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第25回「陸上選手が摂るべきサプリメントとその考え方」

第25回「陸上選手が摂るべきサプリメントとその考え方」

前回の記事では、陸上選手が減量に取り組む際にどうしても必要になること、意識しておくべき考え方について紹介しました。

 

 

ここでは、陸上競技の選手が摂るべきサプリメントや、少なくとも持っておくべきサプリメントに対する考え方について紹介していきます。

陸上競技の選手にとって効果のあるサプリメントとは?

サプリメントの効果

サプリメントは何を使うのが効果的なんだろうという疑問は、競技をしていれば誰もが抱くものだと思います。極論、その人にとって最も効果の出るサプリメントというのは「その人にとって不足しているものを補えるサプリメント」です。不足しているものを補えば、何かしら良い効果が得られます。なぜかというと、不足していた栄養を補えたからです。

 

皮肉のように聞こえてしまうかもしれませんが、決してふざけているわけではありません。サプリメント(supplement)は、不足している栄養素等を補うものであるという、本来の意味通りのことを強調しているわけです。タンパク質が不足している人がタンパク質を補えば効果が出るはずだし、逆に十分に摂取できている人がさらにそれを補おうとしたところで効果は出ません。不足していないからです。

 

一方で、普通に食事をしているだけでは多く摂取することは難しいけど、サプリメントとして摂取することで、スポーツのパフォーマンス向上に効果的だと言われるサプリメントは多いものです。ネットで探せばいくらでも「効果がある!」と謳われたサプリメントを見つけることができます。

 

しかしながら、本当にパフォーマンスの向上に効果があるとされるサプリメントというのは限られたもので、それらの判別は非常に難しいはずです。また、たとえ科学的な根拠に乏しくとも、選手が効果があると信じて活用すれば、その効果が発揮されることがあります。これは「プラセボ効果」と呼ばれるものです。そういう場合には、むやみに「そのサプリメントは科学的根拠がないから意味がないぞ!」なんて心無いことを、アレコレと外野から口を出すべきではないと筆者は考えています。その人が信じていれば、その人にとって何かしらの効果はあるのかもしれないからです。

 

 

対して、科学的な根拠がしっかりしていても、選手がその効果を信じていなければ、適切に効果が得られない場合だって考えられます。このように、選手がそれを信じているか、科学的根拠がしっかりとあるかどうかを擦り合わせながら、使用するサプリメントを考える必要があります。もちろん、そのサプリメントに悪影響があることが分かっている場合は、摂取を避ける必要があります。

 

 

サプリメントの「効果がある」と「効果を実感できる」は、次元の違う話

効くとされるサプリメントを摂取したけど「効果がなかなか実感できない…本当に効いてるのか分からない」と感じる場合は多々あります。

 

しかしながら、「効果がある」と「効果が実感できる」は次元の違う話であるということを認識しておきましょう。もちろん効果のようなものを実感できるケースはあるはずですが、実は効果が発揮されているのに、その時期にたまたま他の要因の影響でパフォーマンスが低い状態だった…などがあると、それをなかなか実感できないという場合もあるはずです。

 

皆さんはインフルエンザの予防接種の効果を実感したことがありますか?

 

意味は少し外れるかもしれませんが、例えるとするとこのようなイメージ↑で考えると分かりやすいかもしれません。

 

・「実は悪影響も!?」陸上競技におけるアイシングの効果と適切な方法を科学的に解説

 

推奨できるサプリメント

以下、瞬発系のアスリート(短距離・跳躍・投てき)が摂取を検討すべきサプリメントについて紹介します。

 

 

クレアチン

爆発的な力発揮に重要なエネルギー源です。第3回の記事でも紹介した通り、トレーニングやサプリメントの摂取でその貯蔵量を増やすことができるとされています。そのまま使えるエネルギー源なので、貯蔵量を増やしておくことは重要です。

 

 

クレアチンサプリメントの効果

・パワー発揮と持続力向上
150秒以下の激しい運動でのパフォーマンスが高まる(1〜5%くらい)。30秒以下の激しい運動では特に効果が高い。ウエイトもいつもの重さが多く挙げられる。

 

・トレーニング効果が高まる
トレーニングを高いパワーで多くやれるので、筋力やパワーの向上幅が高まることが期待される。スプリント、ジャンプ、投てき、ウエイトも然り.中長距離の高強度インターバルトレーニングの効果も高まる。

