体力とは何か?(よくわかる体力の定義)

体力とは何か?(よくわかる体力の定義)




体力とは何か?(よくわかる体力の定義)

 

 

「体力」と言うと、どんなことが連想されるでしょうか?

 

 

疲れ知らずでバリバリ働ける人のことを「体力がある」と言ったり、持久走で記録の良い人のことを「すごい体力だ」と言ったり、学校で行われるスポーツテストは「体力テスト」とも呼ばれていたり、その使われ方は様々です。

 

 

「体力を付けなきゃ!」とはよく言われますが、上の通り扱われている意味が広すぎて、具体的にどういう能力のことを指しているのかが釈然としません。

 

 

そこでここでは、この「体力」とは一体何を指しているのか?その体力をつけるためにはどのようなことが必要なのか?について説明していきます。

 

 

 

体力とは何か?

 

体力とは、「人間の身体の発揮し得る能力の総称」とされ、英語では「physical fitness」という言葉が最も近い意味になるとされています(山地ほか,2011)。

 

 

この体力は大きく「身体的要素」「精神的要素」、さらには「行動体力」「防衛体力」に分けることができます。

 

 

※山地ほか(2011)より作成

 

 

身体的要素と精神的要素

 

身体的要素はその名の通り、肉体が持つそもそもの機能のことを指します。例えば「筋力、柔軟性、持久性、免疫、体温調整、体格」などです。

 

 

一方、精神的要素は「意志、意欲、精神的ストレスへの抵抗力」など、肉体とは直接関与の無い、精神に関する能力のことを言います。

 

 

行動体力と防衛体力

 

「行動体力」は、行動、運動に直接かかわる能力のことを指します。運動を起こすためには「筋力、瞬発力」などが必要であるとともに「意志や判断力」も必要です。そして、その行動を持続させたり、調整したりする「持久性、柔軟性、協働性」などもこの行動体力に含まれます。

 

 

さらに、この行動体力は「形態的体力」「機能的体力」に分けられます。形態とは、体格や姿勢、臓器の大きさなどの基盤を言い、機能はそれらを動かすための筋力、柔軟性などの能力です。

 

 

対して「防衛体力」は、生命維持のために必要な体力とも言われ、体温調整や免疫力、臓器の構造、ストレスへの抵抗力などがこれにあたります。防衛体力が無ければ、すぐ病気になったり、運動するにもモチベーションが上がらなかったり、トレーニングをしてもトレーニング効果が上がらなかったりすることにつながります。したがって、防衛体力は、行動体力の基盤を成しているものだとも言えるでしょう。

 

 

 

スポーツテスト(体力テスト)で測定するのは、「身体的要素の行動体力」

 

「スポーツ(体力)テスト」で測定している体力と言うのは、この「身体的要素の行動体力」です。例えば以下のようなものが挙げられます。

 

 

筋力

「筋力」は、その名の通り、筋肉が発揮できる力のことを言います。例えば、より重たいバーベルを用いたスクワットができる人は、筋肉で大きな力を発揮できているはずなので、「筋力が高い人」だと言われるのは当然です。

 

 

筋力の指標にはいろいろなものが用いられますが、最もよく用いられるのが「等尺性の最大筋力」と言うものです。これは、力を発揮している間に筋肉の長さが短くなったり、長くなったりせずに発揮できる力の大きさを表します。体力テストの「握力」がそれにあたるものです。

 

 

また、この筋力は、女子では10歳前後、男子では10代前半に顕著に向上し、トレーニングしていないと、40台頃から加齢とともに低下していってしまいます。

 

 

加齢と握力の変化

※「スポーツ庁 平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について」より引用

 

 

筋力不足は、運動量の低下、転倒、それに伴う将来の寝たきり状態と関連しています。負荷をかけたトレーニングを行うなどして、積極的に「貯筋」を心がけましょう。加えて、筋肉はトレーニングによって、60歳を過ぎた後でも増加させることができます。

 

 

 

スピード(敏捷性)

 

「スピード」は、刺激に対して素早く反応できたり、ある動作を素早く反復できたり、走ったり泳いだりするスピードが高いことなどを指す能力です。これは、筋肉にどれだけ指令を早く送ることができるかや、筋肉がどれだけ速く強く収縮できるかといった能力に依存します。

 

 

また、筋肉を形作っている「筋線維」には、大きな力を発揮できるが持久性に乏しい「速筋線維」と、大きな力は出せないが、持久性の高い「遅筋線維」があります。この筋線維の比率には個人差があり、一般に「速筋線維」が多いほど、筋肉の収縮スピードは高いと言われています。

 

 

 

 

体力測定で用いられる測定方法としては「反復横跳び」「50m走」がこれに当たります。

 

 

 

平衡性、協働性

 

「平衡性」「協働性」は、簡単に言うと「自分の身体を思い通りにコントロールできる能力」を指します。したがって、この能力に長けていると、やっとことの無い動作でも、他人よりも上手く行うことができたり、不安定な場所でも、動作を的確に、安定して遂行することができるはずです。

 

例えば、目を閉じたままで片足立ちがどれくらい長くできるかや、平均台の上を安定して渡ることができるかどうかなどが、この能力を判断する指標になります。

 

 

 

持久性

 

「持久性」は、特定の運動をどれだけ長く行うことができるかを表すものです。比較的強い力を発揮し続ける能力は「筋持久力」、全身運動を長く続ける能力は「全身持久力」と、使い分けられることが多いです。

 

 

この能力には、特に「筋肉が酸素をどれだけ利用できるか」の能力が関わります。したがって、酸素を利用してエネルギーを生み出す器官である「ミトコンドリア」、酸素を届ける「毛細血管」をどれだけ増やすことができるかに、この能力の向上のカギがあると言えます。

 

 

加えて、筋肉に蓄えられている「グリコーゲン(糖質)」などのエネルギー源の多さ、酸素を取り入れ、運ぶための呼吸循環器の機能も関わっています。

 

 

体力テストでの指標は「20mシャトルラン」「1500m走」がこれに当たります。この能力は、トレーニングをしていないと、10台半ばごろから低下していきます。

 

 

加齢と持久力の変化

※「スポーツ庁 平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について」より引用

 

 

日常レベルで生活するだけであれば、このような持久能力は必要ないと考えられます。しかし。この持久力の指標である「最大酸素摂取量」を伸ばす、維持することは、健康に生活することのできる寿命、すなわち「健康寿命」を伸ばすために非常に重要です。

 

 

全身持久力が高い人は、より多くの活動を、しかも楽に行うことができると考えられます。ということは、自然と日常生活での運動量は増えやすく、筋肉量を維持しやすかったり、代謝が良くなりやすかったりと、様々なメリットが伴います。

 

 

 

柔軟性

 

「柔軟性」は、「どれだけ大きく身体を動かすことができるか」を表します。筋肉の伸張性が高く、関節の可動域が大きいことが重要です。

 

 

これを評価する体力テストが「長座体前屈」です。このテストでは、主に腿の裏側の筋肉の伸びやすさ(伸張性)を評価しています。しかし、このテストでは、体幹部分の長さによる影響も大きく、また、柔軟性と言えど腿の裏の筋肉だけであるため、正確な指標と言えるかどうかは怪しいところがあります。

 

 

 

 

参考文献

・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・スポーツ庁 平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について 文部科学省スポーツ庁.
・Saltin, B., & Gollnick, P. D. (1983). Skeletal muscle adaptability: significance for metabolism and performance. Handbook of Physiology. Skeletal Muscle, 10, 555-631.



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