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【怪我を糧に】短距離に多い怪我・予防・早期復帰トレーニング

短距離走に起きる様々な怪我

ハムストリングの肉離れ

ハムストリングの肉離れを防ぐために考えるべきことについて、動画で端的に解説しています。よろしければ、チャンネル登録お願いします!

 

 

短距離走の怪我で最も多いとされる怪我です。接地時や、脚の振出しにブレーキをかけて引き戻す際に、ハムストリングが力を発揮しながら引き伸ばされる局面で起こりやすい怪我です。再発も多く、走ることに対する恐怖感が残ってしまうことから、誰もが極力予防したいと思う怪我だと言えるでしょう。

 

ハムストリングの柔軟性や筋力不足、フォームの左右差、スピード練習の負荷の急激な増加など、様々な原因が考えられます。

 

 

ハムストリングの肉離れ予防の詳細はコチラ

・陸上短距離選手におけるハムストリングの肉離れの原因と予防方法(スプリンターと肉離れ)

 

・ハムストリングの肉離れを防ぐためにこそ、「全力スプリント練習」から逃げてはいけない

 

 

大腿直筋の肉離れ

接地時や腿を前に引き出そうとする際に、腿の前の筋肉が引き伸ばされることで多く起こる怪我です。原因に腿の前の筋肉(大腿直筋)の柔軟性や筋力不足などが挙げられます。

 

 

 

オスグッド

小学校高学年〜中学生に多い怪我です。前腿の筋肉の付着部(脛骨)が、強く引っ張られ、成長軟骨部が剥がれるようになることで発症します。成長期にみられるもので、骨の成長に筋肉の成長が追い付かず、結果的に筋肉が硬くなってしまうことで起こりやすいともされています。成長期が終了すると、多くの場合は治癒します。

 

 

膝蓋靭帯炎(ランナーズニー、ジャンパーズニー)

膝の靭帯部分にストレスがかかることで生じる怪我です。多量の接地やジャンプで膝への負荷が蓄積すること、踵で強く踏み込むようなフォームの問題、前腿の柔軟性不足などが原因として考えられます。オスグッドと同様に、骨の成長に筋肉の成長が追い付かず、結果的に筋肉が硬くなってしまうことで起こりやすいともされています。

 

 

 

アキレス腱痛

アキレス腱の付着部より数センチ上部に痛みを感じる怪我です。少し動かしていると痛みが無くなることが多いことや、組織の回復が早くないことなどから慢性化しやすい、厄介な怪我です。足部のアライメント不良や、それによる足部の捻じれなども原因となります。

 

関連記事

・陸上競技者(短距離・長距離)のためのアキレス腱痛対策(リハビリ・トレーニング・栄養摂取)

 

 

足底筋膜炎

足裏の筋肉に負担がかかることで起こる怪我です。「足裏の踵が痛い、歩きはじめに激痛が走るけど、次第に痛みが薄れていく」などが特徴的な症状です。足首周り固さや、極端なかかと接地による衝撃、蹴り出しでの負荷の蓄積などが原因として挙げられます。

 

 

疲労骨折

トレーニング量の増加やフォームの乱れなどによって、局所的な負荷が蓄積することで起こりやすい怪我です。特に足部に起きやすいと言われています。

 

早期復帰・再発防止のための手順を間違えるな

怪我から競技復帰するためには、必ず以下の順序を守りましょう。

 

①痛みがなくなる
②組織が修復される
③弱った部位の機能を改善する
④弱った部位の強化を図る
⑤徐々に競技復帰

 

 

よくある間違い、再発しやすいパターンがこちらです。

①痛みがなくなる
②競技復帰

 

 

「痛みがなくなる=完治」ではありません。

 

原因の究明を図ったうえで、長期的な対策を練る必要があります。急がば回れです。これらが守れないと、幾度となく怪我を繰り返し、大切な競技生活の大半を棒に振ってしまうケースも起こり得ます。

怪我予防&早く治す方法は?

