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よくわかる乳酸性作業閾値(LT:Lactate threshold)

乳酸性作業閾値(LT:Lactate threshold)とは?

乳酸性作業閾値とは、解糖系のエネルギー供給にあまり頼らずとも、継続することができる運動強度のことを指します。解糖系が高まる、すなわち糖の分解が高まることから、この運動強度では「乳酸(糖を分解してエネルギーを生み出す際の副産物)」が多く作られることになります。そのため、乳酸値が急激に高まり始める運動強度とも言い換えることができます。

 

 

ヒトの筋肉には、遅筋線維速筋線維が含まれており、運動強度が低い時は、主に遅筋線維が優先的に使われます。遅筋線維は大きな力は出せないものの、持久性に優れており、楽な運動時にはこちらを使った方が効率が良いというわけです。

 

また、遅筋線維にはミトコンドリアというエネルギー生産工場のような器官が多く含まれており、主に脂質を使ってエネルギーを多く生み出します(糖質、乳酸もエネルギーとして利用されます)。

 

一方で、速筋線維はミトコンドリアが少なく、持久性に富んでいません。その代わりに速筋線維は、糖質(グルコース、グリコーゲン)を分解する酵素が多く、糖質を分解することで、素早くエネルギーを生み出すことができます。なので、大きな力を発揮することができるのが特徴です。

 

 

さて、乳酸性作業閾値の具体的なイメージを掴むために、「徐々に運動強度を高くしていく運動」について考えてみましょう。最初の強度の低い状態では、遅筋線維が主に使われることとなります。

 

しかし、運動強度が高くなってくると、遅筋線維だけでは出力に対応できず、速筋線維を動員しなければならなくなってきます。速筋線維を動員すると、糖の分解が高まることになります。この時、糖を分解する過程で生まれるのが先述した「乳酸」という物質です。なので、この強度ポイントになると、血中の乳酸値が高くなっていきます。図にすると以下のようなイメージになります。

 

 

乳酸値が高まるということは、すなわち糖の分解が高まっていること、速筋線維がより多く使われていることを意味します。この糖の分解、速筋線維の動員が高まってくる運動強度のポイントが、乳酸性作業閾値と呼ばれているわけです。

 

 

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乳酸性作業閾値と運動パフォーマンス

この乳酸性作業閾値は、トレーニングによって高めることができます。トレーニングにより、遅筋線維のミトコンドリアや毛細血管を増やしたり、速筋線維にもミトコンドリアを増やしたりすることで、乳酸値が急激に上がる強度ポイントが、より高いレベルに引き上がります。

 

言い換えると、糖の分解に頼らずとも生み出せるエネルギーのキャパシティー、そして糖を分解しても、その乳酸を使ってエネルギーを生み出すキャパシティーが上がる・・・といったイメージです。

 

こうなると、これまで糖を多く分解しないといけなかった運動強度でも、乳酸値を高めずに運動を継続できるようになります。

 

 

特にマラソンなどでは、出来る限り糖を温存して走る能力が求められるため、この乳酸性作業閾値の高さが、パフォーマンスに強く関連すると言われています。乳酸性作業閾値が低いと、同じ運動強度でも糖の消耗度合いが大きく異なるからです。

 

 

 

また、持久系の運動能力の指標には、もう一つ有名なものとして、最大酸素摂取量というものがあります。これは、一定時間内にどれだけ酸素を取り込むことができるかを表すものです。

 

しかし、エリートランナーなどでは、最大酸素摂取量とパフォーマンスには強い関係性は見られないと言われており、逆に乳酸性作業閾値とは、パフォーマンスとの関連が強いと言われています。

 

最大酸素摂取量は、骨格筋や血管や心臓の大きさに依存するため、トレーニングによる能力向上の可能性(トレーナビリティ)が低いと言われています。対して、筋肉の酸化能力に依存する乳酸性作業閾値は、成長期が過ぎた後でもトレーナビリティが高く、持久的な運動能力を向上させたいアスリートにとっては、見逃すことのできない運動能力の指標と言えるわけです。

 

 

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乳酸性作業閾値を高めるトレーニング

持久力の指標として有名な最大酸素摂取量は、どれだけ肺で酸素を取り込んで、循環器で全身に送ることができるか?が大きく関わる能力です。なので最大酸素摂取量を高めるためには、呼吸が激しく乱れるような強度の高いトレーニングが重要だと言われています。

 

一方で、乳酸性作業閾値は最大下で継続できる運動能力のレベルを示すもので、主に筋肉の酸化能力に依存する能力です。したがって、筋肉そのものがどれだけ酸素を使ってエネルギーを生み出せるかに着目しなければなりません。

 

この要素を高めるためには、酸素を使ってエネルギーを生み出すミトコンドリアや、そこに酸素をスムーズに届けるための毛細血管の量を増やしていくことがより重要です。そして、ミトコンドリアや毛細血管を増やしていくためには、トレーニング強度の高さよりも、トレーニングの量がカギになってきます。

 

 

遅筋線維のミトコンドリアを増やす

遅筋線維のミトコンドリアを増やすためには、呼吸があまり乱れない範囲の強度での、長時間のトレーニングが有効です。呼吸が乱れないということは、糖の分解があまり高まらず、脂質を多く分解して、エネルギーを生み出している状況です。このようなペースで徹底的に長時間運動し続けることが重要だと考えられます。

 

このようなトレーニングでは、強度の高いトレーニングによる強い疲労感、自律神経の疲労があまり生じないほか、多量のトレーニングをこなすことによる体組成の改善効果があることなどのメリットもあると言えるでしょう。

 

~トレーニング例~

 

・LSD(Long slowdistance)30-120分程度
⇒会話ができるペースで、ダラダラとエネルギーを使い続ける

 

 

参考動画(強度の低いトレーニング)

 

 

速筋線維のミトコンドリアを増やす

速筋線維のミトコンドリアを増やすためには、やや強度の高いペースで、距離をこなすトレーニングが有効です(もちろん遅筋線維の能力向上にも有効です)。

 

ペースの指標として用いられているものに「OBLA:Onset of Blood Lactate Accumulation」と呼ばれるものがあります。これは、マラソン選手がマラソンを走っている最中の平均的な血中乳酸値(4.0mmol)と言われています。これはLT(乳酸性作業閾値)よりもやや高い値で、トレーニングではこの強度付近を保つことが重要です。

 

よく、LT走と呼ばれるトレーニングでは「LTを高めるために、LTのペースで走ろう!」といった理屈が持ち出されることがありますが、それでは、速筋線維を動員することができません。速筋線維が動員されるということは、乳酸値の上昇が必然的に起きるはずです。

 

なので、速筋線維の能力改善のためには、LTのペースよりも少し速い「OBLA:4.0mmol」ペースでトレーニングを積むことが必要になってきます。

 

~トレーニング例~
・10000m PR
⇒ややキツイと感じるペース。呼吸が少し乱れるペースで。

 

・5000m+5000m r:400m walk
⇒呼吸が乱れるペース。20分間耐えられるかどうか…?のペースが目安。

 

 

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参考・参照文献

・八田秀雄(2003)芳賀脩光, & 大野秀樹 編, トレーニング生理学,杏林書院.
・八田秀雄(2004)エネルギー代謝を生かしたスポーツトレーニング,講談社.

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