暑さと持久パフォーマンス
体温調整の仕組み
人間には、自分の体温を一定に保とうとする働きがあります。暑い時には「暑い」と感じて、薄着になったりクーラーをつけたり、寒い時には「寒い」と感じて、厚着になったり、暖を取ろうとします。
普通、運動をすると身体が熱くなります。これは、筋肉を収縮させると熱を生み出す仕組みがあるからです。ここで、身体が熱くなりすぎると筋肉や脳の機能に障害をきたすため、汗をかいたり、血管を拡張させたりして、熱を外に逃がそうとする働きが起こります。
しかし、非常に暑い環境で運動をしていたり、運動が激しく、長時間にわたる場合では、熱を外に逃がす働きが追い付かず、徐々に体温が上がっていってしまいます。
体温が上がりすぎると持久パフォーマンスが低下する
そのようにして、体温が上昇してしまうと、持久パフォーマンスに悪影響が出ることが分かっています。以下の図は、環境の温度の違いによって、運動の継続時間にどのような違いが出るかを調べた研究です。
この研究のように、暑い環境だと、持久運動のパフォーマンスは低下しやすくなります。そのため、夏場など、非常に暑い環境下で、中長距離走や競歩の練習、またはレースを行う際には、体温の上昇をいかに防げるかが重要になってきます。
暑い中でも持久パフォーマンスを落とさないようにするためには?
体温の上昇を防ぐためにまず挙げられるのが、身体の冷却です。冷却の仕方には、以下のような方法が用いられます。
※スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック.日本体育協会(https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke_0531.pdf)より引用。
また、運動前、運動中、運動後(すぐに次のレースを控えている場合)、どのタイミングでの冷却も、パフォーマンスの低下を防ぐ役割があります。
プレクーリング
運動前に身体を冷却しておくことで、持久運動パフォーマンスの低下を防ぐことができます。しかし、過度に体温(特に筋温)が下がりすぎると、筋肉の働きが悪くなり、かえって運動パフォーマンスを損ねてしまいます。過度な冷却は禁物です。
運動中の冷却
運動中の冷却も、パフォーマンスを維持するために効果を発揮します。運動中、特に走っている最中などは、氷嚢を当てたり、アイスバスに浸かったりすることは難しいため、冷たいスポーツドリンクやアイススラリーを飲んだりして、体温の上昇を防ぎます。
運動後の冷却
運動後に冷却を行うことで、上昇した体温をスムーズに下げることができます。そのため、その日のうちに次の練習やレースを控えていたりする場合、有効なリカバリー手段になります。
しかし、トレーニング後の冷却は、トレーニング効果を減少させてしまうことも示唆されているため、リカバリーとしての冷却は、試合間など、次の運動でどうしても高いパフォーマンスを発揮する必要があるときだけにしておくのが良いかもしれません。
関連記事
参考文献
・Parkin, J. M., Carey, M. F., Zhao, S., & Febbraio, M. A. (1999). Effect of ambient temperature on human skeletal muscle metabolism during fatiguing submaximal exercise. Journal of applied physiology, 86(3), 902-908.
・スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック.日本体育協会(https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke_0531.pdf).
・競技者のための暑熱対策ガイドブック.国立スポーツ科学センター.(https://www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/jigyou/pdf/shonetsu_2-23pp.pdf)