
身体作り、主に筋肉量の維持向上にはタンパク質の摂取が重要だと、広く知られています。
トレーニングしている人であれば、1日にタンパク質を体重1kgあたり2gを目安に摂ると良いだとか、減量中の筋肉量維持にはもう少し多くのタンパク質が必要だとか、高齢者でも、タンパク質が多く必要だとかです。

足りてるタンパク質をさらに増やしても効果はない
タンパク質の摂取は大事だ大事だ…と広く認識されるようになってきたのはとても喜ばしいことです。栄養やトレーニング関連の専門家の方々が、質の高い情報を仕入れ、それを長期間に渡って、地道に発信し続けた成果であると言えます。
一方で、最近ではタンパク質は大事だからと言って、摂れば摂るほど良いという考えだとか、非常に偏った食生活だとかも同時に散見されるようになりました。朝昼晩とプロテインを飲まないと落ち着かない…という人だっているようです。
そもそも、不足分を補うことで効果が得られるのがサプリメントです。不足していないものをさらに増やしてもなんら効果は得られません。タンパク質についても同様です。ある量を越えるとその効果は頭打ちします。
これに関連して、以下のような研究があります。高齢の女性にプロテインサプリメントを摂取させて、その後長期的に筋肉量維持向上や身体機能の維持改善に効果があるかどうかを調べたものです(Zhuほか,2015)。

その結果、プラセボ(偽薬)を摂取させた群と比較しても、1年後、2年後と、身体組成や機能が改善したわけではありませんでした。なぜなら、この研究の対象の女性たちは、特段普段の栄養が足りていない…わけではなかったからです。(筋力トレーニングを並行していれば違う結果になったかもしれません)
不足しているから補うという当然のこと
「不足しているから補う価値がある」ということは、多くのケースで当てはまることです。風邪を引いていない人に風邪薬を飲ませても意味がないわけです。必要な人に必要なものを処方するから効果が出るわけです。
トレーニングも同様に、足りてないから増やす価値がある、不足している要因を見出して、それに適したトレーニングを処方するから効果が出るわけです。
「これは万人に効果が高い代物だ!」というサプリメントやトレーニングというのはありません。
もし「多くの人にとって効果があるんだ!」というものがあるとすれば、それは「多くの人にとって不足しているものだから」効果があった…という可能性が高いでしょう。
不足を見極めて、それを補う…という基本的なこと、それを丁寧にやれることが大切です。
参考文献
・Zhu, K., Kerr, D. A., Meng, X., Devine, A., Solah, V., Binns, C. W., & Prince, R. L. (2015). Two-year whey protein supplementation did not enhance muscle mass and physical function in well-nourished healthy older postmenopausal women. The Journal of nutrition, 145(11), 2520-2526.