睡眠は8時間以上

睡眠時間は怪我の発生率と強い関係があります。21か月間のケガ発生率と睡眠時間との関係を調査した研究(Milewski et al.,2014)では、以下のように言われています。

 

・睡眠時間が6時間の人は怪我の発生率が70%以上にも登った

・睡眠時間が9時間の人は怪我の発生率が20%以下・7時間でも60%越え、8時間では35%程度と、睡眠時間が短くなるにつれてケガのリスクが大きく高まった

これらのことから、おおよそ睡眠が8時間を切ると、怪我のリスクが1.7倍になるとまとめられています。怪我のリスクを防ぎ、患部の組織の回復を促すためにも、まずは睡眠時間を8時間以上は確保すべきと言えるでしょう。よく寝てください。

 

 

関連記事

・睡眠不足はスポーツのトレーニングを台無しにする

 

 

怪我を予防し、治癒を促す栄養摂取

エネルギー収支を保つ

エネルギー不足では、身体の組織の回復が促されません。組織の回復にもエネルギーが必要になるからです。

 

なので、怪我をしている期間のダイエットは好ましいことではありません。まずは十分にエネルギーを摂取して、多少体重が増えることになるとしても、怪我の治癒を優先させるべきでしょう。もちろんむやみやたらに暴飲暴食するのはNGです。

 

 

タンパク質を体重1㎏あたり2g以上

食事では骨や筋肉、腱や靭帯の材料となるタンパク質を多く摂取するようにすべきです。日々のトレーニングからの回復、トレーニング効果UPや、怪我の治癒を促すことにも繋がります。摂ってイイコトしかありません。プロテインも積極的に活用しましょう。

 

 

・「太る?腎臓に悪い?」陸上選手のプロテイン・タンパク質に対する正しい知識

 

 

微量栄養素も十分に

ビタミンやミネラルなどの微量栄養素も、怪我の予防・回復に必要です。以下の図を参考に、不足していそうな栄養素の確保に努めましょう。

 

 

 

 

 

怪我を防ぐトレーニング計画

オーバーワークを避ける

怪我の主たる原因とも言えるのが、練習のしすぎです。真面目でストイックな人ほどやり過ぎてしまう傾向はあるはずでしょう。

 

自身の身体の状態を冷静に分析して、トレーニングを調整し、休むことにもストイックになるべきです。これも一つの努力と言えます。

 

~トレーニングと回復が適切な場合~

<感じ方>
•能力の向上を感じ、モチベーションも上がる。たまに疲労を感じることもあるが、回復が十分間に合っているので、そのうち消える。
<対応>
•そのまま回復を意識して、パフォーマンスを向上させていく。
•パフォーマンスの伸びが滞ってきたら、トレーニング計画の修正を図る。強度や量、頻度を少しずつ増やす。

 

~トレーニング刺激が強すぎる or 回復が不十分な場合~

<感じ方>
•ハードなトレーニングを続けてきたにもかかわらず、パフォーマンスの向上が感じられず、疲労感を覚える。以前までこなせていたメニューを消化できなかったり、集中力や睡眠に悪影響が出ている。
<対応>
•トレーニングの内容,回復や食事などの見直しが必要。

 

 

オーバートレーニングや疲労についてはこちら

・実は分かりづらい「オーバートレーニング」の予防&対処法

 

 

特定の部位に負荷を集中させない

例えばウエイトトレーニングでハムストリングに負荷をかけて、その翌日に多量のスピードトレーニングを行い、かつハムストリングを使うような補強運動を行えば、当然ハムストリングに対する疲労が蓄積していきます。

 

このように、気づかないうちに特定の部位にダメージが蓄積されて、怪我につながってしまうケースも多いでしょう。

 

同じ部位を酷使しないようなトレーニング計画が必要です。

 

 

負荷の急増に気をつける

これまでトレーニングが十分に積めていない状態で、トレーニング負荷を急激に増やしてしまうと、怪我に繋がりやすくなってしまいます。

 

特に、長い期間あまり高いスピードを出していなかった選手が、いきなりSDや加速走、トライアルなど最大スピードを出すようなトレーニングを多く行うと、ハムストリングの肉離れリスクはかなり高まると考えられます。

 

スピード練習は徐々に、もしくは怪我防止のために定期的に行うのも良いでしょう。

 

 

弱点に応じたトレーニング

その怪我の原因となった部位、機能を回復させ、強化していきます。これに関しては、個別のケース次第です。スポーツドクターの指示を仰ぎましょう。

 

 

怪我を防ぐための、トレーニングの視点について動画で端的に解説しています。よろしければチャンネル登録お願いします!

