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加速局面でも膝を固定したフォームが理想?

膝を固定したフォームとは?

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陸上の短距離走において、地面を膝を伸ばすようにしてキックする走り方は、あまり良くないものとされています。以下の図を見てみると分かる通り、膝を固定したフォームで走れる方が、前へ効率よく進むことができると考えられるからです。

 

 

この動きは、足の速い選手に良くみられるもので、世界一流のスプリンターともなると、接地中に膝が曲がり続けるような動作が見受けられるようです。

 

 

関連記事

・膝を固定するようにスプリントしてみよう

 


加速局面でも、膝を伸ばさないフォームが理想?

トップスプリンターにみられる、膝が固定されたようなフォームは、中間疾走、いわゆるトップスピード局面での動作に着目したものです。したがって、その前段階である加速局面でも同じことが言えるとは限りません。

 

加速局面では身体が前傾した状態にあるため、膝を伸ばすような動作が直接推進力に変わるんじゃないか?と言うことが考えられます。

 

しかし、この加速局面における下肢の動作や力発揮を、高いレベルの男子スプリンターで分析した研究(Johnson & Buckley,2001)では、膝を伸ばす速度やパワーが、他の足関節や股関節と比較してかなり小さかったと報告されています。

 

また、発揮されたパワーの最大値は、接地中に「股関節⇒膝関節⇒足関節」の順に現れ、その中でも足関節のパワーが最も大きかったことが分かりました。

 

これらのことから、加速局面であっても、膝は固定するように使い、重心の高さを維持して、股関節で発揮した力を効率よく足首に伝達する役割が大きいだろうと言うことが分かります。

 

 

加速局面では、よく「地面から浮かないように!」との助言がなされますが、ここで膝を積極的に伸ばすような動作をしてしまうと、上にぴょこぴょこ跳ねたような走りになってしまうと予想できます。

 

たとえ加速局面であっても、膝は積極的に伸ばす意識は持たない方が良いかもしれません。

 

坂ダッシュやスレッド走では膝が伸びてしまうけどいいの?

加速局面でも、膝は固定されたフォームが理想だと紹介しました。しかし、加速局面を改善するためのトレーニングとして良く取り挙げられる「坂ダッシュ」や「スレッド走」では、平地で走るよりもむしろ積極的に膝が伸びてしまうような動作になってしまいます。

 

膝を伸ばさないフォームが理想なのに、膝が伸びやすくなるような状況でトレーニングしていても良いものなのでしょうか?

 

結論から言うと、「坂ダッシュやスレッド走など、膝が伸びやすくなるようなトレーニングは必要」です。

 

そもそも走るときに膝が伸びてしまうのは、自分の体重を一瞬で浮かせる筋力に乏しいというのが大きな原因だと考えられます。自分の体重を一瞬で浮かせられる筋力が無ければ、接地の最後の最後まで、膝を伸ばし続けるようにしないと、自分の身体を浮かせることができないわけです。または、大きく宙に跳ねなければ、次の接地の準備ができない程度のピッチしか出せない状態…のどちらかです。

 

そのような膝周りの筋力の基礎を築くためには、あえて大きな筋力を発揮しつつ膝を伸ばすようなトレーニングをすることは必要だと言えます。ウエイトトレーニングのスクワットなども同様です。

 

そのようにして、接地の一瞬で自分の体重を支えられる筋力があるからこそ、接地中に膝をそこまで伸ばさなくても良い余裕が生まれるというわけです。

 

また、坂ダッシュやスレッド走は、先にも紹介した通り、加速局面に必要な他の二つの下肢関節(股関節と足関節)の筋力、パワーを高めるのにはもちろん有効な手段です。(※重要なレースの直前など、繊細な動きの微調整が必要な期間では、あまり膝を伸ばすような動きを強調するトレーニングはやらない方が良いかもしれません。)

 

その理想の競技動作を達成するためには、どのような体力要素が必要なのかを理解したうえでトレーニングを考えるようにすれば、「競技動作と動きが似てないからこのトレーニングはダメ!」という考え方に陥ることは無いかと思います。

 

 

合わせて読みたい!

 

参考文献

・D. Johnson, M., & Buckley, J. G. (2001). Muscle power patterns in the mid-acceleration phase of sprinting. Journal of sports sciences, 19(4), 263-272.

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