トップスプリンターにみられる、膝が固定されたようなフォームは、中間疾走、いわゆるトップスピード局面での動作に着目したものです。したがって、その前段階である加速局面でも同じことが言えるとは限りません。
加速局面では身体が前傾した状態にあるため、膝を伸ばすような動作が直接推進力に変わるんじゃないか?と言うことが考えられます。
しかし、この加速局面における下肢の動作や力発揮を、高いレベルの男子スプリンターで分析した研究(Johnson & Buckley,2001)では、膝を伸ばす速度やパワーが、他の足関節や股関節と比較してかなり小さかったと報告されています。
また、発揮されたパワーの最大値は、接地中に「股関節⇒膝関節⇒足関節」の順に現れ、その中でも足関節のパワーが最も大きかったことが分かりました。
これらのことから、加速局面であっても、膝は固定するように使い、重心の高さを維持して、股関節で発揮した力を効率よく足首に伝達する役割が大きいだろうと言うことが分かります。
加速局面では、よく「地面から浮かないように!」との助言がなされますが、ここで膝を積極的に伸ばすような動作をしてしまうと、上にぴょこぴょこ跳ねたような走りになってしまうと予想できます。
たとえ加速局面であっても、膝は積極的に伸ばす意識は持たない方が良いかもしれません。