 

 

早期復帰のためのトレーニング

患部に負担のかからないウエイトトレーニング

やれるトレーニングをやることが重要です。この期間を使って、伸ばせる能力は伸ばしておきましょう。ケガをした部位の強化にも使えます。

 

ベンチプレス(肘の伸展・肩の屈曲等)

 

プレート回旋(体幹をひねる・安定させる)

 

スクワット

 

ヒップスラスト

 

ヒップフレクション

 

 

患部に負担のかからない補強運動

ウエイトトレーニングの設備が無かったり、弱めの負荷をかけてトレーニングしたい場合は、自重でのトレーニングもオススメです。

 

プッシュアップ(ベンチプレスよりも肩甲骨を大きく動かせる)

 

プルアップ(肘の屈曲・肩の伸展等)

 

シーソー背筋

 

V字腹筋

 

レッグカール

 

片脚スクワット

 

関連動画:よろしければチャンネル登録お願いします!

 

 

400m選手が早期復帰で自己記録更新した例

400m選手がハムストリングの肉離れを起こした後、リハビリ期間のトレーニングで逆に体力を向上させ、自己記録を更新した事例があります。

 

その際に実施したのが、自転車エルゴメーター(ペダリングマシン)を使った、高強度インターバルトレーニングです。自転車ペダリングは、ハムストリングが引き伸ばされるような負荷がかかりにくいため、リハビリ期間のトレーニングとしても非常に使えるトレーニング様式だと言えます。

 

~トレーニング事例~
・10秒全力ペダリング×10本×10セット(体重の7.5%負荷)
本数間5秒、セット間10分 2週間で7回実施

 

かなりキツいトレーニングですが、この期間を経て、この選手は400mのタイムー秒からー秒、マイルリレーのラップタイムもー秒からー秒へと更新したとされています。

 

 

自転車ペダリングができる専用のマシンは、どこにでもあるわけではありません。しかし、走らずとも、患部を回復させながら、パフォーマンスに繋がる体力要素を鍛えることで、早期復帰、むしろパフォーマンスUPが不可能ではないということを教えてくれます。

怪我をチャンスに変える

怪我は自分の身体機能やフォームのおかしな部分を教えてくれるサインだとも捉えることができます。

 

火のないところに煙は立ちません。怪我は起こるべくして起こるものです。高いパフォーマンスの発揮には誤魔化しが効かない部分があることを教えてくれているわけです。

 

なぜ怪我をしてしまったのかを徹底的に分析して、再発予防に努めることは、その後の長期的なパフォーマンス向上度合いに関わってくる筈です。悲観的になり過ぎず、自分の伸び代を探るチャンスだと捉えて、今後のトレーニングの糧としましょう。

参考文献

・Milewski et al. Chronic Lack of Sleep is Associated With Increased Sports Injuries in Adolescent Athletes.Journal of Pediatric Orthopaedics. 2014, 34(2):129-133
・Graeme L. Close , Craig Sale, Keith Baar,Stephane Bermon(2019)Nutrition for the Prevention and Treatment of Injuries in Track and Field Athletes.Int J Sport Nutr Exerc Metab, 29(2), 189-197.
・Morton, R. W., Murphy, K. T., McKellar, S. R., Schoenfeld, B. J., Henselmans, M., Helms, E., ... & Phillips, S. M. (2018). A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med, 52(6), 376-384.
・Praet, S., Purdam, C., Welvaert, M., Vlahovich, N., Lovell, G., Burke, L., ... & Waddington, G. (2019). Oral Supplementation of Specific Collagen Peptides Combined with Calf-Strengthening Exercises Enhances Function and Reduces Pain in Achilles Tendinopathy Patients. Nutrients, 11(1), 76.
・奈良春樹, 吉本隆哉, & 山本正嘉. (2014). ハムストリングスの肉離れを発症した陸上競技短距離選手に対する早期復帰のためのリハビリテーショントレーニング-自転車エルゴメータを用いた間欠的ペダリングの効果. スポーツパフォーマンス研究, 6, 289-299.

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