コーナーリングを科学する(カーブを上手く走るためには?)




コーナーリングを科学する(カーブを上手く走るためには?)

 

 

陸上競技の短距離種目では、200mや400mなど、曲走路を含む種目があり、曲走路で速度を落とさないように走る能力は非常に重要です。

 

 

 

特に200m走や4×100mリレーの1走、3走では、曲走路で最大速度に到達するため、このコーナーリングの技術次第で、タイムが大きく変わる可能性があります。

 

 

 

選手の中には直線競技は得意なのに、曲走路は苦手な選手もいるはずです。

 

 

逆に、直走路ではそこまで速くないけど、曲走路は得意な選手もいることでしょう。

 

 

ここでは、曲走路を走る技術「コーナーリングの上手さ」とは何か?

 

 

 

これについて考えていきます。

 

 

 

なぜ曲走路で速度が低下するのか?

 

当然かもしれませんが、曲走路での疾走速度は直走路よりも遅くなりやすいことが多くの研究で示されています(文献1-6)。

 

 

曲走路では運動の方向を変えながら走る必要があるため、特に内側の脚の外側へのキック力(内側への地面反力)が大きくしなければならないこと、そしてそれによる接地時間の増加が原因として考えられています(文献7-9)。

 

 

しかし、中には直走路と曲走路で疾走速度に差はみられなかったという報告(文献10)もあります。

 

 

どうやら曲走路で速度が落ちやすい選手、落ちにくい選手が存在するようです。

 

 

 

 

コーナーリングが得意な選手と苦手な選手の差は何?

 

そこで、Ohnumaほか(2018)(文献11)は、曲走路で速度が落ちにくい群(得意群)と落ちやすい群(苦手群)で、動作や力発揮にどのような差があるのかを調べました。

 

 

この研究ではなんと曲走路が得意な群では、直走路よりも速度が高くなっていました。

 

 

逆に苦手群では大幅に速度が落ちていますね。

 

 

※Ohnumaほか(2018)より、筆者が翻訳

 

 

 

そして、得意群に対する苦手群の曲走路での走りの特徴として、「外側の脚の後方へのキック力」「外側脚のステップ長(主に滞空距離)」「外側脚の離地時の股関節角度」が減少していたことが挙げられています。

 

 

 

 

 

 

このように、曲走路を上手く走れない選手は、外側の脚で地面を上手く蹴ることができていない特徴がありました。

 

 

 

また、得意群も苦手群も、内側脚の外側へのキック力(内側への地面反力)に変わりはなかったことから、曲走路で速度が低下する原因は内側脚の外側へのキック力の増加が原因ではないと指摘されています。

 

 

 

これらのことから、「外側脚を上手く使えるようにする」ことが、コーナーリングが上達するために重要なようです。

 

 

 

じゃあいったいどんな意識で走ればいいの?

 

ここがスポーツバイオメカニクスの欠点でもありますが、「外側の離地時の股関節角度が小さくなっていて、キック力が低下している」からと言って、「外側の脚で強く蹴る意識」が有効なわけではありません。

 

 

速く走るための意識は別のところにあることは多いのです。

 

 

じゃあバイオメカニクスは役に立たないのではないか?

 

 

そう考える方もいるかと思いますが、決してそんなことはありません。

 

 

動作の特徴が分かれば、動作改善の目的地が分かるわけです。

 

 

練習の効果が良い方向に向かっているのか、または思わぬ方向(悪い方向)に向かっているのかは、目的地が分かっていなければ判断できません。

 

 

今回は、曲走路が苦手な選手は「外側の離地時の股関節角度が小さくなっていて、キック力が低下している」という特徴がありました。

 

 

これを改善するためにどのようなトレーニングや意識が重要かまでは、断言できませんが、今後の練習ヒントの一つになることは間違いないでしょう。

 

 

自分の感覚と向き合いながら、より良い意識を探ってみてください。

 

 

合わせて読みたい!

・陸上競技のバイオメカニクス記事一覧

 

 

 

 

参考文献

1. Chang YH, Kram R. Limitations to maximum running speed on flat curves. J Exp Biol, 2007; 210: 971-982
2. Churchill SM, Salo AI, Trewartha G. The effect of the bend on technique and performance during maximal effort sprinting. Sports Biomech, 2015; 14: 106-121
3. Churchill SM, Trewartha G, Bezodis IN, Salo AI. Force production during maximal effort  bend sprinting: Theory vs reality. Scand J Med Sci Sports, 2015; 26: 1171-1179
4. Greene PR. Running on flat turns; experiments, theory, and applications. J Biomech Eng,  1985; 107: 96-103
5. Stoner LJ, Ben-Sira D. Science in Athletics. Del Mar: Academic publisher, 167-173; 1979
6. Usherwood JR, Wilson AM. Accounting for elite indoor 200 m sprint results. Biolo Lett,  2006; 2: 47-50
7. Hamill J, Murphy M, Sussman D. The Effects of Track Turns on Lower Extremity Function. Int J Sport Biomech, 1987; 3: 276-286
8. Luo G, Stefanyshyn D. Ankle moment generation and maximum-effort curved sprinting performance. J Biomech, 2011; 45: 2763-2768
9. Smith N, Dyson R, Hale T, Janaway L. Contributions of the inside and outside leg to maintenance of curvilinear motion on a natural turf surface. Gait Posture, 2006; 24: 453-458
10. Alt T, Heinrich K, Funken J, Potthast W. Lower extremity kinematics of athletics curve sprinting. J Sports Sci, 2015; 33: 552-560
11. Ohnuma H et al., (2018) How to maintain maximal straight path running speed on a curved path in sprint events, Journal of Human Kinetics, 62(in press).

 



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