有酸素系のエネルギー供給とは、その名の通り「酸素を使ってエネルギーを生み出す仕組み」です。
ATPを再合成する他の仕組みである「ATP-CP系」「解糖系」では、酸素を使わずにエネルギーを生み出しますが、有酸素系では、呼吸することで取り込んだ酸素を使って、エネルギーを生み出します。
そして、この有酸素系のエネルギー供給の材料となるのが、脂質と糖です。
脂質は遊離脂肪酸として血中に存在しており、ミトコンドリアというエネルギーの生産工場に入っていきます。また、糖は解糖系で分解されたあとピルビン酸となって、ミトコンドリアに入ります。
そこで遊離脂肪酸もピルビン酸も、アセチルCoAという物質に作り変えられ、トリカルボン酸回路(TCA回路:TCAサイクル)に取り込まれ、複雑な過程を経て処理されていきます。
TCAサイクルの複雑な過程について、詳しく知りたい方はこちらへ(図解:有酸素系のエネルギー供給とTCAサイクル(※作成中))。
この回路でアセチルCoAは、最初にクエン酸に変換されるため、TCA回路は別名、クエン酸回路とも呼ばれています。また、この回路の順番を決定した生化学者の名前がクレブス(Krebs)だったことから、クレブス回路と呼ばれることもあります。
このTCA回路で、水素イオンがたくさん生み出され、電子伝達系がこの水素から電子を受け取ります。最終的に、その電子を使って酸素を還元して水にし、その過程において多くのATPを生み出します。この時の電子伝達系におけるATPの再合成は、酸化的リン酸化と呼ばれています。
解糖系では、1モルのグルコースからは2モル、1モルのグリコーゲンからは3モルのATPしか生産できませんでした。しかし、この有酸素系のエネルギー供給を合わせると、1モルのグルコースからは38モル、1モルのグリコーゲンからは39モルのATPを作り出すことができます。
つまり、エネルギーを生み出すまでに時間はかかるけど、それだけ効率よく、大量にエネルギーを生産することができるわけです。