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【詳しく知りたい】解糖系によるATPの再合成

【詳しく知りたい】解糖系によるATPの再合成

ヒトは筋肉を収縮させる時、脳を働かせる時、心臓、臓器を活動させる時、全てにおいてATP(adenosine tri phosphate:アデノシン三リン酸)というエネルギー物質を分解して、エネルギーを得ています。

 

しかし、このATPは非常に不安定であるため、体内でほとんど蓄えられません。このことから、別のエネルギー源を使って、ATPを再合成する必要があります。

 

そのエネルギー源の一つが「糖」であり、糖を分解して酸素を使わずエネルギーを生み出すルートのことは解糖系と呼ばれます。

 

ここでは、この解糖系のエネルギー生産の仕組みについて、詳しく知りたい人向けの紹介をしています。


解糖系のシステム

筋内のグリコーゲン、または血中のグルコースが、グルコース6-リン酸に分解されます。そして、このグルコース6-リン酸は、以下の図のようなルートを辿って、ピルビン酸になるまでの過程で、ATPの再合成に必要なエネルギーを生み出します。

 

 

また、ピルビン酸は筋肉内のミトコンドリアで処理されることになりますが、ピルビン酸の貯蔵量には限界があると考えられています。ここで、ミトコンドリアでのピルビン酸の処理が追いつかない場合、ピルビン酸は「乳酸」と言う物質に変換されます。

 

そしてこの乳酸は、以下の2つのルートを辿って処理されます。

 

一つは、運動強度が低くなるなどで、ピルビン酸の代謝が追いついてきた時、乳酸は再度ピルビン酸に変換され、その筋肉でのエネルギー源となります。もう一つは、血中へ出て行き、他の筋肉や臓器のエネルギーとして代謝されるルートです。

 

いずれにせよ、解糖系を経て得られた乳酸はどこかで効率の良いエネルギーとして処理されることになるわけです。

 

 

酸素が十分にない時に解糖を進めるためには、乳酸の生成が必要

グリセルアルデヒド3-リン酸が、1,3ビスホグリセリン酸に変換される時、NAD(電子運搬体)という補酵素に水素イオンを受け渡す必要があります。

 

一方、ピルビン酸を乳酸に変換する時、NADHから水素イオンが抜き取られ、NADとなります。この時できるNADは、上のグリセルアルデヒド3-リン酸を、1,3びすほグリセリン酸に変換する時に使われるわけです。

 

 

したがって、ピルビン酸を乳酸に変換するのは、糖をピルビン酸に分解してエネルギーを得るために必須ということになります。

 

 

グルコースとグリコーゲンの分解では、生まれるエネルギーの量が違う

1モルのグルコース6-リン酸からは、3モルのATPが合成されます。ここで、グルコースはグルコース6-リン酸になる時、1モルのATPを消費するので、1モルのグルコースからは3-1=合計2モルのATPを生み出すことができます。

 

一方、グリコーゲンを分解して、グルコース6-リン酸になる時はATPを消費しません。なので、1モルのグリコーゲンからは3モルのATPを生み出すことができます。

 

筋肉に糖をあえてグリコーゲンという形で貯蔵しているのは、このように糖を効率的にエネルギーに変えられるようにするためだとも言えるわけです。

参考文献

・勝田茂, 和田正信, & 松永智. (2015). 入門運動生理学. 杏林書院.
・芳賀脩光, & 大野秀樹. (2003). トレーニング生理学.
・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・山本正嘉. (2011).山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京.
・八田秀雄. (2009). 乳酸と運動生理・生化学: エネルギー代謝の仕組み. 市村出版.

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