
糖質摂取の重要性
運動前や運動中に、糖質を摂取することは様々な面でパフォーマンスの向上に役立つとされています。その糖質自体が貴重なエネルギー源となり、かつ運動時にエネルギー源が大きく減ってしまうような持久運動では、糖質の補給がより大きな効果を生み出します。
一方、短時間の運動であれば、運動中にそこまでエネルギー源が減ってしまうわけでもないはずです。
しかし、糖質を運動中に補給することで、そのような短時間の高強度な運動パフォーマンスの改善も期待できることが分かっています。
一体それはなぜなのでしょうか?
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口に含むだけでも効果がある(マウスリンス)
運動中に糖質を摂取することで、短時間の運動パフォーマンスも改善され得ることの理由には、「脳」の働きが関係しています。
糖質を口に含むと、味覚センサー(甘味受容体)が働き、脳内の報酬系が刺激され、ドーパミンという物質が放出されます。このドーパミンは、幸福感を生み出す物質です。
このような刺激が中枢(脳)に与えられると、疲労感が軽減され、運動が楽に感じるようになったり、気分的に余裕が生まれたり(モチベーションが上がる)することで、疲労が軽減される可能性が示唆されています。
舌が甘味、糖質の存在を感知するだけでも、このような効果が得られるため、糖質を含んだドリンクを口に含むだけでも、パフォーマンスを改善する効果が得られると言われています。これは「マウスリンス」と呼ばれており、スポーツのパフォーマンスを高める手段の一つとして、最近知られるようになってきました。
実際に、マウスリンスを行うことで、運動パフォーマンスが改善されたという報告も多く存在しています。以下の図は、トレーニング経験のある男性に、糖質の入った飲料と、同じ甘さで糖質の入っていない飲料を口に含ませ吐き出させた場合、そして何もしなかった場合で、その後の筋力トレーニングのパフォーマンスを比較した研究です。試技前に糖質飲料を口に含んだ場合では、ベンチプレスの反復回数が向上していました。

このようパフォーマンスの向上は、1時間以上にわたるような持久パフォーマンスでも多くみられています。しかし、運動が長時間にわたるものではない、筋力系の運動時でも、運動中に糖質を摂取、または口に含むだけでもパフォーマンスの向上が期待できるかもしれません。
参考文献
・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・Bastos-Silva, V. J., Prestes, J., & Geraldes, A. A. (2019). Effect of carbohydrate mouth rinse on training load volume in resistance exercises. The Journal of Strength & Conditioning Research, 33(6), 1653-1657.