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メディシンボール投げと足の速さの関係(+トレーニング集)

メディシンボール投げとは?

メディシンボールを用いたトレーニングについて、こちらの動画で詳しく紹介しています!よろしければ、チャンネル登録お願いします!

 

メディシンボールとは、重さ1㎏~5㎏程度の表面が柔らかいボールで、陸上競技で良く用いられるトレーニングアイテムの一つです。ダイナマックスという、やや大きめでクッション性のあるタイプもあります。

 

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00PK5S0GG?ie=UTF8&th=1より)

 

このボールを用いたトレーニングに「メディシンボール投げ」と呼ばれるものがあります。これは、腕だけでボールを投げるのではなく、全身を使ってボールに力を伝えることで、下肢や上肢の爆発的なパワーを高めようとするトレーニングだと言われています。

 

参考動画

 

現在、このメディシンボール投げは陸上競技のトレーニング現場で広く取り入れられており、これをトレーニングの中心的な位置づけとしている強豪校もあるほどです。ここまで重視されるようになっている「メディシンボール投げ」のトレーニングですが、では実際に足の速さとどのような関係があるのでしょうか?

 

そこでここでは、以下の3点について紹介していきます。

・メディシンボール投げが強い人ほど足が速いのか?
・メディシンボールでのトレーニングはどのように捉えるべきか?
・メディシンボールを用いたトレーニング方法


メディシンボール投げの記録とスプリントパフォーマンスの関係

酒井ほか(2013)の研究では、50m走の記録が良いほど、メディシンボール投げの距離も長く、特に2~3kgなど重めのボールの投距離との関係が強いとされています。また、スタート直後の0~5mの疾走速度よりも、それ以外の5~50m区間の疾走速度との関係が強く、さらにはピッチよりもストライドとの関与が強かったとされています。

 

酒井ほか(2013)より引用

 

この研究では、1~3kgそれぞれの重さのメディシンボール投げ能力と50mのスプリントパフォーマンスや、そのピッチ、ストライドとの関係が検討されており、メディシンボール投げ能力の評価には、いわゆる「フロント投げ」と呼ばれる投げ方の投距離を用いられています。これは、以下の動画のようなフォームで、反動を使い、前方に向かって爆発的にボールを飛ばすトレーニングとしても実施されているものです。

 

参考動画

 

キーポイント

・2~3kgの重めのメディシンボールを前へ飛ばすトレーニングは、ストライドを大きくし、スプリント能力向上につながるかもしれない。

 

しかし、スタート直後の0~5mの疾走速度とは、メディシンボール投げの記録との関係は弱かったとされています。メディシンボールを投げる姿勢は、スタートダッシュの動作とよく似ているのにもかかわらず、両者の関係性が弱かったのはなぜなのでしょうか?これには以下の点が考えられます。

 

 

参考動画

 

 

・反応時間が影響した
スタート直後の5mまでのタイムには、号砲がなってからのスタート時間が影響することが予想できます。しかし、メディシンボール投げの記録と反応時間に何らかの関係があるとは考え難いと言えます。このことが影響して、スタート後の5mまでのタイムには、メディシンボール投げの記録との関係がそこまで強くならなかったと考えられます。

 

・スタートでは反動を使えない
酒井ほか(2013)の研究では、メディシンボール投げは反動を使って行っているのに対して、短距離走のスタートの最初の1歩では反動を使えません。反動アリの時のパワー発揮と、反動ナシの時のパワー発揮は別物です。このことが影響し、スタート後5mまでの速度とは関係があまり強くならなかったということも考えられます。反動ナシのメディシンボール投げの記録を取ってみると、スタート後5mまでのタイムとの強い関係が得られるかもしれません。

 

メディシンボールは脚の爆発的パワーを高める

メディシンボールをより遠くに飛ばすためには、全身を使って爆発的なパワーを生み出すことが重要です。特に、股関節や膝、足首を伸ばす筋力・パワーと言うのは、速く走るためにも重要な能力の一つと言えるでしょう。

 

なぜなら、自分の体重をより素早く加速させるためには、より大きな力で地面を押すことが必要になるからです。「速く走る」という行為は、地面に力を伝えて、その反力を利用し、自分の体重をいかに早くゴール地点に運ぶかを競う競技なので、地面に対してどれだけ短時間で力を発揮できるかが、記録向上のカギになります。

 

 

なので、股関節や膝、足首を前に向けて爆発的に伸ばす運動に負荷をかけられるメディシンボール投げは、スプリントパフォーマンスを高める上で、有効なトレーニングだと考えられます。

 

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メディシンボール投げだけじゃトレーニングとしては不十分

2~3kgのメディシンボール投げの記録が、50m走の記録、特にストライドとの関連が強いことが分かりました。だからと言って、「じゃあ、2~3kgのメディシンボール投げが大事だ!これさえやってれば速くなれる!」と捉えてしまわないように注意しましょう。

 

もちろんメディシンボール投げは、全身、特に下肢の爆発的なパワー発揮を高めるトレーニングとして有用でしょう。しかし、その土台となっているそもそもの筋肉量を増やすためには、ベーシックなウエイトトレーニングを地道に続けていくことも大切です。また、メディシンボール投げなど、他のトレーニングばかりやって、実際のスプリントトレーニングをおろそかにしてしまうとパフォーマンスになかなか繋がらない場合も出てくるでしょう。

 

なので、足の速さに関係する「ピラミッド」を積み重ねるように、満遍なくトレーニングをしていくことが足を速くするためにとても重要です。

 

 

あくまで、メディシンボール投げはパフォーマンスを高めるための一部分であることを忘れずに、自身のトレーニングの中に組み込んでみましょう。

 

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色々なメディシンボールトレーニング

メディシンボールは、何も前方に飛ばすトレーニングだけに使えるものではありません。その他の目的に応じて、実に様々なトレーニングを実施することができます。

 

スタート動作のメディシンボールトレーニング

スターティングブロックを用いて、メディシンボールを飛ばしたり、片足でのスタンディングスタートの姿勢から投てきを行うことで、スタートでの爆発力を高めるトレーニングに応用できます。とにかく前への力発揮を意識して投げましょう。

 

 

 

上、後、横へのメディシンボールスロー

全身を使って、後ろに投げたり、身体の捻りを使ってメディシンボールを投げることも、陸上選手のトレーニングとして有用です。身体を捻る筋力、その安定性も速く走るために必要な能力です。

 

 

 

メディシンボールで腹筋を固めるトレーニング

メディシンボールを脚に挟んで様々な運動を行うことで、腰回りの安定性に関わる筋力を高めることができます。

 

 

 

投てき選手のメディシンボールトレーニング

肩回り、胸周りの筋力を反動動作を使ってトレーニングすることで、投てき選手のトレーニングが行えます。

 

 

 

 

メディシンボールを使ったウォーミングアップ

これらの運動を用いて、より全身を使ったウォーミングアップを作ることができます。ウォーミングアップで高いパワーを発揮しておくことは、その後のスプリント練習や跳躍、投てき練習で高いパワー、スピードを発揮するために役立ちます。

 

 

 

 

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参考文献

・酒井一樹, 吉本隆哉, 山本正嘉, & 論文概要. (2013). 陸上競技短距離選手における疾走速度, ストライドおよびピッチとメディシンボール投げ能力との関係. スポーツパフォーマンス研究, 5, 226-236.

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