
ウエイトトレーニングのBIG3と言われる種目には、ベンチプレス、スクワット、デッドリフトがあります。
ここでは、陸上競技におけるデッドリフトの必要性や、トレーニングでの用い方について紹介していきます。
デッドリフトとは?
デッドリフトとは、主に大臀筋やハムストリング、大腿四頭筋を強化できるウエイトトレーニングで、下肢でのパワフルな力発揮が求められる陸上競技のトレーニングでも多く用いられています。
スクワットと比べてハムストリングへの刺激が強く、股関節の伸展動作に関わる大腿二頭筋の長頭や半腱様筋と言った、腿の付け根の方の筋力強化に適していると言えます。
参考動画(デッドリフト)
デッドリフトとスプリント、垂直跳びパフォーマンスとの関係
Swintonほか(2014)の研究では、体重当たりのデッドリフトの1RM(一回で挙げられる重さ)が重いほど、30mスプリントタイムや垂直跳びの記録が良かったことを報告しています(対象はラグビー選手)。
体重当たりのデッドリフト重量と30mスプリントタイムとの相関係数(r)は-0.82と比較的高く、30mスプリントパフォーマンスの約6割は、体重当たりのデッドリフトの重量で説明可能、と言ったほどです。
また、Thompsonほか(2015)の研究では、週に2回のデッドリフトによるトレーニングを10週間継続することで、垂直跳びの記録が7.4%向上し、脚筋力(トルク)の立ち上げが18.8%~49%ほど良くなったとされています。

つまり、バーベルを用いたウエイトトレーニング(デッドリフトを含んだ)によって、下肢より大きな力発揮、素早い力発揮能力向上が期待できるというわけです。
陸上競技におけるデッドリフトの必要性
素早い加速や高いトップスピードは、短距離走や走幅跳や棒高跳といった跳躍競技に無くてはならない能力です。
ヒトは地面を押すことによって生まれる地面反力を使って進んでいます。
大きな力を伝えた方が、自分が前に進むための加速度は大きくなるので、そのエンジンとなる大臀筋やハムストリングで大きな力を発揮できることは重要だとわかります。
また、トップスピードを高めるためには当然ピッチを高められなければなりません。この時、脚を前に引き出してすぐに身体の真下付近で接地ができるためには、脚が前に吹っ飛んでいかないように、ハムストリングや大臀筋で素早く大きなブレーキをかける必要が出てきます。

ここで大きな力を発揮できないと、膝下が必要以上に前に振り出てしまったり、身体のより前方に接地してブレーキをかけてしまったりと、うまく走ることができないばかりか、ハムストリングの肉離れなどの怪我に繋がる危険性も増します。
以上のことから、短距離選手や跳躍選手が、大臀筋やハムストリングで素早く強い筋力を発揮できるように鍛えることは重要で、そのための手段としてデッドリフトは非常に有効なトレーニングであると判断できます。
加えて、中距離や長距離選手であっても、これらの筋肉を鍛えておくことで、ランニング効率の改善やラストスパートのキレに繋がります。この場合、高重量、低回数、高ボリューム行うことがポイントです。
参考文献
・Swinton PA, Lloyd R, Keogh JW, Agouris I, and Stewart AD. Regression models of sprint, vertical jump, and change of direction performance. J Strength Cond Res 28: 1839–1848, 2014.
・Thompson BJ, Stock MS, Shields JE, Luera MJ, Munayer IK, Mota JA, and Olinghouse KD. Barbell deadlift training increases the rate of torque development and vertical jump performance in novices. J Strength Cond Res 29: 1–10, 2015.