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酸素借と酸素負債とは?2つの違いは何?

 

 

酸素借とは?

 

運動を始めると、呼吸が荒くなってくることがあります。これは、身体が酸素の取り込みを増やして、よりたくさんエネルギーを作ろうとするからです。

 

 

しかし、酸素を使ったエネルギー供給(有酸素系のエネルギー供給系)では、エネルギーを作るスピードが遅いため、激しい運動になると、必要なエネルギーを賄うことができなくなります。この不足分のエネルギー生産を賄うのが「無酸素性のエネルギー供給」です。

 

 

 

 

ここで、摂取できなかった酸素に当たるのが「酸素借」です。特に激しい運動時は、本来必要な酸素の量(酸素需要量)と、取り込む酸素の量(酸素供給量)との間に大きな差ができます。「酸素借」とは、その差分のことを言うわけです。

 

 

酸素借:運動に必要なエネルギーの総量を、本来必要な酸素の量で表した時の酸素需要量と、運動中に取り込んだ酸素の量(酸素供給量)の差分。

 

 

また、激しい運動後は、しばらく呼吸が乱れた状態が続きます。これは、本来必要だった酸素を取り戻そうとしている状態です。無酸素性のエネルギー供給で賄ったエネルギー分の酸素を回収しているようなイメージです。

 

 

つまり、激しい運動中は必要な酸素の量に、取り込める酸素の量が追い付かないので、「酸素の借金」をして、エネルギーを生み出しているのです。酸素の借金…なので「酸素借」です。

 

 

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酸素負債とは?

 

借金をすると、多くの場合利子が付きます。酸素借も同様に、利子を付けて返す必要が出てきます。

 

 

例えば、激しい運動を行って、本来必要であった酸素の分のエネルギーを、無酸素性のエネルギー供給系から賄ったとします。運動終了後、その不足分の酸素を取り込もうと、しばらく呼吸が乱れた状態が続くことになります。ここで、不足分を取り込んで、安静時レベルまでに回復するまでの酸素摂取量の総量を酸素負債と言います。そしてこの酸素負債は、前借していた酸素の量(酸素借)よりも少し多くなることが知られています。

 

 

 

 

これは、酸素の前借りをしてエネルギーを生み出していた無酸素性のエネルギー供給系の材料となる、クレアチンリン酸やグリコーゲンを再合成するのにエネルギーが必要であることや、そもそも運動によって体温が上昇していることによってエネルギー消費が少し増えることなどが原因として考えられています。

 

 

この、運動後に余剰に摂取される酸素の量は運動後余剰エネルギー消費(EPOC:excess post-oxygen consumption)と呼ばれており、高強度の運動がダイエットに有効であることを示す根拠の一つとして知られています。

 

 

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酸素借・酸素負債という呼び方は正しいの?

 

ここまで酸素借・酸素負債という言葉について説明しましたが、この呼び方は適切ではない面があります。これらは、「足りない酸素の量を前借り」するというニュアンスでつけられた名前ですが、厳密には「酸素の前借りにはなっていない」からです。

 

 

酸素借分のエネルギーは、無酸素性のエネルギー供給によって賄われると言いました。ここで重要な無酸素性のエネルギー供給源として、クレアチンリン酸というエネルギー源があります。このクレアチンリン酸は筋肉の中に蓄えられており、酸素が無くとも、分解するだけでハイパワーを生み出すことができる優れたエネルギー源です。

 

 

しかし、クレアチンリン酸を再合成して蓄えるためには、実は酸素を使ったエネルギー供給が必要になるのです。ミトコンドリアで、酸素を使ってエネルギーを生み出し、そのエネルギーをクレアチンリン酸として蓄えます。つまり、クレアチンリン酸も、もともとは酸素を使って作り出したエネルギー源であるというわけです。

 

 

 

 

したがって、クレアチンリン酸は、酸素を使ったエネルギーの貯蓄とみなすことができます。なので、酸素借、酸素負債といったニュアンスではなく、正しくは「貯金した酸素を切り崩している」という方が適切です。

 

 

このことから、最近は酸素借・酸素負債という言葉はあまり使われなくなってきたとも言われています。ただ、未だにスポーツ生理学の教科書や講義に出てくる単語の一つでもあるので、その意味について理解しておくことは重要でしょう。

 

 

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参考文献

・山地啓司, 大築立志, 田中宏暁 (編), スポーツ・運動生理学概説. 昭和出版: 東京(2011).
・八田秀雄(2004)エネルギー代謝を生かしたスポーツトレーニング,講談社.




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