無酸素性作業能力を高めるためには、当然トレーニングが必要です。加えて、食事やサプリメントによっても、その能力を高める(低下させない)ことができます。
筋肉量を増やす
クレアチンリン酸の貯蔵場所としても、糖を分解する酵素の多い速筋線維を増やすためにも、筋肉量を増やすトレーニングは重要です。
筋肉量を増やす=無酸素性作業能力が高まる…ではありませんが、その土台づくりとしては欠かせないと言えるでしょう。ウエイトトレーニングやスプリントトレーニングなどで、負荷を与えて、速筋線維を刺激するトレーニングが有効です。
筋力を高める
筋肉が大きくなるだけでは、その能力を十分に引き出すことができません。なので、肥大した筋肉がきちんと大きな力を発揮できるように、トレーニングをする必要があります。
具体的には、最大筋力法と呼ばれる、高強度低回数のウエイトトレーニングを用いたり、ジャンプトレーニングなどで一瞬で大きな力を発揮させるような刺激も有効でしょう。これによって、効率よくエネルギーを分解して、大きな力を発揮できるようになります。
スプリントトレーニング
スプリントトレーニングとは、短距離走や自転車ペダリングなどで、強度の高い比較的短時間の運動を行うものです。ハイパワーを短時間のうちに発揮するトレーニングであるため、直接的に無酸素性作業能力を高めるトレーニングであると言えます。
このようなトレーニングを行うことで、以下のような効果が得られるとされています『以下、(八田,2003)より紹介』。
・速筋線維の肥大
遅筋線維が減って速筋線維が増えるということはありませんが、スプリントトレーニングのような高強度の刺激を与えることで、無酸素性作業能力の土台と言える速筋線維を太くすることができます。
・解糖能力の向上
糖を分解する酵素を活性化させて、運動で糖を分解する能力(解糖能力)を高めることができます。糖を多く分解できるようになるので、乳酸を多く作ることができるようになります。しかし、スプリントトレーニングでは、解糖能力と同時に、以下に続く酸化能力も向上させるので、一概に乳酸値が高くなるわけではないとも言われています。
・酸化能力の向上
短距離走でも有酸素系のエネルギー供給の貢献が高いと言われていることから、スプリントトレーニングでも、酸素を使ってエネルギーを生み出す酸化能力が向上します。強度の高い運動であっても運動開始直後からミトコンドリアでの有酸素性の代謝が始まっているので、それを繰り返すようなトレーニングをやれば、有酸素性の能力向上も期待できると言えます。
・緩衝能力向上
糖を多く分解し、乳酸が蓄積していくと、筋肉内が酸性に傾きます。すると、糖を分解する酵素の働きが影響を受け、解糖系が長続きしなくなってしまいます。ここで、筋内が酸性に傾くのを防ぐのが、緩衝能力です。緩衝能力が高まると、より多く糖を分解できるようになるとされています。
トレーニング例
無酸素性作業能力を高めるトレーニングには、考え方次第で様々なバリエーションを持たせることができます。
とにかく、クレアチンリン酸や糖の分解を最大限にするくらい高強度であることが前提で、目的に応じて運動時間や休息を考えなくてはいけません。
クレアチンリン酸を多く分解して、短時間でのパワー発揮を高めたければ、5ー10秒程度、全力で走ったり、ペダリングしたりするトレーニングが挙げられます。少し長い時間、ハイパワーを発揮し続ける能力を高めたければ、30秒程度全力で走ったり、ペダリングしたりするトレーニングを積むことも有効でしょう。

関連動画(POWERMAXで無酸素パワーを測定する 【東京有明医療大学】)
食事・サプリメントで高める
また、無酸素性のエネルギー供給を行うための、そもそものエネルギー源を、食事やサプリメントから補給しておくことも有効です。
筋内のクレアチンリン酸は、クレアチンサプリメントを活用することである程度増えると言われています。また、筋内のグリコーゲンは、食事から糖を摂取することで、回復します。
そもそものエネルギー源を充分に満たした状態でないと、高いパワーを発揮することはできませんし、トレーニング効果もなかなか上がってこないでしょう。トレーニングと食事はセットで考えるべきです。
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