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「乗り込み」ってそもそも何?誰でもできるの?が知りたい人へ

陸上でよく聞く「乗り込み」という指導言語

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陸上競技、特に短距離や跳躍の指導で「乗り込み」という言葉をよく耳にすることがあると思います。

 

「もっとうまく乗り込め!」「乗り込みを意識しろ!」「乗り込みが甘い!」

などです。

 

このように「乗り込み乗り込み乗り込み乗り込み…」とは、ウンザリするほどよく言われたりします。では、じゃあ具体的に「乗り込みって何なんですか?」という質問に答えられる人って果たしてどれくらいいるのでしょうか?

 

そこでここでは

・乗り込みってそもそも何なのか?
・乗り込みが上手いってどういうことなのか?
・乗り込みの習得トレーニング

について考えていきます。

乗り込みって何よ

「乗り込み」とは「接地してから足に重心が乗るまでのこと」?

「乗り込み」とは何なのか?一つは「乗り込み」という言葉の意味通り「身体重心が足(接地点)に乗るまで」を表していると考えられます。

 

走っているときは重心よりも前に足を着きます。前に進んでいるので、いずれ重心が接地点に乗り切るタイミングが出てきます。

 

なので「乗り込み」という言葉の意味通りに考えると、「乗り込み」とは、「接地してから接地点(接地脚)に重心が乗るまでのこと」を指していると言えるでしょう。

 

 

では、この「乗り込みが上手い、すなわち「「接地してから接地点(接地脚)に重心が乗るまで」が「上手い」とはどういうことなのでしょうか?

 

 

 

「乗り込みの上手さ」とは「身体の近くに接地すること」?

短距離走や跳躍では、速く前に進むことが必要です。なので、「乗り込みの上手さ」とは「接地してから接地点に重心が乗るまでの素早さ」を指すのかもしれません。

 

重心が足に乗るまで時間がかかるということは、その分ブレーキがかかる時間が長くなるということです。なので、この時間はできる限り短くしたいわけです。

 

それを達成するための指導言語として「真下接地」が挙げられます。身体の真下に近い位置で接地できることで、乗り込みまでの時間が短くなり、身体を素早く前方に送り込めるというわけです。

 

 

真下接地やブレーキに関してはコチラを参照ください

・ブレーキを減らすことで疾走速度は高まるか?

 

・陸上競技の走種目における、「真下接地」の意味とその習得方法について

 

 

しかし、無理に身体の近くに接地しようとすることは、走りのバランスを崩してしまうことにつながりかねません。走るためには一歩一歩身体を浮かせて推進力を得る必要があるのに、そのために必要な力を生み出す時間まで削ってしまうことにつながりかねないからです。

 

例えば、2年間停滞していた自己記録を6m96から7m26へと大きく更新した走り幅跳び選手を対象にした「乗り込み・前さばき」に関する実践研究(佐渡,2013)では、以下のように述べられています。

 

ポイント走を行う中で生まれた空回りする感覚は,接地点に乗り込むことを考慮していなかったため,引きつけを早くしたことによって支持期で地面を押す距離が過度に短くなっていることに起因すると考えた.そこで,接地点をより前方にすることで支持期前半に力を加える距離を伸ばすことができ,空回りが改善できるのではないかと考えた.”

 

 

“「目印を用いたスプリントドリル」による「接地点をより前方にし,下腿が垂直の状態で膝の真下に接地する」乗り込み動作の習得と,プライオメトリックスやレジステッド走による短時間の力発揮能力の獲得を行った.その結果,空回りする感覚から地面を「グリップする」感覚へと変化していった.トレーニング前後で動作を確認すると下腿が地面と垂直に近い状態で接地するように変化しており,乗り込み動作を引き出すことに成功した.”

 

 

このように、下腿が垂直の状態で膝の真下に接地できるよう、接地点をより前方にすること、そのためのトレーニングを実施する中で、空回り感が改善され、乗り込み動作の習得に近づいたとされています。

 

つまり、単に「身体の近くに接地する」だけでは、乗り込みが上手くなったとは言えなさそうというわけです。

 

では、「乗り込みの上手さ」には、他にどんな要素が必要になるのでしょうか?

