持久力の指標として有名な最大酸素摂取量は、どれだけ肺で酸素を取り込んで、循環器で全身に送ることができるか?が大きく関わる能力です。なので最大酸素摂取量を高めるためには、呼吸が激しく乱れるような強度の高いトレーニングが重要だと言われています。
一方で、乳酸性作業閾値は最大下で継続できる運動能力のレベルを示すもので、主に筋肉の酸化能力に依存する能力です。したがって、筋肉そのものがどれだけ酸素を使ってエネルギーを生み出せるかに着目しなければなりません。
この要素を高めるためには、酸素を使ってエネルギーを生み出すミトコンドリアや、そこに酸素をスムーズに届けるための毛細血管の量を増やしていくことがより重要です。そして、ミトコンドリアや毛細血管を増やしていくためには、トレーニング強度の高さよりも、トレーニングの量がカギになってきます。
遅筋線維のミトコンドリアを増やす
遅筋線維のミトコンドリアを増やすためには、呼吸があまり乱れない範囲の強度での、長時間のトレーニングが有効です。呼吸が乱れないということは、糖の分解があまり高まらず、脂質を多く分解して、エネルギーを生み出している状況です。このようなペースで徹底的に長時間運動し続けることが重要だと考えられます。
このようなトレーニングでは、強度の高いトレーニングによる強い疲労感、自律神経の疲労があまり生じないほか、多量のトレーニングをこなすことによる体組成の改善効果があることなどのメリットもあると言えるでしょう。
~トレーニング例~
・LSD(Long slowdistance)30-120分程度 ⇒会話ができるペースで、ダラダラとエネルギーを使い続ける |
参考動画(強度の低いトレーニング)
速筋線維のミトコンドリアを増やす
速筋線維のミトコンドリアを増やすためには、やや強度の高いペースで、距離をこなすトレーニングが有効です(もちろん遅筋線維の能力向上にも有効です)。
ペースの指標として用いられているものに「OBLA:Onset of Blood Lactate Accumulation」と呼ばれるものがあります。これは、マラソン選手がマラソンを走っている最中の平均的な血中乳酸値(4.0mmol)と言われています。これはLT(乳酸性作業閾値)よりもやや高い値で、トレーニングではこの強度付近を保つことが重要です。
よく、LT走と呼ばれるトレーニングでは「LTを高めるために、LTのペースで走ろう!」といった理屈が持ち出されることがありますが、それでは、速筋線維を動員することができません。速筋線維が動員されるということは、乳酸値の上昇が必然的に起きるはずです。
なので、速筋線維の能力改善のためには、LTのペースよりも少し速い「OBLA:4.0mmol」ペースでトレーニングを積むことが必要になってきます。
~トレーニング例~ ・10000m PR ⇒ややキツイと感じるペース。呼吸が少し乱れるペースで。
・5000m+5000m r:400m walk ⇒呼吸が乱れるペース。20分間耐えられるかどうか…?のペースが目安。 |
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