 

・精神疲労、集中力低下を防ぐ
・怪我からの復帰を早める

 

クレアチンの飲み方

・1日5gを糖質やタンパク質を含んだ飲み物200mlくらいで飲む。
・水分を多く摂るのが大切。
・すぐに効果を出したいなら1日20g(4回に分けて)を1週間続ける。その後は1日5g。

 

比較的安価なこともあり、利用価値は高いと言えます。

 

・短距離・長距離・跳躍・投てき選手全員がクレアチンを摂るべき理由(陸上競技におけるクレアチンの効果)

 

・「ホントに効く?」陸上選手のサプリメントの効果・効能

 

 

プロテイン

プロテイン=タンパク質(protein)です。プロテインの摂取は、1日のタンパク質摂取量を増やす役割、リカバリーを促す役割があると言うことになります。

 

トレーニング後の筋タンパク質の合成は24~48時間ほど高まっているので、次の日が休みでも、またその休みの日でもタンパク質は多めに摂取するようにすべきです(体重1㎏当たり2gを確保)。

 

 

普段の食事で十分にタンパク質が摂取できている場合は無理に摂取する必要は無いかもしれません。しかし、ほとんどの人にとって、体重1㎏あたり2gのタンパク質というのは、普段の生活でかなかな摂取できるものではありません。

 

一度自身の1日のタンパク質摂取量がどの程度なのかを計算してみて、要不要を検討してみましょう。トレーニング後の素早い回復を促すことを考えると、ほぼすべての選手にとって必要性が高いものだと判断できます。

 

・寝る前のプロテイン摂取は、筋肉量を増やす効果的な戦略である

 

トレーニングしてない日にプロテインを飲んでも意味がない?(太るだけ?)

 

・「ホントに効く?」陸上選手のサプリメントの効果・効能

 

 

トレーニング効果に悪影響を及ぼし得るサプリメント

抗酸化系のサプリ(ビタミンC・Eの多量摂取)

激しい運動後に発生する活性酸素は、疲労の蓄積や老化の一因と言われています。それを防ぐために「抗酸化作用」のあるサプリメントの摂取が推奨されていたりします。体内の酸化を防いで活性酸素を抑えて、疲労を防ごうというものです。この抗酸化作用のあるサプリメントとしてはビタミンC、ビタミンEなどが挙げられます。

 

一方で、この活性酸素はトレーニング効果を得るのに必要なものとも言われています。最近では、トレーニングの前後でこの抗酸化作用のあるビタミンを多くとることで、筋力、持久力ともにトレーニング効果が下がってしまうという報告もなされています(30-32)。

 

 

逆に、不足してもトレーニング効果が下がるかもしれないというのがありそうなので、抗酸化作用のあるビタミン剤などの摂取は適量が大事だと考えられます(33 これはマウスの話)。

 

ビタミンC1000mg程度であれば、意識してなくても摂ってしまえることがあるので、注意が必要です。

 

※日本人の食事摂取基準では、18-29歳の成人でビタミンCは100mg、ビタミンEは6.0-6.5mgが推奨量(https://www.glico.co.jp/navi/e07.html)。

 

・抗酸化作用のあるサプリメント(ビタミンC・E)は筋力トレーニング効果を半減させる

 

・「ホントに効く?」陸上選手のサプリメントの効果・効能

 

 

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参考文献

・Peter Peeling and Martyn J. Evidence-Based Supplements for the Enhancement of Athletic Performance. BinnieInternational Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 2018, 28, 178-187.
・Churchward-Venne et al. (2012). Nutritional regulation of muscle protein synthesis with resistance exercise: strategies to enhance anabolism. Nutrition & metabolism, 9(1), 40.
・Bjørnsen et al. (2016). Vitamin C and E supplementation blunts increases in total lean body mass in elderly men after strength training. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 26(7), 755-763.
・Paulsen et al. (2014). Vitamin C and E supplementation hampers cellular adaptation to endurance training in humans: a double‐blind, randomised, controlled trial. The Journal of physiology, 592(8), 1887-1901.
・Peternelj, T. T., & Coombes, J. S. (2011). Antioxidant supplementation during exercise training. Sports medicine, 41(12), 1043-1069.
・Takisawa et al. (2019). Vitamin C deficiency causes muscle atrophy and a deterioration in physical performance. Scientific reports, 9(1), 4702.

 

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