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陸上短距離「才能」の科学(短距離に向いている人)

陸上短距離「才能」の科学(短距離に向いている人)

 

「陸上100m走は才能だ!センスだ!」と言われることは多いです。

 

 

足が速い選手は小さい頃から足が速かったり、地元で神童と呼ばれていたり…やはり足の速さは生まれつきのものなのでしょうか?

 

 

ここでは、この足の速さと「生まれつき持っている身体の特徴」について紹介していきます。

 

 

 

膝のモーメントアームの長さ

 

足が速いヒトの特徴の1つに、「膝伸展のモーメントアームが長い」が挙げられます。

 

 

膝伸展のモーメントアームとは、膝関節の回転の中心から、大腿四頭筋が膝下を引っ張っている力の作用線の距離を表します。

 

 

 

 

この距離が長いほど、小さい力でも、大きい回転力を生み出すことができるのです。

 

 

これは、例えばシーソーに乗ったとき、シーソーの真ん中よりも遠くに乗った方が、反対側の人を浮かせやすくなる、テコの原理と同じような理由です。

 

 

同じ力でも簡単に膝を伸ばす力を生み出せるということは、力強く地面を蹴ったり、接地の衝撃に耐えるために有利に働きます。

 

 

つまり、膝のお皿が出っ張っていたり、回転の中心から大腿四頭筋の付け根が遠いところにあったりした方が、有利、短距離走の才能があるかもしれない…ということになります。

 

 

逆にこのモーメントアームが短いと大きな力を効率よく発揮することができません。例えば膝蓋骨が無い場合、膝伸展のモーメントアーム長が短くなってしまい、大腿四頭筋の筋力を効率よく膝伸展力に変換することができなくなってしまいます。膝蓋骨は、膝を伸ばす力を効率よく生み出すために重要な役割を担っているわけです。

 

 

 

 

 

また実際に、この膝関節伸展モーメントアームが長いほど、100m走の記録が良かったという結果も得られているようです。

 

 

 

 

 

 

 

※Miyakeほか(2017)を基に、筆者作成

 

 

関連記事

・膝のお皿が厚いほど足が速い??―膝関節モーメントアーム長と疾走速度の関係―

 

・トルク、関節トルクとモーメントアーム

 

(※正確に調べるためにはMRIを撮るなどする必要があります)

 

 

 

足の指の長さ(中足趾関節)

 

足の指、特に親指や人差し指の長さは速く走るために重要な形態要因だと言われています。

 

 

 

 

実際に、スプリンターは一般人と比較して足の親指や人差し指が長く、スプリンターの中でも足が速い選手は特に足の人差し指が長かったと言います。

 

 

 

 

 

※Tanakaほか(2017)より、筆者が作成

 

 

 

なぜ、足の指が長いほど足が速い傾向があるのでしょうか?

 

 

それは、足の指が長いほど、蹴り出しの時に足裏の筋肉を機能させることができ、より大きなパワーを発揮できるからだと考えられています。

 

 

速く走るためには、接地時に足首がグニャっと潰れて、ビローンっと伸びきってしまわないことが大切です。

 

 

そのためにも、足指をしっかり機能させて、地面を捉えて、足部を硬いバネのように使えるようにしなければなりません。

 

 

その能力を発揮するのに、足の指の長さが有利に働くかもしれない、とのことです。

 

 

 

 

速筋線維の比率

 

ヒトの筋肉は、大きなパワーを発揮できるけど持久力に乏しい速筋線維と、大きなパワーは発揮できないけど持久性の高い遅筋線維で成り立っています。

 

 

 

 

そしてこの速筋線維と遅筋線維は、生まれつき比率が決まっていると言われています。

 

 

つまり、速筋線維の比率が高いor低い、遅筋線維の比率が高いor低いは、生まれつき決まっており、これが短距離走の「才能」と呼ばれるものに関係しているであろうことは間違いないでしょう。

 

 

 

まとめ

 

このように、短距離走の才能に関わる要因はいくつかあることも事実です。

 

 

しかし、日本のトップスプリンターが全員、小さい頃から日本のトップ選手だった訳ではありません。

 

 

コツコツと努力を重ね、今の自分を少し越えることをひたすらに繰り返して、トップまで登りつめてきた選手も大勢います。

 

 

たとえ凄い才能を持っていたとしても、そのような努力ができない選手が活躍することはできません。

 

 

 

参考文献

・Miyake, Y., Suga, T., Otsuka, M., Tanaka, T., Misaki, J., Kudo, S., ... & Isaka, T. (2017). The knee extensor moment arm is associated with performance in male sprinters. European journal of applied physiology, 117(3), 533-539.
・Tanaka, T., Suga, T., Otsuka, M., Misaki, J., Miyake, Y., Kudo, S., ...& Isaka, T. (2017). Relationship between the length of the forefoot bones and performance in male sprinters. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 27(12), 1673-1680.


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