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パンプアップとは?トレーニング効果が上がる?

パンプアップとはなにか?

特定の筋肉を酷使すると、その筋肉がパンパンに膨れ上がるような感覚になることがあります。これは「パンプアップ」と呼ばれる現象で、決して筋肥大が起きているわけではありません。

 

このパンプアップがなぜ起こるのかを簡潔に説明するとすれば、それはトレーニングによって筋肉に水分が溜まるからです。

 

トレーニングを行うことで、筋肉から乳酸やアデノシンなど様々な代謝物が出され、その結果筋肉周辺の代謝物の濃度が高まります。その濃度を薄めようと、たくさんの水分が筋肉に集中し、筋肉が大きくなったように感じるようになるわけです。

 

そのため、ボディービル選手は大会直前にトレーニングを行い、パンプアップを起こした状態を作り出し、筋肉を大きく見せることがよくあります。また、糖質(グリコーゲン)やクレアチンは筋肉に蓄えられる際、水分を一緒に取り込むため、これを狙ってボディービル大会の前に糖質やクレアチンを摂取するという戦略も多く用いられています。

 

ボディビルダーの減量中は筋肉が萎んだ感じになるけど、仕上げにカーボ(糖質)を入れるとハリが出る…というのはこのことが関連しています。

 

 

関連動画(大会時のパンプアップで見た目はどのくらい変わるのか?)

 

 

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パンプアップとトレーニング効果

筋トレを多く行ったり、一度に限界まで回数をこなして追い込むようなことをすると、パンプアップが起こりやすくなります。先述の通り、これは筋肉の代謝物がたくさん出ることが関連しています。

 

では、このパンプアップしたような状態というのは、トレーニング効果にどのような影響をもたらすのでしょうか?

 

 

筋肥大に関わる5要因

筋肥大に関わる重要な要因として、石井(2015)は、以下の5要因を挙げています。その中に、パンプアップがトレーニング効果に及ぼす影響を理解するためのカギが隠れていそうです。

 

 

メカニカルストレスというのは、筋が発揮した力学的な仕事の量、つまり筋肉がどれだけ力を発揮したかです。やはり、少ないトレーニングで筋肉を大きくすることが難しいということは、トレーニング経験者であれば経験的に理解できることでしょう。より多くの張力を発揮させることは、筋肥大を生むために最も重要な要因だと考えることができます。

 

筋の損傷・再生とは、トレーニングによって付いた筋肉の微細な傷が生むトレーニング効果のことを指します。筋肉が伸びながら力を発揮する伸張性のトレーニングなどでは、この微細な損傷が起こりやすく、筋肉痛が伴います。この組織の再生過程において、筋肉が増えやすくなるというものです。しかし、伸張性のトレーニング負荷が大きすぎると、逆に筋肉が分解されやすくなってしまうことがあるため、そのトレーニング強度や量に注意を払う必要があります。

 

次に、ホルモン・成長因子です。これはトレーニングによって分泌されるもので、代表的なものにテストステロンやインスリン様成長因子(IGF-1)が挙げられます。トレーニングの休息時間を短くしたり、筋肉が長時間力を発揮するようなストレスにさらされると、これらのホルモンや成長因子が分泌されやすいと言います。

 

代謝環境は、筋肉がどれほどエネルギー源を分解して、代謝物を出せたかが関わります。また、酸素環境というのは、筋肉の中の酸素環境の悪さのことで、血流を制限するなどで酸素の供給を制限することにより、筋肥大効果を高めることができるとも言われています。

 

以上が、筋肥大を生む要因として挙げられているものです。

 

 

さて、パンプアップとは、筋肉の代謝物が溜まった状態でした。この状態を作るためには、より多くのエネルギーを生み出して代謝物を出すことが必要になります。そして、ある程度回数をこなさなければ、パンプした状態を作ることはできません。

 

つまり、代謝物を多く生み出してパンプするようなトレーニングを多くやれば、必然的にメカニカルストレスも増え、筋肥大に関わるホルモンや成長因子も増え、より筋肥大効果を高めることにつながりそうだと推察できます。

 

実際に、筋肉をデカくすることを専門にしているボディビルダー界では、パンプアップするようなトレーニングが良く用いられています。経験的にも、筋肥大によさそうだ…ということを、彼らは無意識のうちに理解しているのかもしれません。

とは言え、最も重要なのは総負荷量?

ここまで散々パンプアップが大事そうだ…と紹介してきましたが、決してパンプアップが起こるトレーニングさえやっておけば良いわけではありません。

 

筋肥大をさせるために最も重要なのは、週全体の総負荷量(重さ×回数×セット数)だと言われています(Ralston et al.,2018)。とりあえず「パンプアップだけさせといたらいいや…」で、トレーニングの総負荷量が少なくなってしまえば、大きな効果は望めません。週全体のトレーニング総負荷を確保しつつ、パンプアップが起こるような刺激を与えられたら、よりトレーニング効果を高められるかもしれません。

 

また、ここで話しているのは筋肥大の話であって、筋力向上のトレーニング効果ではありません。筋肥大と筋力向上は、別物で、筋力を向上させるためにはトレーニングの強度をより高めた刺激が必要です。

 

 

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参考・参照文献

・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・石井直方(2015).石井直方の筋肉の科学.ベースボール・マガジン社.
・Ralston GW, et al. Weekly Training Frequency Effects on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med Open. 2018 Aug 3;4(1):36.

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