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第9回「持久力を高めるトレーニング手段と方法」

持久力を鍛えるトレーニング方法

前回の記事では、短距離・跳躍・投てき選手がパフォーマンスを高めるピラミッドのより上位の能力に当たる「種目特異的な力発揮UP」のトレーニング手段と方法について、紹介しました。

 

 

しかし、短距離走の場合は、高いパワーを発揮できるだけではなくその持久力が高いことも、記録を伸ばすために重要です。そこでここでは、ピラミッドの持久力部分に関連する「ミトコンドリアや毛細血管の量」「エネルギー基質の充実(PCr:クレアチンリン酸、グリコーゲン)」のためのトレーニングについて紹介していきます。

 

ミトコンドリアや毛細血管を増やすには?

ミトコンドリアや毛細血管を増やすためには「運動でエネルギーを減らし続ける」ことが一つの刺激になります。糖(グリコーゲン)を減らし続ける、多くトレーニングをこなすことが有効です(下図参照:寺田と東田,2013)。

 

 

速筋線維なら糖を使って、高い乳酸値で多くトレーニングをするような刺激が重要です。糖が使われている運動というのは、確実に息が乱れるような運動です。なので、そこそこ高いスピードで走らないと、速筋線維の持久力改善にはなかなかつながりません。確実に速筋線維を動員できる強度でトレーニングをしなければ、高いスピードでの持久力にはつながりづらいわけです。高いスピードで多量のスプリントをこなす「走り込み」には、それなりの意味があると言えます。

 

 

マラソンがいくら速くなっても、短距離の持久力が上がるとは限りません。私たちが目指すべきなのは「遅いスピードの持久力」ではなく「高いスピードの持久力」です。

 

しかし、エネルギーを切らしすぎて身体が動かなくなる、足が止まるような刺激だと、毛細血管の新生は抑えられてしまうと言われているため、「足が止まるような追い込みスプリントトレーニング」と「そこそこ高い強度で量をこなすスプリントトレーニング」は区別して考える必要があるでしょう(白川,2017)。

 

一方で、遅筋線維の能力を高めるには、呼吸が乱れないような強度で、長い時間運動をし続ける刺激がより重要になります。そのような刺激で遅筋線維の毛細血管の増加も狙うことができます。jogを多量にこなすようなトレーニングは、この遅筋線維に働きかけているわけです。

 

ただ、あくまでも短距離走により重要なのは速筋線維の持久力です。遅筋線維を十分に鍛えておくこともパフォーマンスを高める、エネルギー供給の土台にはなりますが、高いスピードの持久力に直結するかどうかは怪しいところでしょう。不必要だとは言えませんが、あくまでも土台の土台だと認識しておくべきです。

 

 

それぞれの目的に応じた距離、休息、セット数、タイム設定をするのが重要です。

 

クレアチンリン酸・グリコーゲンを増やす?

ミトコンドリアや毛細血管を増やすだけでなく、筋肉の中のエネルギー基質を十分に蓄えておくことも重要です。そもそものエネルギー源が充実していないと、筋肉は十分にエネルギーを作り出すことができないからです(以下,白川(2017)より)。

 

クレアチンリン酸を増やす、グリコーゲンを増やすためには、基本的にそれらをたくさん使う刺激が重要です。

 

クレアチンリン酸を使っては回復させ、使っては回復させる。または、極限まで使い切るようなトレーニングです。例えば150m走を全力疾走して、30秒程度休んでまた150mを全力疾走、また30秒休んで150mを全力疾走し、最後には身体が動かなくなる…といった刺激です。当然エネルギーを使い続ける刺激にもなるため、速筋線維のミトコンドリア増加にもつながるでしょう。

 

ただ、トレーニングだけでは十分に貯蔵量を増やせないとの意見もあるようで、そこはサプリメントでの摂取が必要になります。

 

関連記事

 

グリコーゲンについては、先述の「糖を多く使うようなトレーニング刺激」で、同様に達成することが可能です。しかし、ただトレーニングをするだけでなく、食事から糖質を十分に補給することが重要です(グリコーゲンは多く貯蔵できた方が好ましいというより、貯蔵量が不足しないことが大事。練習で消耗した分をちゃんと回復させられているかが大事。)。

 

次回は、各種目の目的に対応したトレーニングを俯瞰してみて、実施の際の注意点について考えていきます。

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

・寺田新, & 東田一彦. (2013). 運動刺激に伴う骨格筋代謝機能の適応 (特集 運動刺激の正体を探る). 体育の科学, 63(8), 608-615.
・白川純(2017)陸上競技(走・跳・投)の トレーニングを 科学的な視点から考える ~運動生理学から考える、より効果的なトレーニング方法 etc~ 2017年8月10日 於;広島

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