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第22回「高い強度でトレーニングをガシガシこなすための糖質摂取量・タイミング」

第22回「高い強度でトレーニングをガシガシこなすための糖質摂取量・タイミング」

前回の記事では、瞬発系アスリートの土台となる「筋肉量・筋力」を高めるための栄養摂取ポイントについて紹介してきました。

 

 

しかし、筋肉量・筋力を高めるためには、当然良いトレーニングを行わなくてはいけません。その良いトレーニングの一つの基準が、トレーニングを高い強度で多くこなせるということです。日々のトレーニングの中でのパフォーマンスを高めていくことは、競技パフォーマンスを高めていくための一つの視点だとも言えます。

 

そこで今回は、トレーニングを高い強度でガシガシこなして、トレーニング効果を上げるための「糖質摂取」の仕方について考えていきます。

筋肉や肝臓のグリコーゲンを増やしておく重要性

糖質、すなわちご飯やパンなどに含まれる炭水化物を食べると、それは筋肉や肝臓に「グリコーゲン」として蓄えられます。その量は、筋肉に1500kcal分くらい、肝臓に500kcal分くらいだとされています(寺田,2017)。

 

そして、筋トレやスプリントなどで、高い出力をするためには、この筋グリコーゲン濃度を充実させておく必要があるわけです(Mujika,2009)。特にスプリンターでは、その持久力を高めていくために、高強度で多量のトレーニングをこなす必要が出てきますが、このグリコーゲンが少ないと、すぐに出力を維持できなくなり、トレーニング効果の減少にもつながります。

 

また、このような高強度運動を伴うスポーツ種目では、アップを含めても相当な運動量になることが予想できます。全力に近いスプリントを数分行う程度で蓄えられているグリコーゲンは大きく減少する(Impey et al.,2018)ため、日々の食事できちんと補給し続けることが重要です。

 

 

1日に必要な糖質の量は?

糖質を補給するためには、当然食事をする必要があります。では、アスリーとはどれくらい糖質を摂ったら良いのでしょうか?

 

※国際オリンピック委員会(2012)より

 

一般に、日々トレーニングをこなす短距離選手であれば体重1㎏あたり6g以上の糖質が、1日に必要だとされています。これは体重60㎏の選手でおよそ1440kcal分になります。ご飯大盛3杯分くらいに相当する量です。実際には、ご飯以外にも糖質は多く含まれていることが多いので「毎食大盛ご飯を食べなくちゃならない」わけではないですし、人によって代謝量は大きく異なるので、具体的な量を示すのはとても困難です。実際の消費エネルギー量なんてだれにも分かりません。

 

なので、自分の体重の増減を日々チェックしながら微調整していくことが重要です。体重が減少傾向ではないか?筋肉量を増やしたければちゃんと微増状態になっているかが判断ポイントです。

次の日や、その日のうちに次のトレーニングがある場合、素早く糖質を摂取しよう

また、次の日やその日のうちに次のトレーニングや試合が控えている場合は「速やかに糖質を摂取」することが、トレーニングや試合でのパフォーマンスを高めるために重要です。

 

筋グリコーゲンも、ご飯を食べたらすぐに回復してくれるものではありません。なので既に筋グリコーゲンが大きく減っている状態で、運動直前にご飯を食べても間に合いません(ただ、糖を口に入れるだけでも効果はある)。運動終了後2時間も経ってしまえば、同じ量の糖質を摂取したとしても、グリコーゲンの回復度合いが半減するとも言われています。

 

 

したがって、次の日やその日の次のトレーニングセッションで高いパフォーマンスをキープしたければ、運動直後の糖質摂取が欠かせないということになります。加えて、試合前日、前々日の糖質摂取はハイパフォーマンスのために重要であるということにも気づくことができるはずです。

 

フルクトースを活用しよう

砂糖は「ブドウ糖:グルコース」「果糖:フルクトース」が合わさったものです。砂糖も「糖質」なわけですから、当然筋グリコーゲンの回復に役立ちます。

 

ただ、小腸からグルコースを吸収する場合、輸送体(糖の運び屋さん)が足りずに、その吸収率が悪くなってしまうことがあるようです。しかし、フルクトースを吸収する場合、グルコースとは別の輸送体(糖の運び屋さん)が使われるため、グルコースだけでなく、フルクトースを一緒に摂取すると、滞りなく糖の吸収を進めることができると言われています。運動中の糖質摂取も然りで、グルコース+フルクトースの摂取で、糖の吸収&利用効率を高め、パフォーマンスをより改善できるとされています(Currell& Jeukendrup,2008)。

 

 

 

次の記事(食事のタイミングと量・持久力を高める食事について)

参考文献

・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・Mujika, I. (2009). Tapering and peaking for optimal performance. Human Kinetics.
・Impey et al. (2018). Fuel for the work required: a theoretical framework for carbohydrate periodization and the glycogen threshold hypothesis. Sports Medicine, 48(5), 1031-1048.
・国際オリンピック委員会(2012)Nutrition for Athletes.
・Ivy et al. (1988). Muscle glycogen synthesis after exercise: effect of time of carbohydrate ingestion. Journal of Applied Physiology, 64(4), 1480-1485.
・Currell, K., & Jeukendrup, A. (2008). Superior endurance performance with ingestion of multiple transportable carbohydrates. Medicine+ Science in Sports+ Exercise, 40(2), 275.

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