚」、筋肉の伸び縮みを感じ取る「体性感覚」などの情報を元にコントロールされています。
目を閉じると、姿勢を保ちにくく、フラフラしてしまいますよね?これは、視覚からの情報が遮断されてしまうからです。
この感覚情報を元に姿勢を制御する能力は、幼児期の頃に低く、10代から20代までは高くなり、それ以降加齢によって低下していきます。
さらに高齢になってくると筋力の低下も顕著になってきます。すると抗重力筋の働きも弱まってしまい、転倒による怪我、それによる寝たきり状態につながってしまいます。転倒予防のためにも、日ごろから抗重力筋を鍛えておくことが大切です。
合わせて読みたい!