作用、反作用の法則
作用、反作用の法則とは「物体に力が作用すると、作用した方向とは反対方向に、同じだけ力が働く」ことです。これはニュートンの第3法則として知られており、力学を理解する上で必須の法則です。
例えば、ヒトが走る時、身体を使って地面を押し、その反作用を受けることで前に進んでいます。物体は大きな力が加わるほど、加速度が大きく付くので、より大きな地面反力を受けることで、素早くダッシュをすることができるわけです。
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そもそも地面反力とは?
そもそも、作用、反作用の法則から「地面反力」という言葉を捉えてみると、「地面反力=加えた力」となります。
よく、陸上競技の短距離走で「地面に力を加えるだけではダメだ。地面反力を上手くもらうことが重要だ」との話がなされます。しかし、地面反力は「地面に加えた力と同じ力が反対方向に働いているもの」なので、上手くもらうも何も、伝えた分しか受け取ることはできません。
というか、伝えてるから受け取れているわけです。
したがって、「地面反力を上手くもらえる技術が大事だ」という表現は、少しおかしいということが分かります。
では、なぜ「力を加えるだけではダメだ!地面反力を上手くもらえ!」というようなことが言われるのでしょうか?
でも、指導時の声かけ(キューイング)としては使える
速く走る時には、地面に大きな力を伝えることは大切です。しかし、ヒトは2足で走っているので、地面に力を加えられる時間がかなり限られます。加速段階でも、地面を少し押して、脚が伸びてしまった状態では、既に力を加え終えています(以下の図のこと)。
※実際、図のように、地面を押して脚が伸び切ろうとしている局面では、ほとんど地面に力は加えられていません(既に加え終わっている)。便宜上の表現です。悪しからず。
なので、脚が完全に伸び切る前に、短い時間で大きな力を伝えられることが大事になります。
そして、これを達成するためには、筋肉に付随する腱(アキレス腱など)のバネを働かせることが必要になります。接地時に筋肉を一瞬で硬くできることで、腱がバネのように引き伸ばされて、パチンコのように一気に短縮することで、地面に大きな力を伝えることができるのです。
この時、筋肉は縮んでいるというより、硬いバネのように固められている状態なので、地面を最後まで押し切ってしまおうとせずとも、勝手に弾むような感覚になることが予想されます。
この時の筋肉の動き、感覚を、他人に指導する時には「反力、反発を上手くもらうように」という表現が使えることがあるかもしれません。
おそらく指導現場でも、上記ような意図で「反発、反力をもらえるように」と表現がなされるようになっているのだと考えられます。指導言語としての「反力、反発をもらう感覚で」という表現が、正しい意味での地面反力との齟齬を生んでいるのでしょう。
それが単なる指導言語なのか、正しい意味での言葉なのかは、区別できるようになっておいた方が良いはずです。