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グルコースとフルクトースの摂取は、糖質の吸収、利用効率を高める

グルコースとフルクトースの摂取は、糖質の吸収、利用効率を高める

 

 

運動パフォーマンスと糖質の摂取

 

運動前や運動中に、または運動後に糖質を適度に補給することは、スポーツのパフォーマンスを高めるために有益な戦略であると言われています。

 

 

例えば、運動中に糖質の含まれたドリンクを摂取することで、長時間の持久運動パフォーマンスが改善されたり、運動後に速やかに糖質を摂取することで、筋肉の重要なエネルギー源である、グリコーゲンの回復を促し、次の運動パフォーマンス低下を防いだりなどです。

 

 

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フルクトース(果糖)を一緒に摂ると、糖質の吸収、利用効率が高まる

 

ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)

糖質を補給する際、よくブドウ糖(グルコース)を摂取すると良いと言われています。グルコースは、糖質が分解されて細かくなり、すぐにエネルギーとして利用されやすい状態になったものであるからと言うのがその理由です。

 

 

※炭水化物と糖質、糖類の違い

 

 

しかしヒトの身体では、このグルコースだけでなく、フルクトース(果糖)を一緒に補給すると、さらに糖質の吸収効率が良くなることが分かっています。

 

 

フルクトースとは糖質の一種で、甘みが強く、果物などに多く含まれる糖質です。清涼飲料水に良く使われている「果糖ブドウ糖液糖」は、トウモロコシを原料としたコーンシロップから作られるもので、異性化糖と呼ばれています。この異性化糖は、果糖とぶどう糖が主成分になっており、果糖の割合が50%以上90%未満のものが、「果糖ブドウ糖液糖」と呼ばれています。つまり、皆さんが良く飲むジュースの中にたくさん含まれている糖、それが果糖(フルクトース)というわけです。

 

 

ちなみに、果糖ブドウ糖液糖が使われた飲料が、とても甘く感じるのは、この果糖が多いのが理由です。私たちが普段使っている甘い砂糖は、ブドウ糖と果糖がくっついてできたものです。

 

 

糖質補給時に、果糖(フルクトース)を一緒に摂るメリットとその理由

 

運動中に、このフルクトースをグルコースと一緒に摂取すると、グルコースだけを摂取した時と比べて、より多くの糖質が利用され、パフォーマンスの向上も大きかったと報告されています。以下の図は、運動中にグルコースのみ、グルコース+フルクトース、プラセボ(水のみ)を摂取させたときの、持久パフォーマンスの差や血漿乳酸値のレベルを示したものです(Currell& Jeukendrup,2008)。

 

 

 

 

では、なぜフルクトースをグルコースと一緒に摂ると、糖の吸収効率が良くなるのでしょうか?

 

 

それには小腸から血液中に、糖質を取り込む、糖質の輸送体(運び屋さん:トランスポーター)の種類が関係しています。

 

 

グルコースは小腸からSGLT1という輸送体によって、吸収されていきます。しかし、このSGLT1も無限に存在するわけではないので、一度にたくさんのグルコースを運ぶことはできません。そのため、グルコースを1度に多量摂取しても、腸内にグルコースが残ってしまう場合があります。

 

 

一方で、フルクトースは、グルコースとは別のGULT5という輸送体を用いて、小腸から取り込まれます。そのため、グルコースの輸送体に限りがあって、一度に多くグルコースを取り込むことができなくても、フルクトースは別の輸送体を使っているので、滞りなくさらに糖質を取り込むことができると言うわけです。

 

 

このように、異なる輸送体(トランスポーター)を用いて糖の吸収を促す方法は、マルチトランスポーター法と呼ばれています。

 

 

効率的なグルコースとフルクトースの摂取の割合は?

 

現在、効率よく糖を取り込めるグルコースとフルクトースの割合としては、2:1の割合が良いとされています(Jeukendrup,2010)。

 

 

糖質補給を目的としたドリンクを作る時などは、ブドウ糖と果糖ブドウ糖液糖を1:1で入れると、おおよそグルコースとフルクトースの割合が1:2に近づきます。市販のスポーツドリンクでも、糖質補給の効率化のために、このように作られている場合があります(成分表示が、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖…という順になっているようなもの)。

 

 

また、トレーニング後の素早い回復のために糖質を摂取する時は、単に炭水化物を多く食べるだけでなく、果糖の多いアイスやフルーツジュースなどを一緒に摂取することで、グリコーゲンの素早い回復に役立つ可能性もあると言えるでしょう。

 

 

 

参考文献

・Currell, K., & Jeukendrup, A. (2008). Superior endurance performance with ingestion of multiple transportable carbohydrates. Medicine+ Science in Sports+ Exercise, 40(2), 275.
・寺田新. (2017). スポーツ栄養学: 科学の基礎から 「なぜ」 にこたえる. 東京大学出版会.
・Jeukendrup, A. E. (2010). Carbohydrate and exercise performance: the role of multiple transportable carbohydrates. Current Opinion in Clinical Nutrition& Metabolic Care, 13(4), 452-457.

 


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