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練習を続けるモチベーションの保ち方

トレーニングを継続する重要性

トレーニングは継続が非常に重要です。どんなにハードなトレーニングをしたとしても1回のトレーニングでウサインボルトにはなれません。トレーニングを継続してその効果を少しずつ積み上げていくことでパフォーマンス向上に繋がります。これは誰が聞いても当たり前の話です。

 

 

しかし、トレーニングをいくら継続しようと思っても、何だか気持ちが乗らない、トレーニングルームや競技場への足取りが重い…といったことを感じることは誰しもある筈でしょう。

 

高校生なら高校総体、大学生ならインカレ…など、大きな試合が終わると

 

「あと一歩で表彰台だった。来年は必ずメダルをもらおう。」
「先輩たちとリレーを組めるのは来年が最後。悔いのない結果を残したい。この1年は本気で練習する。」
「来年は必ずインターハイへ行く。or 日本インカレに出る。」

 

などと、非常にモチベーションが向上していることがあります。このモチベーションを保ち続けていければ、きっと充実したトレーニングを積んでいける筈です。

 

しかし、人間という生き物は残念なもので、一時的にどんなにモチベーションが湧き上がろうとも、しばらくすると「トレーニングに向かうのが辛い…」と感じるようになってしまうことがあります。

 

あの時の悔しさ、思いがどんなに強くても、時が経ってしまえばそれがじわじわと霞んでいくわけです。

 

せっかくモチベーション、目標を新たにトレーニングをしてきたのに、それが継続できなくなってしまうのは勿体ありません。やめてしまうのは簡単だけど「多分いつか後悔するんだろうな…」ということが心のどこかで分かっていて、非常にもどかしい気持ちになったりすることもあるでしょう。

 

そこでここからは、トレーニングを続ける上での「モチベーションを保つ工夫」について紹介していきたいと思います。よろしければ、参考にしてみて下さい。

 


トレーニングを工夫する

トレーニングの単調さを避ける

トレーニングの単調さを防ぐことは、モチベーションを保つ一つの手段になり得ます。年がら年中同じトレーニングばかりしていれば、それはさすがに自身へのストレスになることがある筈です。ずっと同じ食事をしていればすぐに食べたくなくなる、食べるのが辛くなるのと似ています。

 

トレーニングの単調さを避けることは、オーバートレーニングを防いだり、トレーニングの適応順化を防ぐためにも重要だと言われているのも事実です(Meeusen& De Pauw,2013;マトヴェーエフ,2008)。

 

トレーニングの目的が定まっているのであれば、トレーニング手段・方法は様々考えられる筈です。トレーニングのやり方を変えて、本来の目的が達成できなくなってしまえば本末転倒ですが、その目的がぶれない範囲でトレーニングに幅を持たせることは重要でしょう。

 

時にはゲーム性を持たせるなどして、辛いトレーニングも楽しくやれる工夫があるとなお良いと考えられます。

 

 

ストレスや調子に応じた負荷設定

自身の調子、ストレス度合いに応じてトレーニング量を変えることは重要です。

 

今日はテスト前でよく眠れてなくて身体のダルさがひどい…けど練習はいつも通りやらなくちゃ…という日々に耐え続けていると、ある日を境にバーンアウトしてしまう…という事態にもなり得ます。そうなってしまえば、せっかく我慢して続けてきたトレーニング効果も失われてしまいます。

 

なので、そういう時には無理をせず、トレーニング量を減らすなどして、できる範囲で「とにかく継続させる」を第一に考えた方が良いかもしれません。そして調子の良い時はいつもより量をこなすようにしましょう。

 

実際に、McNamara et al.(2012)の研究では、自身の調子やストレスに応じてトレーニング量を変化させた方が、ずっと一定のトレーニング量をこなすよりも効果が高かったと報告されています。(「トレーニングの総量が同じくらいなら」という点に注意。元気な時はトレーニングを増やす必要がありそう。)

 

したがって、今日は辛過ぎるな…という時は決して無理をせず、元気で余裕がある時はいつもより多くトレーニングをこなす…などの工夫ができれば、トレーニングのモチベーションも保てつつ、トレーニング効果も上がりやすくなるのではないか?と考えられます。

 

