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陸上短距離にベンチプレスは必要か?(スプリンターとベンチプレス)

陸上短距離にベンチプレスは必要か?(スプリンターとベンチプレス)

スプリンターに必要な筋力とトレーニング方法+考え方について、動画で紹介しています。

 

 

ウエイトトレーニングのビッグ3といえば、スクワット、デッドリフト、ベンチプレス。

 

 

そして陸上界隈で良く話題に挙がるのが「陸上選手にベンチプレスは必要か?」というものです。

 

 

ここでは、ベンチプレスで得られる効果を基に、ベンチプレスでのトレーニングが陸上競技にどのように影響するかを考えていきます。

 

 

 

 

ベンチプレスで鍛えられる筋肉

 

ベンチプレスで鍛えられる筋肉として、三角筋や大胸筋、上腕三頭筋などが挙げられます。

 

 

これらは腕を前方に押し出したり、肩を屈曲させたり、肘を伸ばしたりする役割を果たします。

 

 

つまり、ベンチプレスは「後ろから前へ腕を振る時の肘を前に引き出す筋力」、「前から後ろに腕を振る時の肘を伸ばす筋力」を高めるのには有効だろう…ということになります。

 

 

参考動画(ベンチプレス)

 

 

 

ベンチプレスの重量とスプリントパフォーマンスの関係

ベンチプレスが挙がるほど加速力が高い?

 

熊野ほか(2018)の研究では、ベンチプレスを含めたウエイトトレーニング種目の1RM(一回で挙げられる重さ)と、ソフトボールの走塁タイムの関係を調べています。

 

 

その結果、ベンチプレスの1RM(1回で挙げられる重さ)が高いほど、塁間(18.29m)の走タイムが速いことが分かりました。

 

 

また、藤瀬ほか(2018:学会発表)では、ウエイトトレーニングのBIG3の1RMとスプリントパフォーマンスの関係を調べています。

 

 

その結果、ベンチプレスとスクワットにおいて、100m走の記録と有意な相関関係が得られたとされています。

 

 

 

因果は分からない

しかし、ベンチプレスの1RMとスプリント加速能力に関連性が見られたからと言って、ベンチプレスの重量を増やせたら、加速力が高まる!!…となるかは分かりません。

 

 

なぜなら、ベンチプレスの1RMが高い人は、そもそも全身の筋力が発達している可能性が高いからです。また、上で取り上げた研究は、学会発表や紀要と呼ばれる、他の専門家による公的な審査(査読)が入っていない内容です。こういった知見に限ったことではありませんが、考察の内容やデータ収集の方法が適切かどうかについては、常に批判的に検討しなければなりません。

 

 

とは言え、ベンチプレスで鍛えられる肩の屈曲筋群や肘の伸筋は、腕振りのパワフルさを引き出す要因の1つであることは間違いありません。

 

 

腕振りのパワフルさを引き出す基礎を固める上では、やっておいて損はない筋力トレーニングだと考えられます。

 

 

 

 

 

ベンチプレスだけでは不十分

 

腕振りのパワフルさを引き出すためには、ベンチプレスだけをやっておけばOK…とはなりません。

 

 

なぜなら、ベンチプレスはベンチプレスで鍛えられる筋肉しか鍛えられないからです。

 

 

腕振りにはその他にも様々な筋肉が関わるため、それらに関連する筋肉を満遍なくトレーニングしていく必要があります。

 

 

 

肩甲骨が固定される

 

ベンチプレスの問題点として、背中をベンチにつけた状態で行うことで、肩甲骨の動きが制限されてしまうことが挙げられます。

 

 

これでは、力強い腕振りに関わる肩甲骨の動き、またはそれを引き出すための筋肉を刺激できません。

 

 

そこで、便利な代用トレーニングとして、「腕立て伏せ」が挙げられます。

 

 

参考動画(腕立て伏せ)

 

 

 

腕立て伏せは、ベンチプレスと同じ筋肉も刺激しつつ、肩甲骨の内転ー外転と言った、肩甲骨の動きを引き出すことができるのです。

 

 

また、肩甲骨を前に引き出す筋肉である「前鋸筋」を働かせるトレーニングとして、「スキャプラプッシュアップ(肩甲骨腕立て)」などを取り入れるのもアリでしょう。

 

 

参考動画(スキャプラプッシュアップ)

 

 

 

関連記事紹介(外部リンク)

・#119 腕立て伏せ vs. ベンチプレス(S&Cつれづれ)

 

 

腕振りで肩甲骨が前後にしっかりと動くことで、より大きなパワーを上半身から生むことができます。

 

 

しかし、ベンチプレスのように高負荷をかけることが難しいというデメリットもあります。

 

 

どちらにもメリットとデメリットがあること、そしてそれぞれの役割を理解した上で、ベンチプレスと腕立て伏せ、組み合わせての実施をお勧めします。

 

 

 

肩の伸筋、肘の屈筋も鍛えよう

 

もちろんベンチプレスや腕立て伏せだけやっておけば、上半身のトレーニングはパーフェクト!…とは言えません。

 

 

ベンチプレスは肩を屈曲、肘伸展させるトレーニングです。必ずこれと反対側の筋肉もトレーニングしましょう。

 

 

つまり、肩の伸筋、肘の屈曲筋群です。

 

 

これらを同時に効率よくトレーニングできる方法として、懸垂が挙げられます。

 

 

参考動画(懸垂:プルアップ・チンアップ)

 

 

ちなみに「チンアップ(Chin-up)」は逆手での懸垂、「プルアップ(Pull-up)」は順手での懸垂を指します。

 

 

ただ、これも自体重でのトレーニングになるため、足に重りをつけたりして、負荷をかけた状態でのトレーニングができるように工夫してみると良いでしょう。

 

 

 

 

まとめ

・ベンチプレスは肩を屈曲、肘を伸展させる筋肉を鍛えられ、これらの筋は腕振りにも関連している。

 

・ベンチプレスだけでは不完全なので、それぞれの目的を理解した上で、肩甲骨が動く腕立て伏せや、肩や肘を反対側に動かす懸垂など、満遍なくトレーニングをする必要がある。

 

 

 

参考文献

・熊野陽人, 遠藤慎也, 嘉屋千紘, & 大沼勇人. (2018). 女子学生ソフトボール選手における走塁能力とレジスタンストレーニングの最大挙上重量との関係. 湘北紀要, (39), 149-156.
・藤瀬武彦, 橋本麻里, & 長崎浩爾. (2018). 08 測-24-口-03 ウエイトトレーニングの三大基本種目の 1RM と疾走能力との関係について. 日本体育学会大会予稿集 第 69 回 (2018), 170_3-170_3.

 


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