下り坂トレーニングのメリット
スプリントスピードを高める1つの手段として、下り坂スプリントトレーニングが挙げられます。
下り坂を走ると、普段よりも高いスピードを発揮することができ、それがピッチの向上に繋がると言われています。また、下り坂による接地の衝撃に耐え得る、脚の硬いバネを鍛えるのにも有効です。
このようなことから、下り坂スプリントは、足を速くするためのトレーニングとして広く導入されるようになっています。
関連記事
下り坂トレーニングでの注意点
下り坂のスプリントトレーニングをトレーニングで用いる際には、いくつかの注意点があると考えられます。
Baronほか(2009)の研究では、平地、上り坂、下り坂の60mスプリントを、4分の休憩を挟んで10本行い、その時のスピードや全身の疲労感、筋肉の疲労感、血中乳酸値を比較しています。この時の1本1本のスプリントは、個人の任意のペースで行いました。
その結果、下り坂トレーニングでは他の2つの条件と比較して、トレーニング中のスピードが、その状況下で全力で走った時よりも低くなっていたこと、血中乳酸値が低かったこと、全身の疲労感は低く、筋肉の疲労感は高かったことが分かりました。
この時の実験の被験者は、下り坂だと一歩一歩ブレーキをかけるような接地になり、その衝撃、負荷の大きさから、無意識のうちにスピードを制限してしまっていたという可能性が考えられます。
このような結果から、下り坂でのトレーニングの注意点として
・全身の疲労感が低い割に筋肉へのダメージが大きくなりやすいこと
・インターバル形式で何本も行なっていると、スピードレベルが低下してしまう場合があること
が、考えられます。
下り坂トレーニングの目的が、高いスピードを発揮させることになるのなら、休憩を長めに取って、一本一本集中力を高めた状態で行う必要があると言えるでしょう。
また、筋肉へのダメージは大きいと考えられるため、そのトレーニング量や頻度を調節しなければならないことを忘れないようにしておきましょう。
トレーニングは休息を含めて、合目的的に行いましょう。
参考文献
・Baron, B., Deruelle, F., Moullan, F., Dalleau, G., Verkindt, C., & Noakes, T. D. (2009). The eccentric muscle loading influences the pacing strategies during repeated downhill sprint intervals. European journal of applied physiology, 105(5), 749-757.