酒井ほか(2013)の研究では、50m走の記録が良いほど、メディシンボール投げの距離も長く、特に2~3kgなど重めのボールの投距離との関係が強いとされています。また、スタート直後の0~5mの疾走速度よりも、それ以外の5~50m区間の疾走速度との関係が強く、さらにはピッチよりもストライドとの関与が強かったとされています。

※酒井ほか(2013)より引用
この研究では、1~3kgそれぞれの重さのメディシンボール投げ能力と50mのスプリントパフォーマンスや、そのピッチ、ストライドとの関係が検討されており、メディシンボール投げ能力の評価には、いわゆる「フロント投げ」と呼ばれる投げ方の投距離を用いられています。これは、以下の動画のようなフォームで、反動を使い、前方に向かって爆発的にボールを飛ばすトレーニングとしても実施されているものです。
参考動画
キーポイント
・2~3kgの重めのメディシンボールを前へ飛ばすトレーニングは、ストライドを大きくし、スプリント能力向上につながるかもしれない。
しかし、スタート直後の0~5mの疾走速度とは、メディシンボール投げの記録との関係は弱かったとされています。メディシンボールを投げる姿勢は、スタートダッシュの動作とよく似ているのにもかかわらず、両者の関係性が弱かったのはなぜなのでしょうか?これには以下の点が考えられます。
参考動画
・反応時間が影響した
スタート直後の5mまでのタイムには、号砲がなってからのスタート時間が影響することが予想できます。しかし、メディシンボール投げの記録と反応時間に何らかの関係があるとは考え難いと言えます。このことが影響して、スタート後の5mまでのタイムには、メディシンボール投げの記録との関係がそこまで強くならなかったと考えられます。
・スタートでは反動を使えない
酒井ほか(2013)の研究では、メディシンボール投げは反動を使って行っているのに対して、短距離走のスタートの最初の1歩では反動を使えません。反動アリの時のパワー発揮と、反動ナシの時のパワー発揮は別物です。このことが影響し、スタート後5mまでの速度とは関係があまり強くならなかったということも考えられます。反動ナシのメディシンボール投げの記録を取ってみると、スタート後5mまでのタイムとの強い関係が得られるかもしれません。