サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


速く走るためには本当に腰が高い方が良いのか?

速く走るためには本当に腰が高い方が良いのか?

陸上競技の短距離走の指導現場では、速く走るための指導として「腰を高く」という言葉がよく使われます。

 

確かに、腰が低くて地面をベタベタと這うようなフォームでは、速く走れそうにありません。

 

関連記事

・腰が低いベタ足走りの原因と改善方法

 

一方で、速く走るためには「身体が浮かないようにする」ことも重要だと、多くの指導者や選手が口にしています。

 

身体が浮き上がってしまうと、地面に上手く力を伝えられず、推進力を得ることが難しくなってしまうというものです。

 

このように、身体全体やその各部位の高さに関して、色々な指導がなされています。

 

しかし「腰を高くする」と「身体が浮かないようにする」という指導は、相反しているようにも感じられるのではないでしょうか?

 

「腰を高くしながら、身体も浮かせないように…」というのはなかなかイメージできるものではありません。

 

そこでここでは

 

「腰を高くする」とはどういうことなのか

 

「浮かない走り」とはどういうことなのか

 

これらについて整理して、それらの指導方法、指導言語がどういった意味を示しているのかを整理して、実践での用い方について考えていくこととします。

 


腰が低くて悪いとされる走り

 

図のように、腰が後傾し、足を身体のより前方で、かかとから踏み込んで、蹴り出しでビローンっと足首が返るような走りは、速く走るために適した動作であるとは言えません。

 

なぜなら、接地時間を短く出来ず、身体を前に素早く進めることができないからです。

 

接地時間を短くして、接地中に身体を前に素早く前に進めるための筋力がない人は上のような動作になりやすい…とも言うことができます。

 

したがって、このような選手であれば「腰を高く」の指導で、姿勢が良くなり(骨盤の前傾が促される)、接地位置が身体の近くになるかもしれません。

 

するとかかとから踏み込む動作が改善され、アキレス腱のバネがより使いやすくなり、走る速度が改善される…ということは想像に難くありません。

 

身体が浮かない走りとは?

100m走のスタートから中間疾走に繋げる局面や、スピード維持局面で(全局面ですね。笑)、「身体が浮かないこと」は重要だと言われています。

 

例えば、スタート後、身体を起こすのを意図的に早めると、接地中の下肢関節の角度が大きくなり、ストライドが低下してしまうことが報告されています(足立ほか,2017)。

 

下肢関節角度が大きくなるということは、その分腰が浮いたような走りになることが予想されます。

 

また、100mの終盤の速度が低下していく局面でも、接地中に膝や足首がより伸展された状態になると言われています。これは、足首周りで大きな力を発揮できなくなった結果、そのような動作にせざるを得なくなった…ということが考えられます。

 

 

つまり、疲労で足のバネのような筋力が低下し、身体が浮いた状態になってしまうという訳です。

 

このように、地面に短時間で大きな力を加えるためには、身体が浮きすぎないように、ある程度低く抑えたポジションで力を発揮し続けることが大切だと言うことが分かります。

 

「腰を高く」で姿勢を良くし、「低く抑えて」身体の近くに接地する

以上のことから分かるように、「腰を高くする」意識で、身体全体が必要以上に浮いてしまって、地面に力を加えられるポジションから離れてしまうのは良くありません。

 

あくまで、腰を高くする意識は、姿勢を良くし、骨盤の後傾や猫背を改善させて、身体のより近くに接地する、そしてアキレス腱をしっかりと機能させるための意識として捉えるべきでしょう。

 

そして、その良くなった姿勢や接地のポジションのまま、スタートから身体全体を低く保ち、最後まで浮かずに、地面に大きな力を短時間で加え続けることが理想だと考えられます。

 

「腰を高く」「浮かずに走る」

 

これらの指導言語の意図をきちんと理解して、できる限り共通の認識を持とうとすることは、選手にとっても指導者にとっても、非常に大切なことです。

 

難しいことではあるかもしれませんが、それぞれの意識がどういった動きに繋がっているのかを理解して、トレーニングに励みましょう。

 

 

合わせて読みたい!

 

 

参考文献

・足立達也, 上田毅, 福田倫大, 林雅人, & 尾﨑雄佑. (2017). 100m 走の加速局面における前傾姿勢の保持を意識する時間の違いが下肢動作, 筋放電量, パフォーマンスに及ぼす影響. 陸上競技研究, 2017(2), 26-35.
・遠藤俊典, 宮下憲, & 尾縣貢. (2008). 100 m 走後半の速度低下に対する下肢関節のキネティクス的要因の影響. 体育学研究, 53(2), 477-490.

サイト全記事一覧へ

~サイト内の関連記事を検索~


Youtubeはじめました(よろしければチャンネル登録お願いします)。