ミトコンドリアや毛細血管を増やすためには「運動でエネルギーを減らし続ける」ことが一つの刺激になります。糖(グリコーゲン)を減らし続ける、多くトレーニングをこなすことが有効です(下図参照:寺田と東田,2013)。

速筋線維なら糖を使って、高い乳酸値で多くトレーニングをするような刺激が重要です。糖が使われている運動というのは、確実に息が乱れるような運動です。なので、そこそこ高いスピードで走らないと、速筋線維の持久力改善にはなかなかつながりません。確実に速筋線維を動員できる強度でトレーニングをしなければ、高いスピードでの持久力にはつながりづらいわけです。高いスピードで多量のスプリントをこなす「走り込み」には、それなりの意味があると言えます。

マラソンがいくら速くなっても、短距離の持久力が上がるとは限りません。私たちが目指すべきなのは「遅いスピードの持久力」ではなく「高いスピードの持久力」です。
しかし、エネルギーを切らしすぎて身体が動かなくなる、足が止まるような刺激だと、毛細血管の新生は抑えられてしまうと言われているため、「足が止まるような追い込みスプリントトレーニング」と「そこそこ高い強度で量をこなすスプリントトレーニング」は区別して考える必要があるでしょう(白川,2017)。
一方で、遅筋線維の能力を高めるには、呼吸が乱れないような強度で、長い時間運動をし続ける刺激がより重要になります。そのような刺激で遅筋線維の毛細血管の増加も狙うことができます。jogを多量にこなすようなトレーニングは、この遅筋線維に働きかけているわけです。
ただ、あくまでも短距離走により重要なのは速筋線維の持久力です。遅筋線維を十分に鍛えておくこともパフォーマンスを高める、エネルギー供給の土台にはなりますが、高いスピードの持久力に直結するかどうかは怪しいところでしょう。不必要だとは言えませんが、あくまでも土台の土台だと認識しておくべきです。

それぞれの目的に応じた距離、休息、セット数、タイム設定をするのが重要です。