モチベーションの上がる目標設定

目標は「達成可能性が50%」がちょうど良い?
目標設定もモチベーションを保つために重要な役割を担います。この時重視すべきは、目標は高過ぎず、低過ぎず設定することです。高過ぎると現実味が無くなり、モチベーションが上がりにくくなってしまいますし、逆に低過ぎて達成が容易な場合も考えものです。

 

Atkinson(1964)によると目標達成の主観的な確率が50%程度のものが、その行動の動機づけが最も高まるとされています(対象は子供たち)。達成できるかできないかが五分五分くらいで、そのことに対するモチベーションを高くできるというものです。

 

とはいえ、本当に達成したい目標があるのなら、たとえそれが今の自分よりもかなり高いレベルだとしても、それを目標に設定すること自体は否定されるべきではありません。やる気の強さは当然、「達成したい!」という気持ちの強さにも影響を受けるからです。

 

その場合は、「トレーニングしなきゃ!」というモチベーションの高さ故のオーバーワークに注意しましょう。

 

最も自分のやる気が掻き立てられる目標設定を心がけましょう。

 

 

スマホの画面を「目標壁紙」変える

目標設定が大事で、いくら立派な目標を立てたとしても、気づいたらその目標を忘れてしまっている自分に気付いてしまうことはよくあります。時が経てば忘れてしまうのが人間です。

 

その場合の工夫として、スマホのロック画面を自分の目標が書かれているものに変更する、家の目につく場所にそれを貼り付ける…などが挙げられます。

 

これらはありきたりですが、1日1度でもその目標を確認するキッカケがあるかないかで、日々の行動は変わり得ます。ただ、常に目標に対して努力する、そういう緊張感を持った生活を続けていると、逆に疲弊してしまうタイプの人もいることでしょう。

 

競技は競技、プライベートはプライベートと分けて生活したい人にとってはお勧めできるものではありません。

 

 

目標を公言する

目標を他人と共有すると、「言ったからにはやらなくちゃ。」「他人が自分の目標を知っている。後には引けない。」状況を作ることができます。

 

精神的に多少しんどくなるようなことでもありますが、必ず達成したい目標があって、それに向かって自分を律する状況を作っておきたい、という人にとっては有効な方法だと考えられます。

 

個人だけではなかなかモチベーションを保つのは大変です。人との関わりを上手く利用しながら、お互いがお互いを律しあえる関係になれたら良いですね。やるかやらぬかは自分次第とは言いますが、やはり環境は大切です。環境がなければ環境づくりから始めるしかありません…。

 

SNSを活用する

最近ではSNSを利用して、チームのみんなで練習日誌をつける選手が増えてきました。そのメリットとして以下の点が挙げられます。

 

・練習の振り返りが容易。
・アドバイスをもらいやすい&しやすい
・動画を載せることが可能。

 

自身の練習状況を赤裸々に残しておくこと、それをチームメイトの目に留まる場所に記述しておくことは、自他のトレーニングの質やモチベーションを向上させていく上で非常に有効なのではないかと考えられます。

 

他人のトレーニングや、その時の意識や感覚、トレーニングの結果が、他人のトレーニングに役立ったり、他人の好成績が自身のモチベーションを掻き立ててくれる場合があるからです。

 

また「皆に自分の行動が見られている」というモチベーションの外圧を容易に作ることが可能です。

 

どういう目的でSNSでの練習日誌を始めるかは人それぞれですが、トレーニングの質やモチベーションの維持向上を図りたいという人にとっては、割と使えるツールなのではないでしょうか。

 

コーチがいない環境なら「コーチをつける」がかなり効果的

専門のコーチがいない、トレーニング環境は多く存在します。そういう中で、最も手っ取り早く、モチベーションを高く保ちながらトレーニングを続けていく方法が、「信頼できるコーチをつける」ことです。

 

自分のトレーニング状況を常に見てくれて、目標達成のために寄り添ってくれる人の存在は、選手としての最も大きなモチベーションになる筈です。対価を払ってコーチをつける…というのは、一般学生としてはなかなか難しい面があるかもしれませんが、本当に結果を出したい場合、それなりの価値はあると考えられます。

 