 

 

地面反力をもらうこと?

世界選手権400mH銅メダリストの為末大さんは、「乗り込み」を次のように説明しています。

 

“乗り込むという行為をもう少し詳細に説明すると、立位の状態で自分の体重を自分の足を通して地面に伝えその反発を体にもらうこと”

為末大:私のパフォーマンス理論 vol.36 -乗り込みについて-

 

このように、乗り込みの上手さには「地面の反発(地面反力?)」が関連していると考えられます。

 

無理やり身体に近い位置に、足を引き込んで接地に向かおうとすると、速く走るために必要な地面反力が上手く得られず、転びそうになる、空回り感が出てきてしまうというのであれば、先述の「空回り感」とつながる部分があります。

 

走っているときは、自分の身体を一歩一歩中に浮かせる必要があるので、「乗り込みながら、地面に力を加えて上向きの反力を得ること」がどうしても必要になるわけです。

 

高いスピードで走る場合、これを高速でやる必要が出てきます。

 

これに関して、トップスプリンターと非スプリンターの接地期の地面反力の違いを見てみましょう。

 

 

参考動画(スプリンターと非スプリンターの地面反力)

 

このようにトップスプリンターは、接地の前半部分、すなわち「乗り込み」の段階で、大きな上向きの地面反力を得ていることが分かります。

 

速く走るためには、接地の早い段階で「上向きの大きな地面反力」を得られるようにすることが非常に大切だというわけです。

 

言い換えれば、短い時間で身体を浮かせるだけの接地の衝撃に耐えられる「硬いバネのような強い脚」が無ければ、難しい技術であるとも考えられます。トップスプリンターの足音が大きいことが多いのも、このことが関係しているのでしょう。。

 

以上のことをまとめると

 

「乗り込みが上手い」とは…

「接地してから、接地点に重心が乗り切るまでに大きな地面反力を受け、かつそれを素早くスムーズに行えること」

を指しているのではないでしょうか?

 

 

乗り込みのお手本に筆者が良く使う動画(ラショーン・メリット選手)

 

 

「上手い乗り込み」の習得トレーニング

簡単に「乗り込み」が上手くならないのはなぜ?

”短距離選手の技術練習はこの乗り込む瞬間の精度を高めることに向かっていると言っても言い過ぎではない。”

 

為末大:私のパフォーマンス理論 vol.36 -乗り込みについて-

 

じゃあこの乗り込みの精度ってどうしたら高まるのか?という話に移ります。

 

 

脚の硬くて強いバネを鍛えよう

接地の衝撃に短い時間で耐えられるようにするには、脚の硬くて強いバネが必要です。これが無いと、短い時間で身体を浮かせられるだけの地面反力が得られず、いわゆる「潰れた接地」になってしまいます。

 

それができるための「脚づくり」ができていなければ、どれだけ意識を変えようが、短い時間で乗り込むことができません。

 

 

これを鍛えるためには、短い接地で足首や膝を固められるようにするジャンプトレーニングが挙げられます。

 

 

アンクルホップ

 

縄跳び

 

これらはアキレス腱の強いバネを鍛えるのに有効です。

 

 

下り坂スプリント

 

短時間でブレーキをかけられる脚づくりに使えると考えられます。

 

 

その他ウエイトトレーニングで、土台の基礎的な筋力をつけておくことも重要です。まずは体重の1.5倍~2倍くらいでスクワットできるようになっておくと良いでしょう。

 

 

ウエイトトレーニングについてはコチラ

・短距離走に最も必要な筋肉と筋力トレーニング方法

 

・【陸上競技】ウエイトトレーニングの必要性とトレーニング方法大全

 

 

 

腕や遊脚を素早く振り込むスピード筋力

支持脚だけでなく、腕や遊脚の素早い振り込み動作も、乗り込みの早い段階で地面反力を大きくするのに役立つと考えられます。

 

実際に、遊脚や腕の素早いスイングは、スプリントでの滞空比を増やして、疾走速度の向上につながり得ることも示されています(豊嶋と桜井,2019)。

 

