サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


第26回「陸上選手のリカバリーには温める?冷やす?」

練習後のケアでは温める?冷やす?

前回の記事では、陸上選手が摂取すべきサプリメントとその用い方、考え方や、多く摂ると悪影響を与えてしまうサプリメントについて紹介しました。

 

 

ここでは、陸上選手がトレーニング後のクールダウン、ケアとしてのリカバリーに用いている「アイシング」「冷水浴」「交代浴」などについて紹介していきます。

アイシングはトレーニング効果を下げる

近年、トレーニング後のアイシングは特に筋力トレーニングの効果を下げると言われています(Broatch et al.,2018)。これは、冷やすことによって筋タンパク質の合成が抑えられたり、トレーニング効果を生むのに必要な浮腫が取り除かれてしまうなどのことが原因として挙げられます。

 

 

怪我をしていて炎症を抑えたい場合を除いて、トレーニング後のアイシング、冷水浴には注意が必要です。

温熱刺激(温める)はトレーニング効果を促す

逆に、トレーニング後の温熱刺激はトレーニング効果を促すと言われます。これは特に持久力が必要な種目に関わり、トレーニング後の温熱刺激によって、骨格筋のミトコンドリアの生合成が促されるというものです(Hafen et al.,2018)。トレーニング後すぐに暖かいお風呂に入ることができれば良いでしょう。

 

また、筋力トレーニング、パワートレーニングを行う際も、できる限り暖かい環境(少し汗ばむ)で実施した方が高いパフォーマンスが発揮できることは明白です。冬期など身体が冷えやすい時期のウエイトトレーニングなどは、少し厚着をして身体を温めながら実施しましょう。

 

次の日が試合の場合は冷やす(冷水浴・交代浴)

しかしながら、その日のうちの次の運動までの間や、翌日のパフォーマンス低下を防ぐ目的で言うと、アイシングや冷水浴は有効に働きます。暖かいお湯と冷たい水に交互に浸かる交代浴も有効です。

 

ただ運動直前のアイシングは、筋肉が冷えすぎて、爆発的な筋力が必要な運動パフォーマンスを低下させるので避けるべきです。冷やした場合は30分以上の間隔を空けて、ウォーミングアップし直すようにしましょう。

 

また、アイシングや冷水浴を優先しすぎて肝心の食事が遅れることが無いようにしなければなりません。試合後すぐにリカバリードリンク(糖質やタンパク質を多く含むもの)を飲むなど、リカバリーに必要な栄養素を補給したうえで他のリカバリーに努めます。

 

※アイシングの方法(Hausswirth & Mujika,2013)

 

※次の日バリバリ動きたい場合のリカバリー例

 

 

このように、特にアイシング、冷水浴などのリカバリーは、短期的なパフォーマンスの低下を防ぐのには適している一方、長期的なトレーニング効果を下げてしまうという一面を持っています。短いスパンでのパフォーマンス低下を防ぐか、長期的なトレーニング効果を促したいかでの「使い分け」が大切です。

まとめ

~冬期練習中など長期的なトレーニング効果を促したい場合~
・できる限り暖かい状態でトレーニング(着込む)。
・トレーニング後は温める(熱いお風呂に入るなど)。
・アイシング、冷水浴は避ける(トレーニング効果を下げる)。

 

~その日のうち、次の日など短いスパンでの疲労を防ぎたい場合~
・運動後、アイシングや冷水浴、交代浴を使用。
・運動直前に冷やすのはNG。アップしなおす。

 

次の記事

 

参考文献

・Hafen et al. (2018). Repeated exposure to heat stress induces mitochondrial adaptation in human skeletal muscle. Journal of Applied Physiology, 125(5), 1447-1455.
・Broatch, J. R., Petersen, A., & Bishop, D. J. (2018). The influence of post-exercise cold-water immersion on adaptive responses to exercise: a review of the literature. Sports Medicine, 48(6), 1369-1387.
・Hausswirth & Mujika(2013):Recovery for performance in sport. Human Kinetics.

 

サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


Youtubeはじめました(よろしければチャンネル登録お願いします)。