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第13回「専門的準備期の過ごし方(種目そのものの体力を高めよう)」

専門的準備期の過ごし方

前回の記事では、短距離・跳躍・投てき選手のパフォーマンスを高めるための「土台作り期間」にあたる、「一般的準備期」の過ごし方について考えました。

 

 

そして今回は、その土台を改良して種目のパフォーマンスを極限まで高める期間である「専門的準備期」について、考えていきます。

種目特異的な能力向上を目指そう

※以下、マトヴェーエフ(2003,2008)を基に解説。

 

専門的準備期の目標の1つに

 

一般的準備期で作った土台を改良し、ハイパフォーマンスを発揮するための準備を進めていくこと。

 

が、挙げられます。一般的準備期で主に培った能力は、種目のパフォーマンスを上げるために重要である一方、それらを高めたとしてもすぐに専門種目のパフォーマンスUPにつながるかどうかは分からないものが多いです。例えば、短距離走に必要な筋肉を大きくする、速筋線維を肥大させることは、速く走るための重要な土台とみなせますが、ただ単に筋肉が大きくなっただけで、100m走ですぐに自己ベストが出せるとは限らないことは容易に想像ができるはずです。

 

そのため、その固めた土台部分を改良して、実際の専門種目のパフォーマンスUPにつなげる期間が、この専門的準備期に当たります。

 

 

ここでは、「試合の部分練習」や「試合そのもの」に取り組むことが、重要なトレーニングになります。専門種目のパフォーマンスUPにつなげたいのなら、その専門種目にガシガシ取り組むことが重要です。これは言うまでもないかもしれません。短距離走であれば専門種目に近い距離のトライアルを多く実施したり、強度の高いトレーニング刺激として実際にレースに参加したりします。この過程を経ないと、自身の専門的体力を極限まで高めていくことはなかなかできません。

 

なので、目標の試合から逆算して、トレーニングとして適切に「試合」を選択していくことも重要な戦略とみなすことができるでしょう。

 

この段階では、一般的なトレーニングの割合は必然的に減っていきます。ここで一般的なトレーニング量を増やしたままだと、専門的なトレーニングからの回復が追い付かず、怪我やオーバートレーニングに繋がってしまう危険性が上がってしまうからです。

技術や戦術、メンタル面の最適化を図る

専門的準備期のもう一つの目的に

 

その種目に特異的な運動能力を発達させて、競技会で必要な技術や戦術、さらにはメンタル面での向上に取り組むこと。

 

が、挙げられます。

 

実際の試合に近い専門的トレーニング中、もしくは実際の試合中に「この動きが、この局面が上手くいかない」「ペース配分が適切じゃなさそう」などの、「気づき」を得ることがあります。長い準備期を経ている選手にとっては、前シーズンと同じ意識で試合に取り組んでも、違う感覚が得られることは当然のことです。なぜなら、前シーズンとは身体の状態が大きく変化しているからです。

 

したがって、その専門的トレーニングの過程で見つけた課題を基に、細かなペース配分や技術の修正を図ったりして、自己のパフォーマンスレベルを極限まで引き上げていく作業も行わなければなりません。また、最も重要な試合に向けて、気持ちを整えたりと、メンタルの状態をピークに持ってくることも、必要なタスクとみなすことができます。

 

400m走に例えると、できる限りエネルギーを消費しないためのスタート~加速技術を最適化させたり、現時点の体力で最もパフォーマンスを発揮できるペース配分を探ったり、緊張しすぎて本来の力を発揮できない…ということが無いように、普段の練習や記録会を通して、メンタルのコントロール方法を身につけたり…です。

 

 

専門的トレーニングは「強度の高さ」がカギ

ここまで、専門的トレーニング期間では、試合で結果が出せるように能力を最適化させていくことが重要だと話してきました。これを達成するためには、最終的に「試合のような練習」を多く積んでいくことになります。すると必然的に、トレーニングの強度は高くなっていきます。

 

特にこの期間で、明らかに出力が低いようなトレーニングばかりやっていると、「重要な試合が近づいてきたのにキレがない」「スピードが出せない」「動きが鈍い」といった状態になりやすくなってしまいます。短距離・跳躍・投てき選手のように、高い出力が求められる種目であればなおさらです。

 

なので、この専門的準備期の特に後半部分では、実際の試合に近い出力で、実際の試合に近い運動をこなしていくことが重要になります。

 

また、専門的準備期の「土台の改良」は、一般的準備期の「土台づくり」よりも、比較的早く進んでいく傾向があります。このことから、専門的準備期間は、一般的準備期間よりも少し短めに設定されることが多いです。

 

 

次回からは、重要な試合が続くことになる「試合期」や、土台の作り替えをスムーズに行うための「移行期」について、紹介していきます。

 

次の記事

 

参考文献

・L. P. マトヴェーエフ:魚住廣信監訳・佐藤雄亮訳(2008)ロシア体育・スポーツトレーニングの理論と方法論,ナップ.
・マトヴェーエフ:渡邊謙監訳・魚住廣信訳(2003)スポーツ競技学.ナップ.

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