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歩行動作の科学(歩行効率と振り子・重心移動)

歩行動作

「歩く」動作は、ヒトが最も得意な運動だと言っても過言ではありません。なぜならヒトは2足で立って歩くことに特化して進化してきたからです。

 

犬やチーターのように速くは走れませんし、鳥のように空を飛ぶことはできませんが、実は、ヒトは他の動物と比較して「歩行」の効率が良いと言われています。

 

そこでここでは、ヒトの2足歩行がいかにして行われているかについて紹介していきます。


歩行サイクルとは?

片足が地面に接地してから地面を離れて、逆足が接地し地面を離れる…この歩行動作の一連の流れを「歩行サイクル(歩行周期)」と言います。

 

歩行サイクルは、足が地面に着いている立脚期と、地面から離れている遊脚期があります。

 

また、両足が地面に着いている瞬間は両脚支持期、片足しか着いていない瞬間は単脚支持期と呼ばれます。

 

 

歩行中は両足が地面から離れる瞬間はありませんが、走行中は両足が地面から離れる「同時遊脚期」が存在します。

 

どちらかの足が地面に着いていること、これが歩行の定義とも言えます。

 

陸上競技の競歩に「ロスオブコンタクト」という、左右どちらかの足が常に地面についていないといけないルールがあるのはそのためです。

 

足に重心が乗っていない?(歩行中の重心移動)

歩行中、ヒトの重心はどのように移動しているのでしょうか?

 

2足で立ち続けるためには、支持基底面から重心線を外さないようにすることが必要だと紹介しました(下図参照)。

 

 

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・姿勢を安定させるには?(支持基底面と重心・安定性)

 

しかし、歩行や走行中など、移動運動中は必ずしも同じことが言えません。

 

歩行中は片足で接地している局面が多く、また同じ足が接地している時間も短いため、ずっと重心線を支持基底面に乗せておくことができないからです。

 

なので歩行中の支持基底面と重心線の位置の関係は、以下のようになります。

 

 

このように、歩行中は重心線が支持基底面と重なる局面がわずかしかありません。

 

重心線が支持基底面の外にあるということは、身体全体に回転力(モーメント)が生まれることになります。

 

そうすると、バランスを崩して倒れてしまいそうになりますが、歩行では次の一歩を踏み出すことで、身体を支え、また次の一歩を踏み出す…と、この動作の連続によって、安定性を保っているわけです。

 

また、歩行中は上下左右に重心位置が数センチ変化します。まっすぐ移動しているわけでありません。

 

左足が地面に接地してから、右足が接地するまでに、重心はやや右側へ移動します。右足から左足接地に向かう時は、左側に少し移動します。

 

上下動は、足が地面に接地した瞬間に最も低く、支持期の中盤で最も高くなります。

 

歩行と振り子運動

歩行中のヒトは、支持基底面から重心線を外し、バランスを崩しながら重心を移動させ、安定性を保っていること、また歩行中は重心が上下左右にも移動していることは、ここまで述べた通りです。

 

実は、このバランスを崩しながら、かつ上下左右に重心を移動させることこそが、非常にエネルギー効率の良い歩行動作につながっています。

 

ヒトの歩行動作は「振り子」のようだと言われています。

 

振り子は、物体が高いところにあることによる「位置エネルギー」と、物体が速度を持っていることによる「運動エネルギー」を相互に交換することによって、ずっと運動を続けられるものです。

 

 

空気抵抗などがなければ、振り子は永遠に動き続けることができます。

 

そして、ヒトの歩行は「逆振り子」とも呼ばれ、接地位置を支点に、脚が前に倒れていく動作の連続です。

 

重心が高いところから斜め前に転がるように移動して、次の一歩を接地して、その勢いで位置エネルギーを回復させる…またその位置エネルギーを利用して、前に倒れていく…歩行はこの動作の連続です。

 

つまり、歩行動作は振り子運動と同じように、永遠に動き続けることが出来るような仕組みのもと行われているとも言えるのです。

 

しかし実際は、接地している時にブレーキがかかったり、空気抵抗があったりするため、ヒトは自ら筋力を発揮、すなわちエネルギーを消費しないと歩き続けることはできません。

 

とは言っても、逆振り子の2足歩行は、出来るだけエネルギーを消費せずに移動を続けるために非常に合理的な仕組みであると言えます。

 

 

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