とはいえ、「コーチなんかつけずに自分で考えて自分で実行して、試行錯誤していく過程が楽しい」と感じている選手も非常に多い筈です。

 

自分の目的に合わせてよりよい環境を考えていきましょう。

 

 

筆者の経験談(怪我の際のモチベーションの保ち方)

この記事を書いている筆者も、9歳から26歳(2020年3月時点)まで競技を続ける中で、モチベーションが保てなくなる時期が多くありました。

 

そのモチベーションが保てなくなるキッカケとして最も大きかったものが「怪我」です。怪我をして長期的にトレーニングができなくなってしまうと、目標と自分の現状のギャップに常に押し潰されそうな状態が続き、何もかもやめたくなる気持ちになってしまうことがよくありました。

 

トレーニングによるパフォーマンスの向上が何よりのモチベーションだったりしたので、思うようにトレーニングできない現状ほど面白くないものはありませんでした。

 

モチベーションが保てずに怪我をしている期間はダラダラと過ごしがちで、その後試合に復帰できたとしても、シーズン通して記録は芳しくないということがほとんどでした。「怪我をしてたからしょうがないか」と、ついついダラダラと過ごしてきた期間を正当化しがちになります。

 

しかし、怪我をしていてもその後大きく記録を伸ばす選手は実際多くいるようで、そういう人たちの話を聞いたり、トレーニングについて勉強しているうちに、怪我をしている期間に対してあまり悲観的にならなくなってきました。

 

そこで大きく変わった考え方が、「怪我している期間も、トレーニングによる能力の向上を目指す。」です。

 

怪我をしている期間といえば、「能力が落ちないように…」と今まで培った能力をどうにかキープしようという考え方にハマりがちですが、筆者にとっては「何か1つでも向上させられる要素を見つけて、それをしっかりと伸ばしていける期間にしよう」と捉えた方が、高いモチベーションで日々を過ごすことができました。

 

例えば、ハムと腓腹筋の肉離れを同時に起こしてしまい、2か月ほど本来のトレーニングができなかった時期がありました。その期間、痛みが出ない範囲で、ハムや腓腹筋への負担が少ない自転車ペダリングトレーニングを、いわゆるタバタトレーニング形式で行い、このトレーニングでの能力向上に集中しました。その結果、復帰後のレースでも好タイムを出し、その1ヶ月後には自己記録、またその2週間後には大きな自己ベスト更新を達成することができた…という経験があります。

 

これと似たような事例研究に、400m選手がハムの肉離れの回復期間を使って自転車ペダリングによる間欠的高強度運動を行い、その後記録を更新させたというものがあります(奈良ほか,2014)。

 

このように、怪我をしていたとしても、自分の種目につながりうる、そしてその期間でも伸ばすことができる能力があるのなら、そのトレーニングに集中して、体力を大きく向上させようとする期間として捉えた方が、選手としてのモチベーションも、その後の試合復帰もスムーズにいくことが多いのではないかと感じられます。

 

現状維持しようとするよりも、一つでも向上させられることに目を向けて、トレーニングに対するポジティブさを失わずに過ごすことが重要です。

 

もちろん、そのトレーニングによって怪我の悪化に繋がるようなことは絶対にNGですが…。

 

 

以上、トレーニングに対するモチベーションを長期的に保って、成果に繋がるようなキッカケを一つでも掴んで頂ければ幸いです。

参考文献

・Meeusen, R., & De Pauw, K. (2013)オーバートレーニング症候群,桜井智野風訳:リカバリーの科学,長谷川博・山本利春監訳;Mujika & Hausswirth著, 9-21.
・マトヴェーエフ:魚住廣信監訳,佐藤雄亮訳(2008)ロシア体育・スポーツトレーニングの理論と方法論.ナップ.pp.558-568.
・McNamara et al. Flexible nonlinear periodization in a beginner college weight training class. J Strength Cond Res. 2010 Aug;24(8):2012-7.
・Atkinson, J. W. (1964). An introduction to motivation.
・奈良春樹,吉本隆哉,山本正嘉(2014)ハムストリングスの肉離れを発症した陸上競技短距離選手に対する早期復帰のためのリハビリテーショントレーニング―自転車エルゴメータを用いた間欠的ペダリングの効果―.スポーツパフォーマンス研究.6:289-299.

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