
アクティブリカバリーはリカバリーを促す?
トレーニング終了後、クールダウンという名目で数十分ほど、ジョグやバイクなどの軽運動(アクティブリカバリー)を行うことがあります。
なぜそのようなダウンをやるのかと言われれば、翌日に疲労を残さないため、怪我を防ぐコンディショニングのためだと主張する人がほとんどです。
しかし、最近の研究を概観してみると、トレーニング後やその翌日に軽運動を行うリカバリーへのメリットは、そこまで大きいものとは言えないことが分かります。

上記に関連して、逆に余計にグリコーゲンなどのエネルギーを消耗させてしまい、その後や翌日のパフォーマンスに悪影響さえ出てしまうのではないかとの指摘もあります。

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このような根拠がありながらも、実際リカバリーと言う名目での軽運動は非常に多く行われ、パフォーマンスを高めていくためには重要なことだという認識がそこそこあるようです。
それは一体なぜなのでしょうょうか?
アクティブリカバリーではなくて、トレーニングとして機能している
その理由の一つに、クールダウンとしての軽運動が、そもそものトレーニングとして機能している可能性があるということです。
Vo2maxの60%(ほどほど~ややきついくらい)の低強度運動は、自律神経系への影響が小さく(Seilerほか,2007)、そのような低強度運動でもボリュームの多いトレーニングを行うことで、有酸素系のトレーニング効果を生み出す遺伝子発現を促す十分な刺激になることが知られています(Laursenほか, 2010)。
つまり、長時間に渡って日々クールダウンを行なっている選手は、それ自体がトレーニング刺激となり、パフォーマンス向上に役立っている可能性があるわけです。
もし、「ダウンだ!」ということでジョギングを数十分行うようなことをしていた選手が、「ダウンは意味ない」と言われて、それを辞めてしまうと、逆にパフォーマンスを落としてしまうかもしれません。
その運動はダウンなのか?トレーニングとして機能しているのか?を判断して、トレーニング計画を調整していく必要もあると言えるでしょう。
参考文献
・Van Hooren, B., & Peake, J. M. (2018). Do we need a cool-down after exercise? A narrative review of the psychophysiological effects and the effects on performance, injuries and the long-term adaptive response. Sports Medicine, 1-21.
・Fairchild, T. J., Armstrong, A. A., Rao, A. R. J. U. N., Liu, H. A. W. K., Lawrence, S. T. E. V. E., & Fournier, P. A. (2003). Glycogen synthesis in muscle fibers during active recovery from intense exercise. Medicine and Science in Sports and Exercise, 35(4), 595-602.
・Seiler, S., Haugen, O., & Kuffel, E. (2007). Autonomic recovery after exercise in trained athletes: intensity and duration effects. Medicine & Science in Sports & Exercise, 39(8), 1366-1373.
・Laursen, P. B. (2010). Training for intense exercise performance: high‐intensity or high‐volume training?. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 20, 1-10.