スポーツのコーチングにおける「ほめる」ことのメリットは非常に多いと考えられます。
選手が嬉しいフィードバックになる
「ほめる」ためには、選手のことをよく見ていなければいけません。選手が何か行動を起こしたときに、その行動が適切だったかどうかを必要に応じて評価し、伝えてあげる(フィードバックする)ことは指導者の役割です。
これは、スポーツの技術練習、戦術練習に関わる場面でも、チームとして行動している生活面でも同様です。良いプレーをした時には、そのプレーの何が良かったかを伝えて、ほめることで選手のモチベーションが上がると同時に、その行動が強化されます。
何も言わずとも、「選手が今のプレーは良かったなぁ」と感じながら自己反省できるのであれば良いかもしれませんが、選手によっては今のプレーの何が良かったのかも認識せずに、その時間を過ごしてしまいます。
練習用具を準備する際にも、積極的に他の手伝いを行う選手がいれば、その行いをほめてあげる…のようなことも同様です。そのほめられている選手の姿を見て、さらに他の選手の行動も促進されるでしょう。個をほめることは、チーム全体の適切な行動を促すことにつながるわけです。
とはいえ、選手が不適切な行動をとった時には、それを叱ることも必要です。その場合は理不尽に怒鳴りつけるのではなく、なぜその行動が悪かったのかをきちんと伝えた上で、説得出来なければなりません。相手の話を耳を傾けて、その選手の言い分を理解した上でフィードバックをしましょう。相手が本当に納得すれば、その悪かった行動は適切なモチベーションで抑制されるはずです。
A:「怒られるからこの行動はしない」
B:「〜することで〜に繋がり、〜に迷惑がかかるからこの行動はしない」
前者(A)は指導者がおらず怒られる環境でなくなると、その行動を繰り返します。
信頼関係が築ける
ほめることは、指導者がきちんと選手のことを見ていることを伝えることでもあります。「ちゃんと見てくれている」という安心感や「ちゃんと自分の努力に寄り添ってくれている」という感情は、選手と指導者の信頼関係の架け橋だとも言えるでしょう。
この信頼関係があるかどうかが、何か重要な物事を決定する際の選手の理解の得られやすさや、選手が指導者に意見しやすい環境作りなど、様々な面で影響します。
特に、何か選手が間違ったことをしてしまい、それを叱る必要が出てきてしまった場合、この信頼関係が築けていないと、選手は心からそのフィードバックに目を向けてくれないことが起こり得ます。
選手と指導者の信頼関係は、選手が自信を持って練習に打ち込めるかどうかにも関わり得ます。信頼できない指導者の練習に真剣に打ち込み、フィードバックに耳を傾けられる選手がどれほど存在するでしょうか?