脂質と糖質のエネルギー供給バランス

脂質と糖質のエネルギー供給バランス




脂質と糖質のエネルギー供給バランス

 

 

運動時に炭水化物と脂質が使われる割合は常に一定ではありません。この割合は運動強度や時間によって変化します。

 

 

運動強度が高いと炭水化物が使われる割合が高い

 

息が荒くなるような強度の高い運動では、炭水化物が多く使われ、脂質はあまり使われていません。一方で、運動強度が低くなるにつれて、脂質の貢献度が高くなっていきます。安静時では、脂質が使われる割合が非常に高いです。

 

 

 

 

 

運動時間が長くなると、脂質の貢献度が高くなる

 

また、一定の運動強度であっても、炭水化物と脂質の利用率は変化します。歩行運動でのエネルギーの使われ方を見てみましょう。歩き始めは炭水化物の利用が高いのに対して、歩行時間が長くなるにつれて、徐々に脂質の貢献度合いが高くなっています。

 

 

 

 

 

持久トレーニングを積むと、同じ強度なら脂質の貢献度合いが高くなる

 

以下の図は、12週間の持久トレーニングを行う前と後での炭水化物(血中グルコース、筋グリコーゲン)と脂質の利用率を示したものです。持久トレーニング後では、糖の利用が減少していることが分かります。

 

 

※Coggan & Williams (1995)より:12週間の自転車ペダリングトレーニング前

 

 

※Coggan & Williams (1995)より:12週間の自転車ペダリングトレーニング後

 

 

このように、トレーニングによって、同じ運動強度であっても糖の利用を抑え、脂質の利用能力を高めることができます。糖質は脂質に比べて貯蔵できる量が少ないため、できる限り温存できた方が良いからです。

 

 

持久トレーニングによって、より脂質を使えるようなキャパシティーを増やすことで、同じ強度でもより糖質を温存できるようになり、持久パフォーマンスが向上するというわけです。

 

 

 

脂質と炭水化物は常にどちらも使われている

 

よくある勘違いとして「運動強度が高いときは炭水化物だけが、運動強度が低いときは脂質だけが使われている」というのが挙げられます。これは間違いです。

 

 

100m走という極めて強度の高い運動でも、ジョギング程度の長時間運転でも、常に脂質と炭水化物は同時に使われています。

 

 

また、「ダイエットで脂質を燃やすためには20分以上の有酸素運動が必要。なぜなら脂質が使われ始めるのは運動開始20分以降だから。」というのも間違いです。脂質は最初から使われていますし、そもそも安静時代謝のほとんどは脂質です。

 

 

また、「運動時間が長くなると炭水化物の消費が減る」というのも語弊がある表現です。なぜなら、例え運動時間が長くなって脂質の貢献度合いが高くなっても、安静時よりは圧倒的に炭水化物の消費量は大きくなっているからです。

 

 

 

 

ここで話しているのは、あくまでもエネルギーの貢献度合いであることに注意して下さい。

 

 

 

参考文献

・Fox, E. L., & 渡辺和彦. (1982). スポーツ生理学.
・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2015). 入門運動生理学. 杏林書院.
・芳賀脩光, & 大野秀樹. (2003). トレーニング生理学.
・Ahlborg, G., Felig, P., Hagenfeldt, L., Hendler, R., & Wahren, J. (1974). Substrate turnover during prolonged exercise in man: splanchnic and leg metabolism of glucose, free fatty acids, and amino acids. The Journal of clinical investigation, 53(4), 1080-1090.
・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・山本正嘉. (2011).山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京.
・Coggan, A. R., & Williams, B. D. (1995). Metabolic adaptations to endurance training: substrate metabolism during exercise. Exercise metabolism, 177-210.



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