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よくわかる最大酸素摂取量(VO2max):スポーツパフォーマンスや健康との関わりは?

最大酸素摂取量とは?

最大酸素摂取量とは、ヒトが一定時間に体内へ取り込んで使うことのできる酸素量の最大値のことです。

 

この能力は運動中にどれだけ筋肉が酸素を使うことができたか?つまり、酸素を使ったエネルギー供給系をどれだけ働かせることができたかを表す指標だとも言えます。この最大酸素摂取量は、一般に以下の式で表されます(Fickの法則)。

 

~Fickの法則~

 

・最大酸素摂取量(VO2max)=心拍出量(Q)×動静脈酸素較差(CaO2ーCvO2)

 

※心拍出量:単位時間当たりに心臓が送り出せる血液の量
※動静脈酸素較差:動脈血と混合静脈血の酸素濃度の差。運動で、血中の酸素がどれくらい抜き取られたかを表す。

 

 

ヒトがエネルギーを生み出す仕組みには、無酸素性のエネルギー供給系有酸素性のエネルギー供給系があり、運動中はそれぞれのエネルギー供給系が同時に働いています。

 

無酸素性のエネルギー供給系は大きなパワーを生み出すのに優れていますが、あまり長続きしません。一方で、有酸素性のエネルギー供給系はエネルギー供給速度が遅く、大きな力は出せませんが長続きさせることができます。なので、より爆発的な運動時にはより無酸素性、より持久的な運動時には有酸素性のエネルギー供給系が大きく貢献しているわけです。

 

 

つまり、どれだけ酸素を取り込んで筋肉でどれだけ酸素を使うことができるか?を表す最大酸素摂取量は、この有酸素性のエネルギー供給系の能力の高さ、より持久的な運動能力の高さを表す一つの指標とみなすことができます。

 

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最大酸素摂取量を決める要因

この最大酸素摂取量は、一般に以下の要因で決まると言われています。

 

 

  • 呼吸系

これは、肺がどれだけ酸素を取り込むことができるかに関わるものです。酸素を摂取するためには、そもそも呼吸をして多く空気を吸い込んだり、吐いたりする機能が必要だと言えます。そのため、呼吸に関わる筋肉を発達させることも、最大酸素摂取量を高める上での一つの視点になると言えるでしょう。

 

 

  • 肺拡散系

肺では、酸素濃度の低くなった血液に酸素を満たしたり、逆に多くなった二酸化炭素を取り除く役割を果たさなければいけません。呼吸で取り込んだ空気は、肺の中の「肺胞」までたどり着き、そこで酸素と二酸化炭素の交換を行います。

 

 

  • 循環系

心臓や血管が、血液の中の酸素をどれだけ筋肉に送り届けられるかに関わるのがこの循環系です。心臓が一拍あたりどれくらい血液を送り込めるか、そしてどれだけ筋肉に届けられるか、または血液にどれだけ酸素を取り込めるかなどが関連します。

 

 

  • 組織拡散系

血液の酸素を、筋肉の細胞へ拡散させる能力のことです。毛細血管を増やしたり、筋細胞の中にあるミオグロビンというタンパク質を増やしたりすることで、酸素が筋細胞へと行き渡りやすくなります。

 

 

  • 組織での酸素消費系

筋細胞内で、酸素を消費する能力に関わるものです。筋細胞にはエネルギーの生産向上ともいえるミトコンドリアが存在しています。このミトコンドリアで酸素を消費することでエネルギーを生み出しているので、このミトコンドリアの多さは、酸素の消費量と大きく関わります。

 

 

このように、呼吸して酸素を取り込んで、筋肉まで届けて、そこで実際に消費できる能力…と、あらゆる要因が、酸素摂取能力に関わっています。

 

最大酸素摂取量と運動パフォーマンスの関係

より持久的な運動能力に関わる最大酸素摂取量ですが、実際の運動パフォーマンスとどのような関係があるのでしょうか?

 

Weyand et al.(1994)は、陸上競技のトラック種目(100m、200m、400m、800m、1500m、5000m)のトライアルを実施させ、最大酸素摂取量との関連を調べました。その結果、800m以上のタイムと有意な相関関係がみられ、距離が長くなるほどその関係は強くなりました。

 

したがって、距離がより長い持久的な運動ほど、最大酸素摂取量とパフォーマンスとの間には強い関係が見られやすいということです。

 

 

実際に、陸上競技の長距離選手マラソン選手は、短距離選手や卓球、ハンドボールなどの他の競技種目の選手より、高い最大酸素摂取量を示しています。

 

 

 

しかしながら、トップアスリートの集団内でみると、一概に最大酸素摂取量がパフォーマンスと強く関係するとは言えなくなってきます。例えば、エリートレベルの5000mランナー、10000mランナーを対象にした研究では、長距離パフォーマンスと最大酸素摂取量との間に強い関係はみられていません(Yamanaka et al.,2020)。このレベルになると、最大酸素摂取量よりも、乳酸性作業閾値や走りの経済性(ランニングエコノミー)、無酸素性の運動パフォーマンスなど、他の体力要因が長距離パフォーマンスとより関連してくるようです。

 

 