ハードルジャンプやバウンディングをやっていれば、腕の振り込みの勢いがどれだけ重要かを理解することができると思います。立ったまま重たいハンマーをぶんぶん下に振ると、地面に力が伝わるのと同じです。再加点付近で足にグッと力が入ります。

 

これを「接地の瞬間に一発で決める」ことが重要です。少しでも遅れるともうその瞬間には接地が終わってしまいます。とにかくタイミングを逃さないことです。

 

 

 

また、この振り込みの早さは、支持脚を身体の近くに無理に引き込まずとも、いわゆる真下接地を可能にします。結果、上方向の地面反力も得られやすい、かつ重心の近くに接地できて乗り込みまでの早さが増す…ので一石二鳥です。

 

 

遊脚の引き出し・上半身の振り込みに関するトレーニングはコチラを参考に

・股関節屈曲トレーニングの重要性とその方法(腸腰筋と大腿直筋)

 

・上半身の筋肉の3つの役割とトレーニング方法(腕振り・骨盤の安定)

 

・【陸上競技】ウエイトトレーニングの必要性とトレーニング方法大全

 

 

支持脚は受動的に、振り込みは能動的に

走りの意識の話をします(これは意識の話なので人それぞれな部分が他より多いと考えられます。参考程度に)。

 

・接地する膝下は真下に落として耐えるだけ(受動的に)
⇒身体の近くに引き込んだり、ひっかくようにしない。ハムストリングの肉離れ防止のためにも。

 

・腕や遊脚の振り込みは素早くパワフルに(能動的に)
⇒接地の瞬間には4の字が作れるように。

 

 

とにかく支持脚は硬く強いバネのように働かせるために、積極的に地面を蹴ったり強くひっかいたりせず、膝の下に落とすようにすること、そして、腕や遊脚の振り込みで、積極的に身体を前に送り込むことが重要だと考えられます。

 

“乗り込めている選手と、踏んづけている選手がある。後者は力感があるが、スピードが高まるとついていけなくなる。”

 

為末大:私のパフォーマンス理論 vol.36 -乗り込みについて-

 

「上手い人は力感が無いから筋力は必要ない」のではなく、「支えるための筋力(強くて硬いバネ)がないから、力感を出して補わざるを得ない…」というのがポイントです。

 

 

「上手い乗り込み」まとめ

乗り込みまとめ+跳躍の場合

まとめるとこうなります。

 

 

このようなイメージで走ること、またはこのようなイメージが体現できるような身体作りが「乗り込みを上手くする」のに必要なのではないでしょうか?

 

跳躍では、この動きや力の向きを上に向けたイメージになるはずです。

 

 

「乗り込みの感覚」は「乗り込めてる人」にしか分からない

一流選手が「こういう感じでやるとできるよ」というときの「感じ」は、できている人にしか分からない「感じ」だったりします。つまり、「できない人ができるようになるための感じ」とは、似て非なるものだったりするわけです。

 

なので、「既にできている人の感覚」をいきなり伝えられても、多くの人が「???」となってしまうのはよくある話です。

 

一流選手の話す感覚では分からない…という人は、「乗り込みとは何か?」「乗り込みが上手くなるためにはどんなことが必要になるか?」を細かく考えて、自分に必要なトレーニングを地道に行っていくしかないと思っています。

 

 

本記事が、多くの人の「乗り込みって何?」という疑問を解決する一つのきっかけになってくれたら嬉しいです。

 

参考文献

・佐渡夏紀. (2013). 走幅跳において低空飛行で記録が低迷している男子大学生競技者の改善事例‐助走初期から踏切動作を意識した助走へ変更した取組‐. スポーツパフォーマンス研究, 5, 334-351.
・為末大(2019)私のパフォーマンス理論 vol.36 -乗り込みについて-.http://tamesue.jp/blog/archives/think/20190909
・Clark, K. P., & Weyand, P. G. (2014). Are running speeds maximized with simple-spring stance mechanics?. Journal of applied physiology, 117(6), 604-615.
・豊嶋陵司, & 桜井伸二. (2019). 短距離走の最大速度局面における滞空比と上肢および回復脚の相対鉛直加速力との関係. 体育学研究, 64:89-99.

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