サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


第10回「陸上競技のトレーニング手段・方法(まとめ)」

目的に応じたトレーニングを俯瞰

ここまで、短距離・跳躍・投てき選手がパフォーマンスを高めるための目的地に対応したトレーニングについて、紹介してきました。

 

 

今回は、その対応したトレーニングを俯瞰してみて、実施の際の注意点について考えていきます。

陸上競技の各種目の目的に対応したトレーニング

100m・200mのトレーニング

 

特に「最大疾走スピード」が重要で、そこを最大目標としたトレーニングを考えることが重要。

 

 

400mのトレーニング

 

400m走では、速筋線維のみならず、遅筋線維の能力を十分に高めておくことも競技力の土台とみなせる。特にジュニア期にこのエネルギー供給のバックグラウンドを固めておくことは、長期的なパフォーマンス向上のために重要な意味を持つと考えられる。

 

 

走幅跳・三段跳のトレーニング

 

走幅跳・三段跳の場合は助走スピードが重要な能力となるため、踏み切りだけでなく、最大速度を引き上げることにつながるトレーニングを考える必要がある。

 

 

走高跳のトレーニング

 

走高跳では、跳躍方向が鉛直方向に限りなく近いため、最大の疾走速度を高めるよりも、助走スピードを一瞬で鉛直方向の跳躍力に変える、「硬いバネ」を引き出すトレーニングを考える必要がある。

 

 

砲丸投・円盤投のトレーニング

 

自分の体重ではなく、投てき物をいかに加速させられるかが重要になるため、筋力の体重比はそこまでパフォーマンスに影響しない。投てきと言えど全身のパワーの高さが重要になるため、短い距離をスプリントするようなトレーニングも、そのパワーを高める一つの手段になる。

 

 

やり投のトレーニング

 

投てき種目の中で助走スピードが関連する唯一の種目。また、投てき物も比較的軽いため、より高いスピードで発揮できる筋力向上に特化したトレーニングが重要な意味を持つ。

 

これはあくまで「体力」の話

さて、ここまで短距離・跳躍・投てき選手のパフォーマンスピラミッドと、それに応じたトレーニングについて紹介してきました。しかしこれらは全て「体力(筋力や持久力など、身体能力の総称)」の話です。

 

スポーツのパフォーマンスにはこの「体力」だけでなく、当然「技術」「戦術」も関連します。高いスピードを出せるスプリント技術や、助走速度を失わずに踏み切る跳躍技術、物体に効率的に力を伝える投てき技術を磨かなければ、記録を向上させることは難しいですし、大失速を招かないペース配分、どの高さから試技を開始するか、パスをするべきか?などの戦術によっても順位は大きく変動します。

 

「体力オバケ」なだけではダメで、その種目に応じた技術を高め、戦術を最適化させていく試みをしていかなければいけません。

 

とは言え、「技術」を高めるためには、それが習得できるための体力が必要な場合があります。例えば「ハードリングが上手くなりたい」のに、高いハードルを越せるだけの跳躍力が無い場合、いくらハードルの技術練習をしようと思っても、そもそもハードルを越すことさえできないので練習になりません。この場合は、跳躍力や基礎的な筋力を高める体力トレーニングに専念した方が、ハードリング技能を高める近道になることがあります。

 

このように、ある「技」を習得しようと思ったら、それを習得できるだけの「体力レベル」が備わっていないと、そもそも話にならないわけです。逆に、体力だけは一流なのに、技術が皆無というケースもあるでしょう。

 

ポケモンに例えれば、「レベルの低いポケモンは大技を覚えられないし、レベル100でも「たいあたり」しか使えなければ負ける」です。

 

トレーニングピラミッド+対応したトレーニングを考えてみよう

ここまで読み進めて頂いた方、今後トレーニング計画を練る必要のある方は、実際に一度トレーニングピラミッドとそれに対応したトレーニングを考えてみることをお勧めします。自身の関わる競技種目のピラミッドと、それに応じたトレーニングを、自他の経験や環境、性格、その他の科学的な知見を考慮しながら、整理しておきましょう。今後のトレーニングに一貫性を持たせられるためにも、長期的な計画を練る際にも、これが必要になるからです。

 

チームでトレーニングを考える際には、この目的地とトレーニングの対応関係に矛盾がないか?その環境で実行可能か?を徹底的に精査することが重要です。その作業を通して、皆が納得できる練習計画を立てられることが、トレーニングへのモチベーションにつながります。「これは何のための練習なのか?」があやふやなまま練習するのと、この「練習はパフォーマンスピラミッドのこの部分につながるんだ」という確信をもって取り組むのとでは、やる気も効果も日々の練習での達成感も大きく違うでしょう。

 

 

トレーニングの目的地をブラさず、その目的地への向かい方に、創意工夫を凝らすことが重要です。

 

次回からは、このピラミッドを基にした長期的なトレーニング計画の仕方や注意点について紹介していきます。

 

次の記事

 

サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


Youtubeはじめました(よろしければチャンネル登録お願いします)。