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最大酸素摂取量と健康リスクとの関係

最大酸素摂取量は運動パフォーマンスの指標としてだけでなく、重要な健康指標として扱われています。日常レベルで息が上がるような運動をすることはほとんどないですが、この最大酸素摂取量が高いほど、心血管系疾患のリスク、死亡率が下がると言われています(Kodama et al.,2009)。死亡率に関しては2倍もの差にもなるようです。

 

また、全身持久力の高低によって、その後の16年間に渡る累積死亡率を比較すると、明らかに全身持久力の高い群の死亡率が低いことが分かります。

 

 

これには、より持久的な運動能力に優れていた方が日常生活における運動量が多くなりやすかったり、より運動量が多くなることによってメンタルヘルスの状態が良くなりやすかったり・・・などが関連しています。持久力の高い身体というのは、活動的な毎日を送るための基盤になっているというわけです。

 

スポーツテストなどでシャトルランや持久走を実施して、運動能力を評価するのには、生活習慣病を予防したり、生涯にわたる健康状態を保持増進するための情報として活用するという役割があるのです。

 

 

最大酸素摂取量の測定方法

酸素摂取量は運動の強度が上がるにつれて増加します。そして、ある強度になると酸素摂取量の増加が頭打ちしてきます。この時の酸素摂取量の最大値が最大酸素摂取量です。

 

この最大酸素摂取量の測定方法には、大きく分けて直接法間接法の2種類が存在します。

 

 

直接法

運動負荷を徐々に高めながら、対象者を疲労困憊まで運動させて、直接酸素摂取量を測定する方法です。換気量や呼気ガス濃度を調べるために、専用のマスクをつけて運動を行います。そのため、直接法による測定をやるには、機器の有無や場所による制限が大きくなってしまいます。

 

 

間接法

対象者の直接法による最大酸素摂取量と、持久運動パフォーマンスの関係性を基に、最大酸素摂取量を間接的に推定する方法です。広く知られている方法には「12分間走(クーパーテスト)」や、スポーツテストでも実施される「20mシャトルラン」などが挙げられます。

 

~12分間走での推定式~(Cooper,1968)

・VO2max(ml/kg/min)=(12分間走の走行距離(m)-505)/45

 

~シャトルランでの推定式~(Leger & Lambert,1982)
・VO2max(ml/kg/min)=5.857×シャトルラン中の最高疾走速度(km/h)-19.458

 

 

参考動画(20mシャトルラン)

最大酸素摂取量を高めるトレーニング

この最大酸素摂取量を高めるためには、最大酸素摂取量レベルの運動強度でトレーニングを行うことが重要です。この強度は、主観的に「最高にきつい、非常にきつい」と感じるくらいの強度です。激しく呼吸が乱れるような強度なので、あまり長い時間継続することはできません。

 

最大酸素摂取量とは、その言葉の意味通り、酸素を取り込む能力の最大値です。なので、より多くの酸素を取り込み、より多くの酸素を血液に乗せて循環させるような刺激を与える必要が出てきます。そのため、より強度の高いインターバルトレーニングなどが、最大酸素摂取量を高めるために直接的に有効だと言われています。

 

トレーニング例

 

・1000m走×5 休息5分

 

・(3000m+2000m+1000m)×3 距離間5分 セット間10分

 

このようなトレーニングを行うことで、呼吸筋の発達や肺での酸素拡散能力向上、心拍出量増加などによって、酸素の供給量が増えます。さらに、筋肉の毛細血管やミトコンドリアが増えることで、骨格筋で酸素を消費できる量(酸素消費量)が増えることにも繋がります。

 

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・本当のタバタトレーニングとその効果(実践動画)

 

・短距離走に有酸素トレーニングは必要か?

 

 

参考文献

・Laursen, P. B. (2010). Training for intense exercise performance: high‐intensity or high‐volume training?. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 20, 1-10.
・Weyand, P. G., Cureton, K. J., Conley, D. S., Sloniger, M. A., & Liu, Y. L. (1994). Peak oxygen deficit predicts sprint and middle-distance track performance. Medicine and science in sports and exercise, 26(9), 1174-1180.
・Sandvik, L., Erikssen, J., Thaulow, E., Erikssen, G., Mundal, R., & Rodahl, K. (1993). Physical fitness as a predictor of mortality among healthy, middle-aged Norwegian men. New England Journal of Medicine, 328(8), 533-537.
・Yamanaka, R., Ohnuma, H., Ando, R., Tanji, F., Ohya, T., Hagiwara, M., & Suzuki, Y. (2020). Sprinting Ability as an Important Indicator of Performance in Elite Long-Distance Runners. International journal of sports physiology and performance, 15(1), 141-145.
・Kodama S et al. Cardiorespiratory fitness as a quantitative predictor of all-cause mortality and cardiovascular events in healthy men and women: a meta-analysis.JAMA. 2009 May 20;301(19):2024-35.
・Leger, L. A., & Lambert, J. (1982). A maximal multistage 20-m shuttle run test to predict $$\dot V $$ O2 max. European journal of applied physiology and occupational physiology, 49(1), 1-12.
・Cooper, K. H. (1968). A means of assessing maximal oxygen intake: correlation between field and treadmill testing. Jama, 203(3), 201-204.
・増田和美(2011):山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版,pp.99-119.
・本間三和子(2003):芳賀脩光, & 大野秀樹 編, トレーニング生理学,杏林書院.

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