いくら高いスピードで助走ができたとしても、そのまま前に走り切ってしまっては、空中距離を伸ばすことはできません。
当然、踏み切り動作を行い、跳躍角度を上に向ける必要があります。水平方向のスピードの方が重要であることは事実ですが、踏み切り後の上方向(鉛直方向)への速度とも、記録と有意な相関関係がみられています(太田ほか,2010)。
さらに、世界一流競技者の中でみると、踏み切り直後の水平速度よりも、鉛直速度の方が、記録との関係が強かったことも報告されています(小山ほか,2009)。
モノを飛ばす場合、飛距離が最も伸びるのは投射角度が45°の時です。
しかし、実際の走幅跳での踏み切り角度は15°〜25°程度になります。
これは、助走スピードが速過ぎて、良い踏み切りを行ったとしても角度を上に向けることが難しかったり、着地時の身体重心の位置が、踏み切り時の位置よりも低いことが原因だと考えられます。

※小山ほか(2009)より
世界記録保持者のM.パウエル選手でも、踏み切り角度は22.1°となっています。
とは言っても、理想となるのは高い水平速度を保ったまま、上方向への速度を獲得し、踏み切り角度を45°に近づけることです(ヒトの身体では不可能に近いですが)。
物理的にこの方が空中距離を伸ばせることは言うまでもありません。
では、少しでもそのような踏み切りに近づけるためには、どのようなことが必要なのでしょうか?